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泡姫経典

日付は6月17日(金)。このノートの始まりは前日譚から記される。
どうして前置きが必要なのか、この日、私は明後日に控えた転職活動の履歴書を書いていた。と言うか書いている、今まさに。しかし、あまりの筆の乗らなさにこの駄文を打つことにした。

タイトルを見てもらうとわかる通り、風俗に行く話をしたいのは山々なのだが流石に明後日の履歴書を書ききらずには、明日の風俗嬢も定まらない。自分に課した枷がこんなに重いものだとは思わなかった。今ならクラピカの気持ちがわかる。

しかし、転職とは面倒なもので、人を試そうとしてくる。この歳になると、恋の駆け引きでさえ面倒で逃げの一手なのに、面接にクソおめかししていかないといけないのは遺憾だ。まあ、自分が求めている条件が高いだけじゃないかと突っ込まれると返す言葉がないので、この話はここまでにしよう。

試験勉強は一切していない。明日、道徳を修めることで悟りを開き、明後日は天啓に導かれ回答がすらすらでてくると信じている。

ちょうど宗教染みた話をしたのでこの場を借りて懺悔しておきたいことがある。

過ぎた話である。就職を控えた私は、知人の生臭坊主に人手が足りないからとアルバイトの誘いを受けた。聞けば高野山にて、1泊2日宿坊で配膳や掃除、ベッドメイクをするとのことで、物珍しさから2つ返事で行くことになった。

着けば早速昼食の配膳を手伝うことになったが、これがえらく大変だった。20cmくらいある高さのお膳には煌びやかな陶器が並び、その上には精進料理が綺麗に飾られていた。そのお膳を5段・6段と重ねて運ばないといけないのだ。大道芸のアルバイトだとは知りもしなかった。
配膳が終わるとすぐに別の片付けに追われた。宿坊に泊まりたい物好きが多いらしく、毎年駆け込み時期はこうして俗世にまみれた低俗なモンスターをアルバイトに雇うらしい。

その日のおつとめを終えると、生臭坊主ともう一人の全身墨まみれのお兄ちゃんと私は麻雀卓を囲んでいた。生臭坊主はどこからくすねたのかビールの大瓶を3つ手にしていた。いつから始めたか忘れたが気付けば夜中の1時を迎えようとしていた。
これが何を意味するのかというと、アルティメット夜更かしである。寺の朝のおつとめは4時からである。私は冷静になった。冷静になって寝た。しかし、起きることができた。


というより、2時に吐き気で起きた。気付いたら、私は自分の寝床を汚物にまみれさせていた。しかし、ここまでは仕方がない。前述したように私はモンスターなのであるから。


ただ、私はこのことを誰にも悟られるまいと、自分の服ごと大浴場に入ったのだ。色々なことが頭をよぎった。着衣水泳するの何年ぶりだろうなとか、あんだけ和風建築なくせして火葬場並みにクソデカい食洗器置いているんだなとか、客には精進料理食わせてるのに高僧達は無茶苦茶美味い肉食ってるなとか。

浴槽から出て、水浸しのパーカーを石油ストーブで乾かした。部屋に戻り、汚物まみれの布団をあろうことか、押し入れに戻して八卦の封印を施した。完全犯罪を犯し、床に就いたのだ。
 

起きたら朝の7時だった。2日しか働かないアルバイトが、寝坊したわけである。墨のお兄ちゃんはグロッキーな顔をしながら朝のおつとめをこなしていた。人は見掛けじゃないことを学んだのであった。私は昼の配膳が終わると、予定があると雇い主に話しアルバイト代を握りしめその場を後にしたのであった。
 
因みに、三麻は私がボロ負けで、お二人とはお約束をしていましたが果たすことはなく去った。じゃあな、反社!!!
今でもパーカーの焼け跡を見ると、この時の思い出が蘇る。

ここまできて、まだ濡れ場の1つも出てこないなと。皆さん、早く抜ける描写だけ綴れとお思いでしょう。ですが、今しばらくお待ちください。なんせまだこれを書いているのは前日なのです。にぱー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー数時間後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日付を越える頃には、貧相な身体に厚化粧しすぎて粉までふいてる履歴書が出来上がった。これに目を通す面接官もとい人事部の面々は、胸をさらけだして如何にも抱いてくださいと書いた文にどんな意向を示すのか十分に見ものである。

かくして、私はシティヘブンネットを開くのであった。

ここまできて、自分でもソープのくだりがたぶん要らないこと想像に容易いので、未来の感想を書くことにした。

『いと心地よし。』


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