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「清水 新スタジアム問題 その3」

今回は、新スタジアムの有力候補地と目されるエネオス遊休地に関係する法規制等について触れていきます。
今回の内容は、法令等が出てくるので、馴染みがない方には難しい部分があるかもしれません。また、少々長い話になるので、難しいなと思った方は最後の (6)まとめ  で概要を把握していただければと思います。

(1)港湾法

さて、こんな色塗りされた図を見たことがありますか?

都市計画図

これは、都市計画図というもので、色塗りは用途地域の種別を示しています。こちらは、エネオス遊休地の箇所を抜粋したものです。
紫色に塗られていますが、工業専用地域としての指定をされていることを示しますが、「都市計画法」に基づいて、町を住居専用地域や商業地域などの13種類に分けて、土地の用途を決めて、建築の制限をしています。

さて、もうひとつ、こんな図もあります。

臨港地区図

図が90度回転していますが、エネオス遊休地の箇所です。おや、色塗りが異なっていますね。
これは、「港湾法」に基づいて定めた「分区」というものです。単純に言うと、港湾法に基づいて定めた用途地域みたいなものです。エネオス遊休地は、「工業港区」に入っています。

エネオス遊休地は、清水港に離接しているため「港湾法」の影響下にあるということです。
ご存知だと思いますが、清水港は県港です。静岡県が港湾法に基づき「港湾管理者」となっています。「県」が清水港の水域及び周辺地域について権限をもって管理等しています。

(2)臨港地区と分区

では、エネオス遊休地に関係する港湾法の分区関係の規定を見てみましょう。

第2条(抜粋)
1~2(省略)
 3 この法律で「港湾区域」とは、第四条第四項又は第八項の規定による同意又は届出があつた水域をいう。
4 この法律で「臨港地区」とは、都市計画法第二章の規定により臨港地区として定められた地区又は第38条の規定により港湾管理者が定めた地区をいう。

第39条(抜粋)
第39条 港湾管理者は、臨港地区内において次に掲げる分区を指定することができる。
(1) 商港区 旅客又は一般の貨物を取り扱わせることを目的とする区域
(2) 特殊物資港区 石炭、鉱石その他大量ばら積みを通例とする物資を取り扱わせることを目的とする区域
(3) 工業港区 工場その他工業用施設を設置させることを目的とする区域
(4)~(10) (省略)

港湾には「港湾区域」という水域と、その水域に接している陸上部「臨港地区」があります。
その陸上部の臨港地区には「分区」として土地の用途を定めることができます。
エネオス遊休地は、この臨港地区に含まれており、分区としての「工業港区」の指定されている範囲にあるということです。

(3)分区内の規制

分区には建築等の規制が伴います。

第40条 前条に掲げる分区の区域内においては、各分区の目的を著しく阻害する建築物その他の構築物であつて、港湾管理者としての地方公共団体の条例で定めるものを建設してはならず、また、建築物その他の構築物を改築し、又はその用途を変更して当該条例で定める構築物としてはならない。

静岡県の「静岡県の管理する港湾の臨港地区内の分区における構築物の規制に関する条例」にもう少し具体的に定めがあります。

第3条(抜粋)第3条 法第40条第1項に規定する条例で定める構築物は、別表の左欄に掲げる分区の区域内においては、それぞれ同表の右欄に掲げる構築物以外のものとする。ただし、知事が公益上その他特別の事情によりやむを得ないと認めて許可したものは、この限りでない。

別表(抜粋)
工業港区
(1) 法第2条第5項第2号から第6号まで、第8号から第10号の2まで及び第12号に掲げる港湾施設
(2) 原料又は製品の一部の輸送を海上運送又は港湾運送に依存する製造事業又はその関連事業を営む工場及びその附帯施設
(3) 海洋に関する研究施設
(4) (2)及び(3)に掲げる施設において行う業務に従事する者のための休泊所、診療所その他の福利厚生施設
(5) 官公署の施設
(6) 物品販売業を営む店舗及び飲食店で知事の許可を受けたもの

このように、エネオス遊休地は上記の別表のような施設以外は建てられないという規制を受けています。

(4)港湾法と他法との関係

前述しましたが、エネオス遊休地は都市計画法上の用途地域の指定(色塗り)も受けていましたね。二重の規制を受けているのでしょうか?これには、港湾法第58条に次のように規定があります。

第58条 建築基準法(昭和25年法律第201号)第48条及び第49条の規定は、第39条の規定により指定された分区については、適用しない。

この規定は、港湾法の分区内については、都市計画法の用途地域とそれに伴う建築基準法の適用も受けないということになります。
つまり、分区内の建築物については、港湾管理者としての「県(知事)の許可」を受けることになるということです。一般の土地とは違うんですね。

(5)港湾計画

港湾法第3条の3において、港湾の空間の開発、利用及び保全に行うための指針となる基本的計画である「港湾計画」を策定することが求められています。
分区の規制の外に、この港湾計画での地位付けもとても大事なのです。港湾エリアにどのような有益な施設を誘導し、どのような土地利用、開発をしていくかというものが計画に載せていくものです。
審議会が設置されて、その計画が審議されて策定、変更されていきます。
以下に県のホームページと、直近の議事録を貼っておきます。議事録の16と17ページにエネオス遊休地に関係する発言があります。


また、分区の図とは別に、港湾計画を反映した計画図があります。以下のようにエネオス遊休地が計画中で位置づけされていますね。

港湾計画図

(6)まとめ

  • エネオス遊休地は港湾法の「臨港地区」内にあり、その中で「工業港区」という分区の範囲内にある。

  • 分区(工業港区)では県条例で指定された建築物以外は建てられない。

  • ただし、知事が特別に認める場合は許可される例外規定がある。→この例外規定が重要

  • 分区内の建築許可は、県知事に権限がある。→ここも重要

  • 港湾法に基づく「港湾計画」があり、この計画での位置づけも重要。

と、長い話になりましたが、この港湾法の関係はとても重要なポイントになります。

次回は、エネオスさんの次世代型エネルギーの開発計画の関係を少し彫り下げていきたいと思います。


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