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フォークリフト免許は令和の成人の儀式


白饅頭さんが常日頃おすすめされているフォークリフト免許を取得しましたので、その体験をみなさんと共有できればと思い、初めてnoteに投稿します。


・取得のきっかけ

最近やる気が出ない中、本当になんとなく

(白饅頭(さん)がフォークリフトのこといつも言ってるよな・・・)

と思いだし、ネット検索したところ土日✖️2回の計4日間で取得できることが分かりましたのでやってみよう思いました。本当に軽い気持ちでした。

・周囲の反応

フォークリフトの免許を取ろうと思うことを周囲に話してみると、

「なんで?君にそんなの必要なの?使うの?」
「今やらなきゃいけないことなの?」

と冷ややかなものでした。

(確かにそうだよな。何やってるんだろう。自分っていつも無計画だよな。)

と気持ちはすでに萎えてましたが、今更引けず。まあやってみようという感じでした。


1日目(講義&筆記試験) 後悔

集合は朝7時45分。倉庫の横の事務所で学科の勉強が17時まで続きます。
古い建物で全てが汚く、トイレが臭いです。
先生と受講者は全員男性(おっさんと若干のお兄さん)でした。

先生の講義をひたすら聞きながら、
大事だ言われた箇所にひたすらマーカーを引きます。
そこがテストに出るからです。
眠気との戦い。コーヒーをキメて踏ん張ります。

目が覚めたのは最後の『災害事例』の箇所でした。
色々な事故が掲載されています。
墜落死、崩れた荷物や倒れたフォークリフトによる圧死etc.

「あ、これ危ないじゃん。死ぬじゃん。」

突然怖くなりました。本当に死ぬんだなと。
マジで死。肉体がぐちゃっとなるやつ。

筆記試験をどうにか短期記憶で乗り越えた帰り道、もうやめようかと思いました。
朝早いし、臭いし、楽しくないし、危ないし、自分に必要な資格でもない。
自分がとても惨めでした。軽い気持ちで始めたことを後悔。


2日目(実技1日目) 格差社会

集合は8時。17時過ぎまで巨大倉庫の中でフォークリフトの運転練習です。
エンジンの掛け方→前進→バック→右左折と一つずつ進んでいきます。

慣れないフォークリフトの操作に四苦八苦しながらも、同時に同じ受講者のことが段々と目に入ってきました。

・10代イケメン
とにかくうまい。絶対モテる。小中学で足早かったタイプ。
小型フォークリフト経験者。

・20代さわやかお兄さん(既婚)
イケメン高身長。薬指に指輪がキラリ。この人も経験者でうまい。

・B系ぽっちゃり
リアクション薄く無口だが飲み込みが早い。タバコよく吸う。

・腰低い真面目おじさん
姿勢前屈みで足を閉じて座っている。昼飯ラーメン。ちょっと白髪。

・陰キャオタク中年さん(その1)
一番運転に苦労していた。よく運転中にパニック。

・陰キャオタク中年さん(その2=私)


(ああ、10代イケメンにさわやかお兄さん(既婚)とその他か。ここも社会の縮図なんだなあ。)

なんて事をぼんやりと考えていると、

「なんでハンドル逆に切るの!タイヤみる!ハンドルくるくるしても変わらんでしょ!!!」

と先生の大声が陰キャオタク中年さん(その1)(以降オタク中年さん)に飛びます。受講者の中で最も運転が苦手なオタク中年さんでした。

オタク中年さんが同じ属性なのはすぐ分かったので休憩中に話しかけてみると、

「次回以降参加やめようかと思ってます。。みなさんにもご迷惑かけちゃってますし・・・。」

とのこと。とにかく一緒に頑張りましょうと励まして2日目終了。


3日目(実技2日目) 変化

集合は8時。今日も17時過ぎまで運転練習です。

朝倉庫に行くと、オタク中年さんが先生と朝練してました。
先生にとってはやる必要のない時間外労働。
やめようか悩んでいたオタク中年さんは一体何時から練習していたんでしょうか。

運転の練習も荷物の積み下ろしが加わり、難易度が増します。
ひたすら反復練習です。

この辺りから朝練してるオタク中年さんはもちろん、
(私を含めた)受講者の変化が表れました。

腰低い真面目おじさんが小声でオタク中年さんを応援し始めました。本人には言わない(エンジン音でそもそも聞こえない)けれど、

「右に戻せ!反対!逆だって!ああああ。そう!」

とずっと言っています。

B系ぽっちゃりさんは返事をし始めました。

「ハイ、分かりました!」

とはっきり言うようになりました。上達が著しく、技術が最も安定しており頼れる感じが出てました。

10代イケメンとさわやかお兄さん(既婚)は動作がキリッとしてきて、ただただ格好良かったです笑。

私は余計なことを考えるのをやめて、ひたすら正確な動作の反復練習をしました。他の人の練習中も視野を想像し、小さく動作を再現しました。

練習が終わり家に帰った後も、翌日の実技試験に備えて頭の中でシミュレーションを繰り返しました。


4日目(実技3日目&実技試験) 超えなければ

集合は8時。17時過ぎまで練習をした後、実技試験です。

先生の「今日が一番苦しいです。」の言葉通りでした。

徐々に高まる緊張、繰り返しによる慣れと飽き、眠気、空腹感、寒さ、疲労etc.

