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朝、5時15分。

人びとは、現代において、テクノロジーによってほとんど孤独を感じずに時間を浪費することができるが、反面みな孤独でもある。

5時44分。京都駅30番線のホームから眺める空は、今日も青かった。 


9時50分ごろ、搭乗。
機内で、若いベトナム人のねえちゃんと話した。
日本で語学学校に通い、介護福祉の仕事をしているらしい。2年ぶりの帰省ということらしいが、喜ぶそぶりは見せていなかった。
ベトナムの数字やあいさつを少し教えてもらったりするのは楽しかったが、自分が教えられることがほとんどないことが、やりきれなさを感じさせた。持ってきた、岐阜のばあちゃんがつけた梅干しをすすめて見たが、二つ返事で断られた。なんだよ、そんなに怪しいかね?



ベトナムに着いた俺は、まず空港から脱し、市内へ向かうべく移動手段を探した。exchange counterの姉ちゃんが言うには、バスで行くなら152を使え、とのことだが、ターミナルを出てみてもそんな数字は見当たらない。というか、bus stopの標識があるのにバスがない。
おどおどしている日本人を見てカモだと思うのだろう、何人もタクシーにいやんが話しかけてきて、いつの間にか交渉をしてしまっていた。
80,000ベトナムドンでokだというので、了承してついて行った。

あとで知ったことだが、152のバスは待っていればそのへんに到着したし、バスだと5000ドンで市内まで行けた。

にいやんの車に乗り込むと、出身を聞かれ、答えると「コンニチハ〜」などと言っている。日本人をカモにするのには慣れているのだろう。

そんなことはどうでも良かったが、走り出すとすぐに何か言い出した。どうやら、駐車料金を払えというのだ。しかし両替したてでそんな小金を持ってもいないし、第一お前は80000ドンでいいと言ったではないか。
そうして何度も押し問答を繰り返していると、どうやら諸々合わせて2000円以上も取られそうなのだ。これは高すぎると言うと、元来たところで降ろされた。

一体なんだこの有様は。ろくに市街にも出れないのか俺は。こんな感じで旅はスタートした。


・・・

と言うふうにとても萎えてしまった俺は、すぐにホテルにチェックインし、ウジウジとベッドで横たわっていたが、友達と電話したことで少し気が晴れ、外を歩いてみることにした。

外は地元の人間たちが地べたやらに座り込んでダラダラとジュースを飲んだりして談笑している。
オートバイの喧騒、覆いかぶさるような異臭、整備されきっていないインフラなど、全てがアウェイに感じてしまい、また落ち込みそうになるが、しばし歩いてみる。
すると、大通り沿いの道でコーヒーを飲んでいた若者と老人が、俺が日本人だとわかったらしく、こっちで一緒に飲めと言う。もちろんお代も払ってくれた彼らは、日本に行ったことがあることなどを話し始めた。
 …なんだ。すごく優しい人もいるじゃないか。それにしてもいい出会いをしたもんだ。 ご機嫌に俺とのセルフィーを撮る若者を見て心底そう思った。

その結果、初日は「惨敗」を喫すことになるのであるが。

ふあ、眠くなってきた。気のいいベトナム人に惨敗を喫した話は、また今度にするとしよう。


さて、明日からまた戦いだ。

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