12月5日は何の日?

記念日って色々あるけど…

 日本には様々な記念日がありますよね。有名なものは11月11日のポッキー/トッポの日あたりでしょうか。日本記念日協会によると、12月5日に記念日登録されているものは『アルバムの日』『みたらし団子の日』『長城清心丸の日』があるようです。

 もちろん、これらについての解説を書くのも良いのですが、今日は土壌系見習い VTuber / Vnoter として、外せない一日でもあるのです。みなさんは FAO という組織を知っていますでしょうか。国際連合食糧農業機関(FAO)は国際連合の専門機関のうちの一つで、飢餓の撲滅を世界の食糧生産と分配の改善ならびに生活向上を通じての達成を目的とする機関です。そのFAOの主導で2013年12月にある宣言が国際連合総会で採択されました。それは2015年を国際土壌年。そして、毎年12月5日を国際土壌デーにしようというものでした。

世間の認識と土壌

 というわけで、今日は国際土壌デーだったんですよね。前項でお話しした通り、国際土壌デーと国際土壌年が同時に採択されたのですが、国連総会において同一テーマで記念日と記念年が同時に制定されたのはこれが初めてだったんです。それほど、土壌に関する問題が喫緊の問題であると国際連合において認識されているということなのです。

 でも、日本においては土壌劣化がどうだの、あまりそういったことはニュースで聞きませんよね。そのような状況で生まれる安心感からか「土壌劣化とかいうけど砂漠が広がってるだけでしょ」「日本ではあまり関係のない話だよね」とかいう意見が皆さんにはあるかもしれません。しまいには「日本で土壌の研究をするより、そういった危機的状況にあるところでしてきてはどうか」と言われてしまうかもしれません。

 しかしながら、世界で発生している土壌劣化は日本に対して大きな影響がありますし、そういった土壌劣化に対する研究のみならず、日本で日本の土壌を研究しなければならない理由もしっかりあるのです。

土壌劣化と食料生産

 まずは土壌劣化について少しお話したいと思います。その前に土壌劣化の定義について少し確認していきましょう。土壌劣化とは、肥沃で土地生産性の高かった土壌が何らかの原因(主に人為的原因)によって生産性の低い土壌に変化してしまうことを指します。これらは土壌が何らかの力によって侵食されることによって進行します。もちろん、人間が干渉しなくてもある一程度の侵食は進みます(地質学的侵食)が、人間が干渉することによってそれ以上に侵食が進む(加速侵食)場合があります。

 では、土壌劣化にはどのような種類があるのでしょうか。前提として、土壌はかなり複雑な系であり、その土地の岩石や気候、動植物の営みによってそれはいかなる形態にも変化する可能性があります。条件が一つ違うだけでその土地の生産性は大きく変化することでしょう。地面に吹き付ける風が少し強いだけで、土地生産性が大きく失われてしまう土壌だってあるのです。

風食

 風食は地面に吹き付ける風が土壌の肥沃な層を削り取って発生する土壌劣化です。土壌は層構造になっており、最上部の層が農業でよく活用される肥沃な土壌の層なので、土壌生産性が風の影響をダイレクトに受けやすいことは想像に難くないでしょう。

 深刻なものは、主にサヘルと呼ばれる乾燥地域で発生しているのが確認されます。サヘルでは風によって一年に4~5mmの表層土が失われる (2015 伊ケ崎)⁽¹⁾ と言われています。 4~5mm と聞いて「なんだ、その程度か」と思わないでください。土壌が生成するスピードというのはこのスピードよりもっと遅いです。それを直感的に感じてもらうために 同書の伊ケ崎先生の例えを借用するなら以下のようにも言えます。

約100年の時を経て生成された貴重な土壌がたった1年で失われることになる

出典は 引用文献 (1) に依る

水食

 水食は名前の通り、土壌が水によって物理的に流されることよって発生する土壌劣化です。風雨の激しい土地で多く発生するほか、過度な森林伐採によって今までそれが問題にならなかった地域でもこの問題が顕在化しつつある地域もあります。

土壌塩類化

 土壌塩類化も名前の通り、何らかの作用によって土壌表面に塩類が集積し、農業用地としての機能を最終的に停止させてしまう現象で、もちろんこれも土壌劣化の一種です。シルダリア川とアムダリア川下流域で行われた灌漑農業によるものが教科書的には有名ですよね。

 北村・清水 (2010)⁽²⁾ では、シルダリア川下流域において土壌塩類化が起こる原因は灌漑農地への過剰な給水や用水路からの漏水、その灌漑農地の管理の劣悪さなどが挙げられ、適切な方法で灌漑が行われていれば 土壌劣化は防げたのではないかと考えられますね。

日本での土壌研究の必要性

 今まで海外の例をずっと挙げてきました。ますます「海外で土壌劣化に対する研究をした方が人類のためなのでは」と言われてしまいそうですが、日本で、土壌研究をする必要は大いにあります。その理由が黒ボク土の存在です。

 黒ボク土は国際的な土壌分類体系の一つを用いれば Andisol というグループに分類される土壌の一つで、世界の陸地でたった1%未満の面積しか占めない希少な土壌です。しかしながら、そんな土壌が日本では国土のなんと約17%を占め、その多くは農業用地として活用されています。

 繰り返しますが、世界ではあまり見られない土壌が日本では多く見られ、その多くが農業用地として使われているのです。そしてさらに、黒ボク土はほかの土壌には見られないような性質を多く持っています。

 ではもし、黒ボク土で土壌劣化が起こってしまった場合、日本で研究がなされていなかったら誰がそれに対処をすることができるのでしょうか。

 もちろん海外の土壌を守ることも大事ではあるのですが、自国の土壌を自国で守っていくのはそれ以上に大事ですよね。

執筆後記

 いかがでしたか。国際土壌デー当日に書き始めるといういつもの私の悪い癖が出てしまいましたが、分野外の人向けにはいい文章が書けたと思います。急ピッチで書き上げたので、誤字が所々見られるかもしれませんが、その時はあとでこっそり直しておきます。とにかく、12月5日は国際土壌デー。皆さん覚えておいてくださいね。Healthy soils for a healthy life. 国際土壌年のスローガンです。

引用文献

(1) 伊ケ崎健太 2015. 世界の土・日本の土は今 日本土壌肥料学会編 17-23.
(2) 北村義信 清水克之 2010. 土壌の物理性 115(0), 37-41

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