確かに運転は上達してきました。達成感もありました。周囲の変化にも驚かされました。しかし、最後の実技試験に合格しなければ何のためにここまで我慢して頑張ったのか分かりません。欲しいのは結果です。試練を越えるのは自分。頑張れ乗り越えるんだと自分に言い聞かせます。

17時半〜
一人一人実技試験をしていきます。
私は2番目。無事合格しました。

「試験終わった方から事務所に行ってアンケート書いてください。」

と先生が言いますが、番が終わっても立ち去る人はいません。合格が発表される度に拍手が起こります。皆ほとんど互いに喋らなかったのに拍手は鳴ります。

「アンケート書くのに時間かかるからもう行ってください。」
と先生が言います。皆、事務所には行かず倉庫の中が見える喫煙所に移動して最後の受験者オタク中年さんを見守ります。

オタク中年さん、合格。

「おお〜。よかったね〜。」「壁ギリギリでいったね〜。」

安堵の声が漏れます。全員合格。

最後に事務所で講習終了のカードをもらい、帰宅となりました。


感想 フォークリフト免許と成人の儀式は似ている

今回、フォークリフト免許を取得して思ったのは、フォークリフト免許は成人の儀式と似ているところが多々あるのでは?ということでした。

バンジージャンプしたり、ライオンを狩ったり、牛の背中を渡ったり、毒アリだらけの手袋に手を突っ込んだりと、現代の目線から見えたらエキセントリックに見える部分が強調されている世界の成人の儀式ですが、実は男性が生きていく上ですごく重要な学びがあるのではと思いました。

・(多くは)男性のみが行う
そもそも女性はフォークリフトの免許をあまり取りません。インフラ系の仕事をされる方も少数です。

・場に男性しかいない(男性が多い)
先生、受講者は全員男性でした。汚くて臭い場所だから当たり前かもしれません。

・ぱっと見やる意味が分からない
仕事に必要な方の場合は当てはまりませんが、私の場合は自分でも合理的な説明がつきません。理性的に考えたら、お金・時間・命の危険を犯してまですることとは思えないでしょう。

・危険である
運搬する荷物の重さは1.1tでした。荷物の下敷きになったり、フォークリフトが倒れたら良くて重傷、悪くて死亡です。すぐ横に死があります。

・一人で成し遂げなければならない
フォークリフトは1人乗りです。運転中は誰のアドバイスも誰の力も借りずに荷物を運ばなければなりません。

・結果責任がある
試験に落ちても怪我をしても自分の責任です。誰も肩代わりはしてくれません。

・ありのままのワタシなど必要ない
大事なのは安全に任務(=荷物の積み下ろし)を遂行できる能力を持つことです。そこには自己主張は必要ありません。

・ありのままのワタシは周囲に受け入れられない
そのままの自分=運転技術を持たない自分は一切認められません。能力を獲得するという自己変化が必要です。

・自分で考える
自分に足りないことは何なのか、苦手はそもそも克服できる類のものなのか、限りある時間の中でどうトライアル&エラーして改善していくか、自分で考え行動しないといつまでも運転技術は上達しません。

・一人=独りではない
この気づきが一番大きかったですが、一人で何かをしなければならないということは必ずしも孤独であるとは限らないということです。立場や仕事や年齢など背景は様々に違う者同士の集うフォークリフト教習所には、仲良し感はありませんが言葉にはしない&ならないうっすらとした連帯感があったかもしれません。言葉として表れない「俺も一人で頑張るからお前も一人で頑張れ」という思いがあると感じました。

・成し遂げることによるコミュニティへの包摂
喫煙所でオタク中年さんの合格を全員で見守り、見届ける時、悪意を持っていた人はいなかったのではないでしょうか。喫煙所で私は、「バンジージャンプやライオンの狩りする男を見守る男もきっといるんだろうな」と思っていました。オタク中年さんが合格した時、ヒョロヒョロオスも色白オスもチビオスも含めて私たちは確かに全員雄であり、闘う共同体を形成した気がしました。


まとめ フォークリフト教習所=令和の男塾

自分にとってフォークリフト免許は思っていたよりずっと大変でした。「普通にやれば合格する」とネットに書いてありますが、その「普通」はやってみないと分かりません。

<普通のこと>
毎朝6時半に起きて支度する。
寒さor暑さ対策をする。
印鑑やペンを忘れずに持っていく。
講義を寝ずに聴く。
マーカーを引けと言われたら、マーカーを引く。
必要なことを覚える。
先生に挨拶をする。返事をする。
失敗した時の恥ずかしさに耐える。
人のせいにしない。
悔しさを声に出さない。態度に出さない。
口を閉じる。
アドバイスに従う。
嫌でも繰り返し練習する。
眠気や疲労や空腹を我慢する。
緊張に耐える。
失敗しても慌てない。
4日間続ける。

4日間で3万円。
資格取得を目指してもいいし、雄磨きをしてもいいかもしれません。
少なくとも自分は後悔してません。
やってよかったフォークリフト。ありがとう白饅頭。




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