バースデー炎上から思うこと

バースデーの新作商品が話題のようだ。

現代美術作家の加賀美健さんとのコラボアイテムで、「パパは面倒見てくれない」や「パパはいつも寝てる」などの男親批判をプリントした商品を発売し、炎上した。

販売開始が2024/7/29、記事が出たのが7/30 18:06、バースデーからの販売中止のお知らせが7/30 20:00。
わずか丸2日のスピード対応で、現在はもう商品は取り下げられている。

私は正直驚いた。
バースデーといえば、言わずと知れたしまむら系の子ども用品店。安いのにおしゃれなデザインの子ども服があったり、キャラクターとのコラボ商品があったり、親子目線の商品が多い印象。

それが、なぜ男親批判??急にケンカ売ってる??

これ、作者が「現代美術作家」というのがポイントなのでは?

失礼ながら、加賀美健さんを存じ上げなかったので、少しだけ調べてみた。

加賀美健は1974年東京都生まれ。スタイリストのアシスタントを経て、サンフランシスコへ渡る。帰国後、作品を発表し始める。社会現象や時事問題、カルチャーなどをジョーク的発想に変換し、彫刻、絵画、ドローイング、映像、パフォーマンスなど、メディアを横断して発表している。

https://oil.bijutsutecho.com/artist/511

「社会現象や時事問題、カルチャーなどをジョーク的に変換し」とある。

要するに、この方はジョークとしてこの言葉をチョイスしたのだろう。

ジョークには高度なセンスが要求されるからね…。
このセンスを理解できる方は、この方の作品を評価するだろうし、そうでない方は批判する。
ただそれだけのことだ、とは思う。

今回の作品では、バースデーというステージ場では受け入れられず、理解されなかった。


ただ、擁護するわけではなく、ただの想像でしかないけど、この作品(敢えて商品ではなく作品)で、伝えたかったのは、

男性が育児参加しづらい社会への批判

では、ないだろうか。

この方は、育児参加しない男親を批判したかったんじゃなくて、男性が育児参加しづらい社会への問題提起をしたかったんじゃないかな。

実際、この作品は炎上し、
多くの人の目に留まり、
議論が起こり、
その議論の中には、少なからず「男性が悪いんじゃなく、社会に問題あるのに、こんなプリントけしからん」的なものもあった。

作者の意図通り、問題提起はできた様子。

バースデー側も、制作段階でそれらの意図を汲んでいたから発売となったのだろうが、制作者側の想定以上の大炎上となってしまい、発売中止となってしまったのだろう。


ん?
いや、もしかしたら、この発売中止までが、想定内だった!??

だって、あまりにも対応が早い。


炎上し、企業イメージを損ねてまで、
現在の育児環境を憂いて、
英断を持って、
商品を発売してくれたのでは!?

バ、バースデーさん、偉大………


この、バースデーさんの身を削った問題提起が、少しでも報われて、
長時間労働や子育ての負担感を軽減させる1つの契機となることを祈らずにはいられない!



と、冗談はさておき、
私が危惧したのは、こうした経験で、社会がさらに保守的になってしまうこと。

攻めた発信や(個人ではなく)社会批判が、より良い社会の実現を目指したものである場合、ということは大前提として、
こうしたものが封殺されない社会であることを切に願う。

私が一番心配に思ったのは、
「物事を一面的にしか見ず、短絡的に批判する」人たちが大多数であること。

自分の目に映ったものが、一面でしかないことを考え、他の見方を考察することが大切だと思う。

私は今回の作品は、ブラックジョークだと思うし、我が子に着せるかって言ったらまぁ着せないけど、
それでも面白い試みだと思った。
それは、例えば、下品な他人批判をするお笑いなんかより十分に。

画面の中の誰かが誰かを馬鹿にして、それを第三者の立場で傍観して笑ってる方が、確かにラクで笑えるんだろうけど。

自分たちが批判された(かも)!
馬鹿にされてるようで不愉快だ!
って、頭に血を上らせてカッとなって批判し始める前に、少し、いろいろな可能性を考えられたらいいなって思う。

そうやって考えを巡らせることができる人がたくさんいる社会であって欲しい。

せっかく、99%の人が義務教育を受けられる社会。
日本って、頭がいい人たちの国だと思うから。


とは言いつつ、私が批判的に「他人を馬鹿にするお笑い」と表現したものも、私には想像がつかない視点から見たら、何か別の意味あるものなのかもしれないし……。

うーん。奥深い。


(参考)該当商品の一部 バースデー エックスより
(参考)該当商品の一部 バースデー エックスより

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