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おすすめ本紹介 「Y駅発深夜バス」(青木知己/東京創元社)

創元推理文庫の帯には、
「あの手この手で謎解きのおもしろさを描いた〈ミステリ・ショーケース〉」
「手間暇かけた五つの短編ミステリを御賞味ください。」
と書かれています。
 
店主は東京創元社の友人に「これでお客さんに面白さが伝わるかなあ……」と言いましたが、ではどう書くのかと問われたら答えに窮します。
五つの短編がそれぞれバラエティに富んでいて、すべて質が高い。フーダニットあり、アリバイ崩しあり、ホラーあり。それらがいずれも本格ミステリのテイストで書かれているのですから、これぞミステリ短編集のお手本! と叫びたいくらいですが……じゃあそれをどう表現するかと言うと。
こういう感じに、なってしまうのですかね。
でも、「面白い」本は「面白い」としか言えないものです。
 

 中でも特に、表題作の面白さは逸品です。
「摩訶不思議な謎」が提示されホラーっぽくはじまり、「本格ミステリ的な解決」を見せ、最後は「イヤミスのような着地」をします。
一篇の中に、ミステリの魅力を全部詰め込んだような作品。
もちろんその他の作品も負けず劣らずのハイクオリティでぜひ多くの皆さんに読んで頂きたい作品集なのですが、これがまた全然売れなかったんですよね……。
他の書店さんではどうだか知りませんが、少なくとも当店ではさっぱり。
 
元々、本作は東京創元社の叢書レーベル「ミステリ・フロンティア」から発刊されたのですが、「これほど面白いのに表紙が残念過ぎる……あまりにもセンスがない……」と思いました。まったく手に取ろうという気が起きない、と。
(装丁の方、編集の方には申し訳ありませんが個人の感想なのでご容赦を)
六年もかけてやっと文庫化されて表紙イラストはマシになりましたが、それでも売上に直結するようなものではなく……どうやったら読者に届くんですかねこの面白さ。
 
ミステリですから内容的な話はあまり出来ません。
でも面白さは保証します。
読んでください、ぜひ。

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