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リアライズ 女

 女は自分の心をテニスボールほどの丸い球にして持ち歩いていた。ピンクやブルー、紫や黄色、他にも色とりどりの球を持ち歩いていて、出会う人に合わせて見せる球を使い分けていた。
 ある日、男が言い寄ってきた。女は、男が喜びそうな球を探して出して見せた。すると男は、球をチラリと見ただけで遠くへ投げて捨ててしまった。次に女は、男の嫌がりそうな球を渡した。男は受け取ると、ニヤリと笑って握りつぶした。女は次々と球を手渡して、男とやりとりを繰り返した。球もなくなり、最後に女は、誰にも見せたことのない誰も好まないようなくすんだ色の球を差し出した。男は、その球をじっと眺めた。何時間も何日も、何か月も何年も眺め続けた。
女は、男と一緒に球を眺めた。何年も何十年も眺め続けた。男と一緒に眺め続けるうちに、球は不思議な色に変化し、輝き始めた。
女は初めて、今まで自分の心を眺めたことがなかったことに気づいた。

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