見出し画像

2020 FGOクリスマスイベントに関する諸考察(超簡易)

 こんにちは。初めての方ははじめまして、Twitter等の考察を読んでくれてる方はいつもありがとうございます
おらふと申します。
 ぼくは専門家でもなんでもなく、専攻してる訳でもなくてただ趣味でタイプムーン関連作品で使われてる元ネタを探してるだけのオタクです。なので、学術的価値やその他諸々は全く期待せずにオタクの戯言程度に読んでいただけたら幸いです。それではよろしくお願いいたします。
 今回は2020クリスマスイベントについて見ていこうと思います。イベント発表から開始まで短いので、掻い摘んで話しますが、型月インド神話と日本、中国周りの設定はガチガチに濃厚です。とても全部は拾えないのでほんとのほんとに100分の1もないくらいを喋るごく簡易な内容となっていますし、この記事には地獄界曼荼羅のネタバレを含みます。それでも良いよという方のみお読み下さい。

新サーヴァントは誰なのか

画像1

 それではまず最初に新サーヴァントから見ていこう。この褐色で黄色い目のサーヴァントは恐らく「ヴリトラ」であると考えられる。簡単にヴリトラについて見ていこう。
ヴリトラとは、インドラ(天帝とも呼ばれ、帝釈天という側面を持つ雷神)にヴァジュラを用いて殺された多頭蛇であり悪竜である。これにより、インドラはヴリトラハンという称号を得ることになったのである。(ヴリトラハンはウルスラグナと呼ばれ、ウルスラグナはゾロアスター教では悪魔アンダルである。故にゾロアスター教の方面ではインドラが悪魔へとなっているというポイントは大事だが、突っ込んで解説するには長くなるので覚えておいて頂ければと思う。)
 ここでヴリトラの特徴を見てみると、ヴリトラとは「黄色い目をした褐色の姿」で描かれる事があるとされる。この時点で新サーヴァントと外見上は一致しているといって良いだろう。
 また、ヴリトラは「障害」という意味を持つ名前である。この名の通り、今回のイベントでは「サンタカルナのプレゼント配りの障害」として出てくるであろう事が推測できる。

画像2


 更にヴリトラとは自然現象の神格化であるという説が存在し、ヴリトラは山に水を閉じこめるという性質を持つ。これをヒマラヤ山脈の積雪に見立て、天候神である所のインドラがそれを溶かすという事を示唆しているのだとする説が存在するのである。この「山に水を閉じこめる性質」が転じて、今回のイベントが「閉塞特異点」となっているのでは無いだろうか。更に、これを裏付ける証拠として、イベント前のCMにおいてヒマラヤの描写があったり、CMにおいてインドラの息子である所のアルジュナが映る部分が氷の川が溶ける描写へと変化している。

画像10

また、そもそもヒマラヤとアルジュナはとても縁が深い。アルジュナは晩年衰え、ヒマラヤに向かい凍死したのである。(水の竜ということで今回の特攻に弁財天でありリヴァイアサンである水着メルトがいたりするのは、この辺とも繋がる要素であろう)

画像3

曼荼羅の後のインドネタ/何故?


 さて、ここまででとてもざっくりとした基本的な事前知識は揃ったので、「曼荼羅の後のクリスマスイベントがインドネタ」な理由を少しだけ見ていこう。
 詳しくはこちらの記事「地獄界曼荼羅に関する諸考察」において述べたが、
源頼光は丑御前という内面を持ち、丑御前は牛頭天王の化身であり、牛頭天王は帝釈天(インドラ)の化身であるという側面を持つ。これが源頼光が水着でインドラがヴリトラを殺した時に用いた「ヴァジュラ」を持ってる所とも関わるが、話はこれでは終わらない。

画像4


 源頼光は酒呑童子を退治したとされる。酒呑童子は伊吹童子でもあり、伊吹童子とは「日本最大の災害竜」事、八岐大蛇の分霊である。よって、インドラの化身繋がりの源頼光が多頭蛇の分霊である所の酒呑童子を倒したという構図になっているのである。

画像7

ここで、曼荼羅とインドラの話が繋がってきたかのように思うが、まだまだある。羅刹王・髑髏烏帽子蘆屋道満は、「黄幡神」を名乗っていた。黄幡神は日本において「素戔嗚尊」と習合されている。素戔嗚尊は八岐大蛇を退治したわけであるので、黄幡神こと蘆屋道満が八岐大蛇の分霊の伊吹童子と反りが合うわけないのだが、結局の所、羅刹王・髑髏烏帽子蘆屋道満は、源頼光達に討たれる訳である。これは黄幡神がインド神話における悪竜「ラーフ」である事に由来するだろう。

画像6


 結局の所、曼荼羅とインドが近しいのは悪竜を退治する天帝由来の存在というのがポイントになるだろう。そもそも、カルナの父親であるスーリヤはインドラと兄弟であるという側面を持ち、この辺が関わってくる事は触りだけでも伝わってくれれば幸いである。
(スーリヤ、インドラ周りはマジで掘り下げると長いので流石にその辺は触れられなくても申し訳ない)

