じゃがりこ。

俺はこの会社に入って、5年目。
大学生の頃は御社御社を連呼して、それぞれの会社を第一志望とうそぶいて回った。
その結果、本当の意味で第一志望の会社に合格。
ここまでは順風満帆だった。

しかし、社会人生活も慣れたとはいえ、学生の頃のような自堕落な生活にも憧れる。いや、世の中の学生みんなが自堕落というわけではないんだ。
だいたい講義が始まるのが9時だろ。会社の始業時間も9時だったらどれだけ嬉しいか。それくらいのことだけれど、満員電車はさすがにこたえる。

気を落としながら、今日も1日が始まる。

もう仕事といってもたいていは流している。
憂鬱なのは午後の会議。
ぼんやりしていたら11時か。今日の昼飯何食おっかなぁ。

。。。

ーーくん!

やっべ、寝てた。
カレーうますぎて食べすぎた。眠気に襲われて…あぁそうだ。今は会議だ。会議の内容聞いてなかった。どうしよ。

「新製品を売り出したいのだが、キャッチコピーがほしい。どうしたらいいかね!」

ふぁー…勘弁しろし。どうでもいいからテキトーに答えちまおう。

「食べだしたらキリンがない…なんちゃって」

言ってから気付いた。これはマズったなぁ…面白さのカケラもない。

しかし、周りの人間の表情は変わった。

「キリがない…とキリンがない…ふむ、掛けるという手があったか」
「動物のイラストを添えてキャッチーにしましょうか」

トントン拍子で話が進む。
おい待て、正気かお偉いさん方!!!

「えー、それでは…くんの提案したキャッチコピーでいこうと思う」

マジかよ…終わった…。
こうして自分の恥ずかしいダジャレがキャッチコピーの案として通ってしまった。

こともあろうに本社で協議を重ねても結果は同じになり、店頭に「キリンがない」が並ぶことになった。

数年後、そのバカ売れしたお菓子のキャッチコピーを考えたのは自分だといまだに周りに言えずにいる。

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