colabo不正疑惑のこれからの争点

colaboの不正疑惑について都議会議員や国会議員による情報発信も増えつつあり、東京都や厚生労働省の動きも間接的にわかってきた。委託費受給に関する論点も集約されつつあるので、改めて整理したい。

論点の整理

経費の適切な区分管理ができていたか?

東京都委託の対象事業においてcolaboが委託費以上の費用がかかっているのは間違いないであろう。しかし、実際に東京都が支出したものが委託対象範囲だったかは不明朗な状態である。colabo作成資料及び弁護団の説明書から推察するに適切な経費管理がなされていない可能性がある。

適切な経費管理とcolaboの経費管理の想定(委託費1000万として)

経費について自主事業と委託対象事業の区分管理ができてない場合、「東京都の委託費が沖縄合宿等の自主事業に使われた」ことにもなりえる。経産省の補助金において、作業日報等でその範囲を明確にするのは、この問題を回避するためである。なお、税理士及び社労士費用の支出・受給は経費区分とは関係なく不適切なものと考える。

付替え・過大請求をしていないか?

「colabo全体の法定福利費より大きい法定福利費の請求」や「単価1万/泊で計画していたのに232泊で300万の請求」等は過大・架空請求の可能性がある。法定福利費の計画未達分を他の支出で補ったのであれば「付替え」である。同様にUNIQLO・GUの衣料を車両関連費として計上したのも「付替え」ではなかろうか。

東京都の承諾はあったのか?

東京都とcolaboの契約では、東京都と協議をしながら履行することが定められている。colabo弁護団が作成した説明書では、業務履行や東京都の管理に影響を及ぼす重要事項について以下のような解釈がなされている。

  • 事業計画は予算の目安に過ぎず小項目・大項目間の流用は可能である

  • 4半期の実施状況報告書は暫定値でかまわない

  • R3の宿泊費は300泊×1万の計画に対して232泊だったが、その他で300万を超えているので問題ない

  • 最後の実施状況報告書の金額は事業計画の値に合わせて良い

本来は契約に基づく協議が必要な事項であり、費目間の流用であれば、通常の受注者であれば以下のやりとりをするであろう。

費目間流用の場合のプロセス例

実際の発注者とのやりとりは議事録だったり、メールだったり、場合によっては契約額(総額)の変更のない契約変更を行う。費目間流用が東京都の承諾なく行われた場合、不正な受給となる可能性があるが、弁護団説明書では東京都の承諾の状況に関する記載はない。
宿泊については「宿泊支援の対象となったのは232泊分であり、これは Colaboの事業報告書と都への報告とで一致しています」との記述があるが、都に提出した実施状況報告書に232泊の記載はなく真偽不明である。

R3 実施状況報告書 宿泊支援費

また、「最後の実施状況報告書の金額は事業計画の値に合わせて良い」について東京都も承知済みとの記述が削除されたこともあり、東京都の承諾状況について弁護団説明書の信憑性に疑義が生じている。

東京都及び厚生労働省の動向

議員等の情報発信から東京都福祉保健局及び厚生労働省の動向を整理する。

音喜多参議院議員(日本維新の会)

音喜多議員は以下ツイート及び12月5日にyoutubeにて情報発信を行っている。東京都福祉保健局のシナリオに沿った反応と考えられる。

音喜多参議院議員 colabo関係ツイート(下線加筆)

川松都議会議員(自民党)

川松議員はツイート以外にyoutubeのライブ配信でもcolabo問題を扱っている。都の職員が落とし所の探りを入れているのが興味深い。都職員のこのような反応は「不味いかも」との予感の裏返しであろう。
なお、「委託は細かいことは見ない」は東京都福祉保健局の組織防衛のための方便だと思われる。

川松都議会議員 colabo関係ツイート(下線加筆)

伊藤議員・尾島議員(都議会、都民ファースト)

伊藤ゆう議員は東京都の主査監査委員であり、暇空氏の請求による監査を実施している最中のツイートである。問題意識はあるが「都議会の事案」としている。監査委員としてのツイートはできないと思うので当然ではあるが。尾島議員は年末に予定されてる監査結果待ちのスタンスだと思われる。

伊藤・尾島都議会議員ツイート

松田りゅうすけ都議会議員(日本維新の会)

松田議員は音喜多議員と共に本件の調査をしている。東京都福祉保健局の見解を踏襲し不正はないとしているが、「100点ではない」ともコメントしている。また、経費の区分について「完全に切り分けられない」とコメントしてるが、補助金等で切り分けたきた事実があり説得力はない。現段階でのこのコメントは監査や質問状回答で課題が発露した場合に備えて、問題を矮小化しようとする試みではなかろうか。東京都福祉保健局のシナリオどおりと思われる。

松田りゅうすけ都議会議員 colabo関係ツイート(下線加筆)

12月13日に東京都に質問を提出した旨のツイートがなされた。本記事であげた論点と被る事項があるが、東京都は年末に予定されている監査の結果を踏まえて回答するのではなかろうか。監査での指摘以上に問題を認めることは彼らにとって得策ではない。

