大人になる

最後に君と映画を見に行った時は今日みたいに凍える夜だった気がする。

僕は一緒に夜を過ごしたかったから、彼女にdrive my car を誘ったけど彼女はもう見たって。僕は早ガッテンしてその日は午後10時にお開きさ。

お互いに若くて、まだ世界はディズニーの魔法にかかったままだから、まるで街灯ひとつない夜道を手探りで進んでいくみたいに、お互いの距離を確かめ合ってきた。
磁石は温めすぎると引きつけ合わなくなるみたい。磁石は温めすぎると反発しなくなるみたい。これってまるで

お互いに恋については無垢で、子猫みたいで、だからお互いの大人子供としての体の温もりを知る前にいろいろ準備しておくべきだった。
永遠だと信じていた恋も、数ヶ月もすれば不器用な僕らに愛想を尽かして友人の元に流れ込んで、まるで元々僕らはなんでもなかったみたいに。まるで僕らがずっと友人でいることを望んでいたみたいに。みんなあるべき関係に収まっていくのかな。僕を置いて。僕らを残して。

お互いに前よりはちょっと成長したころ、神楽坂のバーで大人の二人としてまた会いたい。
お互いにいつもの酒、僕はウィスキーで、彼女はウォッカ。ちょとだけ大人になった舌で、当時の僕らを笑い合おうよ。そんで、気が合ったなら、お互いをもうちょっと知りたくなったらもうちょっと長い間見つめていれたらいいな。

最初に君と会った日、僕はまるで世界の全部を知ったみたいに、自分を愛していたさ。永遠の愛は信じていなくても、女の子には興味はあったし、冬至の夜も、この先ずっと一人で過ごせるって信じていた。でも君はそんな僕の世界を澄んだ瞳の瞬きひとつで崩してしまった。
今はわからないけど、でもいつか君に会えてよかったなんて思える日が来ることは、昔から知っている。

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