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シート化に注いだ情熱

創業以来、フィリングやフラワーペーストの製造を通じて製菓製パン職人の日常を支えるパートナーとしてものづくりを続けてきた大阪・堺の田中食品興業所。

彼らの大きな節目となったのは、1984年に誕生したシート状のフラワーペースト「フラワーシート」だ。

田中食品興業所の営業マンはある日、得意先のベーカリーでシェフが生地にクリームを塗り、巻き込み、すべて手作業でパンをつくっている様子を目にする。「もっと簡単にできないだろうか?」担当者はその思いを社に持ち帰り開発部へ共有。その結果、包材から簡単に取り出して使えるシート状のクリームの開発というアイデアが生まれた。

しかしすぐには上手くいかず、テストは何度も何度も繰り返された。その結果、倉庫は一時サンプルで埋め尽くされ、テストキッチンには試作したパンが山積みに。

「焼いた断面を見て、シートのまわりの空洞の状態を確認して。あとはまな板2枚を機械に見立てて、ペーストを挟んでシートにするテストをしたり…あの頃は来る日も来る日もパンを焼いてましたね」


営業部の思いと開発部の推進力が重なり合った結果、製品は着想からたったの4ヶ月で完成に至った。パン生地と一体となって均一に伸ばせること、焼いても風味が保持されること、パン焼成時の熱(200〜250度)がかかっても溶解したり崩れたりしないこと。「ペーストをシートに変える」という一見シンプルなアイデアながらも、フラワーシートには田中食品興業がそれまでに積み重ねてきた乳化技術をはじめとする様々な研究の成果が詰めこまれていた。

発売を開始すると、フラワーシートは当時急増していたリテールベーカリーの多忙なシェフたちから大きな注目を集めた。特に焼成後の断面が美しいチョコレート系のシートは、その目新しさから多くの支持を得て売れ行きを伸ばした。