松田都議会議員の東京都への質問状

東京都福祉保健局

暇空氏のnoteによれば監査の意見陳述において、東京都福祉保健局はこれまで領収書等のチェックを実施していないこと、12月に確認を実施すると述べている。12月2日にR3及びR4の業務を対象にcolabo事務所において請求書等の確認を実施しており、その結果「明らかな不正が疑われるのは現時点では出ていない」と音喜多議員に報告したものと考えられる。

colaboツイート(下線加筆)

まとめ

以上の情報から東京都福祉保健局及び厚生労働省の考えをまとめると下表のとおりである。東京都福祉保健局は「不正はなかった」、厚生労働省は「東京都の責任」としたい意向が透けてみえる。
何れにしても経費の区分及び東京都による承認の状況については松田都議会議員の質問状に対する回答及び監査結果が待たれる。

不正疑惑に対する各者の認識

今後の争点

東京都福祉保健局は、以下のシナリオを描いていると考える。現時点では1日程度のcolaboへの確認により不正はない判断し、音喜多議員等に説明している。基本的に東京都福祉保健局も監督・検査の責任を問われることになるので、自ら「不正」を認めることはないと思われる。

  • 【最善シナリオ】過去の契約に不正はなかった(若しくは軽微な不備)、業務の発注、監督及び検査の方法は改善する必要がある。

  • 【次善シナリオ】過去の契約に不正はあったが、受注者が報告や協議をせずに実施したことであり、都に責任はない。

結局、R3及びR4の不正の有無については、東京都の監査又は住民訴訟の結果を待つ必要があろう。監査や裁判では「税理士、社労士」への支出の適否が一番大きなポイントになると考えられる。税理士、社労士への支出はcolabo側も事実を認定(弁護団説明書)している。同様に対象事業に対する実費精算的な支払いを行っている補助金・交付金事業への影響も必至である。「補助金は対象事業の経費にしか使えない」という大前提を崩すことになりかねない。
裁判は長期に渡る。裁判の結果を待たず、R3、R4業務に関する不正疑惑事項に関する丁寧な説明で一旦事態を落ち着かせることが監査や議会に求められる。
なお、今回の騒動で「受注者側の裁量(ブラックボックス)が大きいザルシステム」であることが白日の元に晒された。予定されてる地方展開にあたり悪意をもった団体が入りこんでくる恐れがあるため、早急に契約、監督、検査のあり方を見直す必要がある。今は影に隠れている厚生労働省のリーダーシップが求められる。

その他

東京都福祉保健局「委託は細かいことは見ない」について

本心であれば発注者の資格はないと考える。成果がはっきりしている請負型の委託契約では確かに細かいプロセスはみない。しかし、これは準委任の経費精算の委託契約である。本来は日々の履行完了届けを提出することになっている契約書を解像度が極めて粗い実施状況報告書に仕様書で上書きしている。「準委任の委託契約だけど、東京都若年被害女性等支援事業だけは細かいことは見ないことにした」のである。次善シナリオに沿って保健福祉局の責任回避を図った発言であろう。

2018年度の都の職員交代とチェック基準緩和について

2018年にcolaboと都の協議により都の管理が緩和甘くなったとの疑惑であり、川松都議会議員が取り上げている。2018年の仁藤氏のツイートによれば、東京都担当者は被保護者リストの定期的な報告を要求し拒否されている。仁藤氏が担当からパワハラ・セクハラを受けたとツイートした直後に担当が変わったとの情報もある。また、2019年度の仕様書には「直接折衝で解決する」との記述が追加されており、状況的に第三者の圧力により業務管理のあり方が変わった可能性がある。ただ、2018年度当初から現行と同じ粗雑な実施状況報告書が使われており、「経費精算のチェックに必要な書類を提出させないスキーム」はそれ以前からのものである。

団体の特性にあわせた仕様書について

川松都議会議員が「各団体の特性にあわせた仕様書」を提言している。最初から各団体に特化した仕様書とした場合、「随意契約」が前提となり競争性が失われる。標準的な仕様書で発注公告をし技術提案の競争を経て受注者を特定した後に、技術提案に即した仕様書にする方法が考えられる。しかしながら、現在の受注者が適切な技術提案ができるとは考えにくく、補助金・交付金とするのが良いと考える。

厚生労働省のいう「(費目間流用の)事後変更可能」について

厚生労働省は費目間の流用は可能と音喜多議員に回答したようである。ただ、これは厚生労働省と東京都間の話のような気もする。また、各費目の予算については受注者が決定し各社の事業計画書が提出されなければ不明であり、東京都による厚労省への申請段階では、内訳がないのでは?
このあたりの仕組みに疎いのでご存知の方はコメント頂ければ幸いである。

主な修正履歴

  • 12月15日 文書表現等の微修正

  • 12月14日 松田都議会議員のツイート追加及び関連修正


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