COLABO委託契約の検査・精算について
裁判所が東京都にcolaboとの委託契約の検査調書と精算に関する文書を前回の期日で求め、東京都から提出があったことを暇空氏が記事にて明らかにした。そこで検査をメインに思う所を記事にする。
Ⅰ 地方自治法上の監督・検査
地方自治体の契約では、給付(例:報告書や工事目的物)の完了を検査をしないと精算や支払いができない仕組みとなっている。
東京都も契約事務規定で「給付の内容及び数量」について検査を行うこととしている。
ほとんどの自治体が購入している「地方公共団体 契約実務ハンドブック」においても監督・検査の重要性を指摘しており、石炭購入を例に数量だけでは不十分とし厳格なチェックを解いている。
Ⅱ 一般的な検査
(1)最終打ち合わせ協議
委託業務の工期末に近づくと、受託者はそれまでの成果を仕様書に規定する成果物の形態に沿ってとりまとめを行い、担当職員と最終協議を実施する。最終協議では担当職員も検査を意識して、自分が発注した事業の仕様書、設計書に則った成果となっているか、仕様書に規定された計画書や協議簿があるか確認を行う。また、協議の結果、修正事項がある場合は検査までに受託者が資料の修正を行う。
(2)検査
国の機関では、一定の独立性確保のため検査員は担当職員とは別の部や課の職員がなることが多いが、自治体では同一の組織の人がなることもある。検査は最終打ち合わせの書類に事務的な書類が加わる。
検査は、検査員、発注の担当職員と受託者が一同に会して資料を確認することになる。報告書がある場合は受託者が報告書の内容を説明し、内容に疑義があれば検査員が質問を行う。また、仕様書や設計書等と報告書との整合や協議簿等の確認も行う。例えば仕様書や設計書にヒアリング3箇所と書かれていて報告書に2回分のヒアリング内容しかなければアウトとなる。
一時ペーパーレスのためPCで資料確認を行うこともあったが使い勝手が悪く印刷物での検査に戻った。コロナによりWebでの検査を行うことも多くなったが、最近の状況からすると再び従来型のペーパーでの検査に戻るのではないかと思われる。検査員から「あの資料どうなっている」との問いにWebやPC画面ではすぐに対応できない。
(3)検査に書類が間に合わない場合
東京都若年被害女性支援事業では契約上は3月31日までの経費を3月31日までに確定させ検査を受けなければならず、現実的に無理である。
こういう場合は仮の資料で検査を受けて検査後に差し替えを行う。例えば3月中旬に実施予定だった調査が相手先の都合で検査前日になった場合、検査では報告書の当該部分は白紙や調査予定だけを記載し、口頭で調査結果及び差し替えする旨を説明し検査員の了承を得たりする。
なお、単年度予算のため工期の繰越が困難だったが、最近は工期内の事業が困難になった場合は翌年への工期延長を認める所も出てきている。
Ⅲ 東京都若年被害女性支援事業の検査
東京都は「委託契約」なので、詳細な監督・検査は不要との言い訳をしているようだが、そんなことはない。建築や橋梁、調査報告書等の付加価値のある成果品がある契約は、報告書等の最終成果物を重点的に検査を行い、工事や業務の経費のチェックはあまり行わない。しかし、付加価値のある成果物がなく、「活動や行動」に対して対価を支払う準委任の契約では業務日報等で当該契約に従事したことについて検査が行われる。更に経費精算での支払い条件の場合には領収書や賃金台帳等の証憑も検査の対象となる。
民間企業でも経費精算対象の購買で、自己申告だけで領収書不要とする所はほとんどないであろう。
(1)契約書の規定
東京都若年被害女性支援事業の契約書において業務完了後直ちに完了届けを提出して検査を受けることとなっている。第5項が検査に立ち会わなかった時のペナルティー的な条項となっているとおり受託者が検査に立ち会うのが原則である。東北大震災の影響が甚大であった2011年3月工期の事業・業務以外で受託者が検査に立ち会わなかった事例は聞いたことがない。
(2)検査の対象書類
仕様書で提出を規定している「事業計画書」「実施状況報告書(四半期毎)」「居場所利用者状況報告書」が検査の対象となる。R3は企画競争を行っているので仕様書に記載がないが企画提案書も対象となる。
東京都の契約事務規則で請負以外の検査も「給付の内容及び数量について」行わなければならないとしている。通常は準委任でも「単価◯円の人が300日」といった数量が規定された設計書があり、日報や活動報告等の提出が求められ、官側の単価を使用した場合は賃金台帳等までは求められないことが多い。しかしながら、支援事業は設計書も単価も存在しない。費用面の規定は以下の仕様書の記載しか存在しないことから仕様書に基づき「各経費が本事業の実施に必要だったか、実際に支払いが行われたか」を検査で確認する必要がある。
経済産業省の「経費精算型の委託事業」での検査書類の一部を以下に示す。
同マニュアルに記載されている「検査の着眼点」を以下に示す。これら着眼点に基づき経費精算的契約の検査をするのは領収書や日報等の確認は必要であろう。
東京都若年被害女性支援事業は設計書も官側単価もない経費精算契約でありながら、委託者が加工集計することが前提となる「実施状況報告書」だけしか提出を求めていない。実施状況報告書の費用も大項目で括られトレーサビリティーが確保されておらず、事業の経費であることを確認できない。このような仕様書にした段階で、地方自治法が求める「給付の完了の確認の検査」は不可能であり、同法に反していると考える。
Ⅳ 本当に検査を実施した?
(1)R3年度のCOLABOの検査
既述のとおり仕様書で規定された「実施状況報告書」だけでは、地方自治法の監督検査の履行はできないと考えるが、加えてツイッターにて検査調書の日付と通年版の実施状況報告書の日付の矛盾が指摘された。3月31日に31日までの経費を完全に整理することは困難であり3月31日に「確定版ではない実施状況報告書」で検査を実施し4月1日に確定版を提出した可能性はある。しかし、契約書及び東京都契約事務規定に基づき検査にはcolaboの立会が必要であるが、立会通知さえしていないことが判明している。
こうなると、実質的な検査は行わず、形だけ検査調書という書類だけが作成された可能性が極めて高い。
(2)R3年度のWBPの検査
これもツイッターにて指摘されたが、検査の実態がなかった疑惑が一層濃くなったように思う。監査も日付の矛盾に気がついていたとの疑惑も指摘されている。この指摘が事実である蓋然性は高いように思う。
(3)後出しジャンケンの「表3、再調査、実際」
暇空氏の監査請求後に後付で「表3、再調査、実際」等の集計や監査による不適切な按分の指摘等がなされた。これらは本来、最終の打ち合わせ協議でその対応、適切性を含めて協議、整理しておくべきものであり検査で確認されてなければならない。あのような後出しジャンケンがあること自体、実態的な検査がなされていなかった査証でしかない。
(4)開示請求
ということで、開示請求を行った。
Ⅴ 裁判所が検査や精算関係書類を要求した理由
現時点でははっきりしたことはわからない。ただ、第1回の東京都と裁判所のやりとり(暇空氏有料部分)を勘案すると裁判所は東京都の監督検査に疑念を抱いてるように思う。
修正履歴
2024年5月22日:立会の開示請求結果、地方公共団体 契約実務ハンドブックの監督・検査の引用追加
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