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「つゆの素」の「もと」はだたの振り仮名~商標拒絶された悲しいつゆ~

つゆの素のふりがな 

先日にんべんの「つゆの素」のふりがな有無について調べた。

 その後、このロゴについて調べてみたところ、ただのふりがなでしかないということになっていた。
 なぜかというと商標の登録が拒絶されたからだ


商標登録の拒絶

 「つゆの素」の商標が出願されたのは2013年で、にんべんから「だしつゆ」の区分となっていた。
 J-PlatPatから例のロゴが白黒で描かれていることが確認できる。
 一方で2015年に拒絶査定不服の審決が発行されている。つまりは商標として認められずそれに不服を申し立てたものの、なお認められず結果的に登録できなかったということである。
 この拒絶理由を読み解いていく。

拒絶理由

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「本願商標は,商品の普通名称と認められる『つゆの素』に通じる『つゆの素』(「素」の文字の側面に小さくその読みを特定した「もと」の文字を配している。)の文字を表してなり,その構成中の『つ』の文字を多少デザイン化し,さらに,『素』の文字を『くずし文字』で表しているものの,この程度の文字のデザイン化は,特異のデザイン化とは認められず,全体として普通に用いられている域を脱しているものとは認められない。<中略>本願を拒絶したものである。

不服2013-23737

 原査定では、商標としてのオリジナリティは
・「つ」をデザイン化したこと
・「素」の字を崩したこと
・「素」の字に「もと」のふりがなを振っていること
にありそうだが、その程度では認められないよと言っているのである。
 現につゆの素と名の付く商品はたくさんあって、どれも似てはいる。
 一員にすぎないものの、「素」に添えられた「もと」はただのふりがなでしかないといわれている。

他社製品のつゆの素1
他社製品のつゆの素2


それでもあきらめられず

 では不服を申し立てた際にはどのような判断がされたのだろうか。
 不服に対する審決(=当審)の内容を見ていこう。

第3 当審の判断
1 商標法3条1項3号該当性について
<中略>請求人は,<中略>(2)「素」の文字が「もと」と読むのが困難であるほどに崩れた態様で表されていること,<中略>点で,極めて独特なデザインであると主張する。


拒絶2013-023737

 まず、にんべんは「素」の字を崩しすぎて(=オリジナリティがありすぎて)読めなくなったので振り仮名をつけましたと主張した。

<前略>また,崩し書きの文字が,同分野において種々採用されていることはすでに示したとおりであり,<中略>「もと」の文字が「素」の文字のふりがなとして認識し得ること<中略>独特のデザインによるものということはできず,いまだ普通の域を脱していないというのが相当である。

拒絶2013-023737

 審査はあくまで崩し書きはありきたりであることと、「もと」はただの振り仮名にすぎないですよねとの結果を繰り返している。
 

 このように「つゆの素」は商標として認められなかった。
 また、そこに書かれた「もと」の字も特段のオリジナリティはなくただの振り仮名に過ぎないと切り捨てられていた。そうなると、にんべんが振り仮名有りのつゆと無しのつゆ両方を作っていたことはある種納得できる。
 商標になれなかった「つゆの素(もと)」に固執せずに新しいブランドとして認知されようとした営業活動が複数種類の「素」を生んだのかもしれない。



参考サイト

商標公開2013-000556
拒絶2013-023737