画像5

カルナサンタの謎とクリスマス

画像8

 さて、ここでその他のネタを触ってみよう。何故カルナがサンタなのか?それはクリスマスの起源に由来すると言えるだろう。
 皆さんはミトラ教というのをご存知だろうか?タイプムーン作品を触れる上で人類の集合的無意識であるところの阿頼耶識の存在、ユングの提唱する集合的無意識は避けて通れないので、ユングからの男根崇拝及び太陽崇拝の話としてご存知の方も多いかもしれない。

 ミトラ教とはそもそも古代ギリシャにおいてヘレニズムの時代にインド・イラン方面の神様「ミトラ」が崇拝された宗教である。正直な話国内におけるミトラ教に関連する文献はあまり多くはないので、筆者自身もインド神話や仏教ネタに増して自信が無いがとてもざっくりと書いていこうミトラ教は12/25を冬至とし、この日に祭りを行っていたこれが後世によってキリストの聖降誕祭とされたのが「クリスマス」へと変化していったという学説がある。そして、このミトラ教のミトラという神様は太陽神なのである。よって、クリスマスの原型がミトラ教の冬至の祭典(冬至は太陽の力がよわまるためこの時に祭りを行うことで活気づけたみたいな認識)であり、その原型には太陽神が関わってくるのである。そこで、今回のイベントのサンタが太陽神スーリヤの息子である「カルナ」である所に繋がるという訳である。そして、更に面白いことにミトラは太陽神であると同時に「牡牛を殺す」神様なのである。ここで気づいて欲しい。天帝こと帝釈天=インドラの化身は牛頭天王であり丑御前であり……カルナとアルジュナの敵対関係は勿論の事、この話が繋がってくるのである。そこで更に面白い部分が「天魔」なのであるが、ここも長くなるのでざっくりと述べると、天帝の娘である鈴鹿御前はFGOACの2020年のイベントにおいて褐色化していた。この褐色化は「三千大千世界」の亜種である「三千恋染世界」によって元の属性に戻ったからであると推測できる。「三千大千世界」は権能に近いモノなので、使用すれば使用する程元の属性に戻るのである。

画像9

 つまり、天魔の姫、天帝の娘の元の属性に近づいたが故の褐色化であると言えるだろう。そして今回登場する存在も褐色であり……あれれおかしいぞ となる訳である。天帝と天魔、更にまつろわぬ「素戔嗚尊」の習合まわりは前回の記事で触りを書いたので、ここでは説明を省くがまたしても、丑年である2021年を前にして牡牛を殺すミトラであったり牛頭天王まわりが掘り下げられてきてるのは明らかに作為的であると言えるだろう。

姫君最高

 長くなってきたので、ここで最後にタイプムーン的なネタを解説を挟んでお茶を濁そうと思う。それはヒマラヤ山脈とタイプムーン作品の顔である某姫君の話である。ミラクル求道者こと、臥藤門司はEXTRA世界においてヒマラヤに昇ってかの真祖の姫と出会ったのである。そして2020年12/29にて月姫発売から20周年でとなり、更に12/24が彼女の誕生日なのである。流石に登場は無くてもクリスマスイベントの時期にヒマラヤをネタにしている以上、小ネタは期待して良いかもしれない。更に、2016年に発売されたドラマCD「The Blue Bird」において臥藤門司は疑似鯖として登場しているし、FGO本編でも臥藤門司の存在は匂わされてきたのでそろそろ彼の登場も近いのかもしれない。

画像11

 ここまで書いてきて、とても纏まってるとは言い難い内容になったが、何とかサワリの部分は伝わったであろか。クリスマスイベントはボックスイベントであるが故に伏線の回収というよりは、伏線の整理の意味合いをもつであろう。ここで述べてきたぼくのくだらない戯言が当たっていたとしても、明言されず、匂わされ、また匂わされの繰り返しで別のタイミングで起爆する可能性が高いと踏んでいる。なので、この話を頭の片隅にでも留めておいていただければ万が一、億が一にこの考察が当たっていた時に作品理解の一助となれば幸いである。読んでいただきありがとうございました。

参考文献一覧

上村勝彦『インド神話-マハーバーラタの神々』筑摩書房 2003年
ローズ・キャロル著 松村一男訳『世界の妖精・妖怪事典』原書房2003年
沖田瑞穂『マハーバーラタ入門 インド神話の世界』勉誠出版 2019年
沖田瑞穂『マハーバーラタの神話学』弘文堂 2008年
天竺奇譚『いちばんわかりやすい インド神話』実業之日本社2019年
山北篤監修『東洋神名事典』新紀元社 2002年
フランツ・キュモン著 小川秀雄訳『ミトラの密儀』2018 筑摩書房
かみゆ歴史編集部『ゼロからわかる中国伝説・神話』イースト・プレス2019年
川村湊『牛頭天王と蘇民将来伝承-消された異神たち-』作品社 2007年
P・R・ハーツ著 奥西峻介訳『ゾロアスター教』青土社 2004年
青木健『古代オリエントの宗教』講談社2012年
(敬称略 これ以外にもTYPE-MOON関連作品は本編、material等を用いた)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?