夏の徹夜

今日は中学3年生の断片的記憶です。

夏休み最終日。いや、日付を回っているから始業式の日。深夜2時。私も世の学生達と同じように、宿題の片付けに追われていた。

よし!どうにか終わりそうだぞ。読書感想文をガリガリと書き殴っていた。時計が「チッ、チッ」と小生意気に針を進めていた。

書くことは決まっているから、とズルズルやらずにいたお馴染みのパターンだった。3時間で終わって2時には寝るはずだったのに、全然終わらなかった。両親は私に説教をした後に、呆れ返って寝てしまった。当たり前である。自己管理どうなってんだ、私よ!

でも、読書感想文を書くこと自体は全く苦痛ではない(そういう問題でないのはもちろん分かるが)。頭には夜空がずうっと広がって、澄んだ星の輝きを観ている、そんな状態だった。
クーラーはとっくに消したが、とても涼しかった。物語がもつ、硬質でひんやりした雰囲気のせいもある。

徹夜の味を覚えたのは、つい去年のことだ。
研修旅行に行って(この話はまた別にする)、友達と一緒に「オール」をした。おしゃべりして、お菓子食べて、が楽しかっただけではない。黒がどこまでも続いている様、星がなくなっていく様、空の色が緩やかに変容する様、太陽が顔を出す様、それで地面が温められて気温が上がっていく様。こんなにも素敵なのかと思ったのだ。自然公園の中のロッジの玄関の前で腰を下ろし、何時間も見惚れたのだった。
自宅でそんなことしていたら怒られるだけだが、「宿題が終わっていない」という口実のもとで、今夜は徹夜ができる。

旧暦では秋のこの頃、夜は静かで貴い。
残暑で激しく鳴くせみや、ギラギラした太陽や、目が眩むような色彩が嘘のようだ。闇に沈んで、みんなが黙っている。
夏真っ盛りではこうはいかない。夜が深くなってもうるさい余韻を引きずっている。
私も沈んでしまったらいいのにな。などと思ったりする。

題材にしたこのお話はとても好きだから、書きたいことが沢山浮かんでくる。なんとかまとめながら、一生懸命原稿用紙に書き起こした。あと一枚!リミットは迫っている。


だんだんと夜が開けてきた。
「終わった……!」
カーテン越しに、空が白んでいるのを知る。
チラリとめくって、空を見た。星はほとんどが消えていた。
鳥が「ピチチチ」と鳴き始めた。

夏の夜は、もうおしまいのようだ。