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【試し読み】波動光学の風景 導入編

 波動の初歩的かつ基本的な性質や,空間の対称性との関係を見直しつつ,数式で波動を扱う準備として基本的な概念を紹介します。波動光学で必要となる電磁気学の要点をまとめ,電磁場のマクスウェル方程式を導きます。ご執筆は本宮 佳典先生(法政大学理工学部 兼任講師)です。
 ここでは同書から,「はじめに」と本文の一部を抜粋して掲載します。本文は式などが多く,画像化した誌面の掲載です。

はじめに

 この電子書前は,月刊 OplusE誌に2005年8月号から連載された記事をまとめたものである。波動光学の初歩から,基本となる考え方を少しずつ解説した記事である。これまでの記事をまとめて読みたいとの読者からの声を頂くことができ,出版の選びとなった。
 光学は古い歴史を持つ一方で,今も活気ある分野である。近年の特徴として、要素部品の多様化,関連技術分野との融合,高性能な計算機の普及,要求仕様の多様化などを挙げることができる。こうした背景の中さまざまな光学技術が多くの分野に浸透し、光学を基礎から学びたいという声が聞かれるようになっている。
 光学分野にも良書は多いが,基礎となる数学や物理学に不慣れだと読み進め難いものも多いように思われる。初学者には、そうした基礎科目を勉強し直すという考え方もあると思う。しかし本書では、光学の中で応用される基礎科目を復習しながら、効事的に光学を学べる読み物を目指した。読者としては、マクスウェル方程式は習ったが理解は心もとないという位の理工系学生や若手技術者を想定した。そのため、基礎科目に属する事柄でも,初学者に有用と思われる話題は含めるようにした。また,近年の技術動向を背景に重要性の増した問題を,積極的に採り入れた。したがって、光学に関心のある方には、幅広く読んでいただけると思う。目標は、定評ある光学の教科書を読み進めるための基礎として必要な知識や考え方を身につけていただくことである。日まぐるしい技術発展の時代に対応するためには、基礎の理解が肝要であり、早道でもあると信ずる。
 各章はなるべく独立なものとし,過去の記事や参考文献をなるべく参照せずに読めるよう努めた。これは連載記事としての特徴であるが,拾い読みし易いという利点になったと思う。全体に数式が多いと思うが,法則や公式の唐突な導入や、式変形の飛躍を極力避けたためである。数式に慣れていない人が躓(つまず)かないためなので,本書の性格としてご理解いただきたい。数式は必要に応じて追えばよく,前提から結論に至る流れを味わっていただけるとよいと思う。連載記事のように,どこからでも気楽に少しずつ読んで、楽しんでいただければ幸いである。
 光学は、基礎科学から産業応用に至る幅広い分野とつながりが深い。相対性理論や量子力学などが,光に関わる研究に端を発した一方で,豊かな社会の実現や深刻な社会問題の解決に向けて光学技術に期待される役割も大きい。こうした広がりや奥行きの故であろうが、学ぶにつれて視野が広がり,いろいろな光景が見えてくる。単に役に立つというだけでなく,事物の理解
に伴う特有の充実感や楽しさが味わえてこそ,学ぶ意欲も湧くものだと思う。筆者の浅学と非力のため、必ずしもその意を尽くすには及ばなかったが、読者諸賢に拙意を汲んでいただければ幸いである。
 本書籍の出版にあたっては名前を挙げきれないほど多くの方から助言や助ましを頂き、お世話になった。心より感謝申し上げる次第である。特に、東京工芸大学の渋谷眞人教授には、波動光学の風景という表題を頂戴し。内容にも表現にも示唆に富む数多くのご助言を頂いた。厚くお礼申し上げる。また。連載記事の執筆と電子書籍出版の機会を与えていただいた O plus E編集部の皆さんに深く感謝申し上げる。最後に,原稿執筆のため休日にパソコンに向かうことを許してくれた家族の支えと応援に心からの感謝を書き添えさせていただく。





続きは電子書籍でお楽しみください

印刷版(紙)の書籍をご希望の方にはPOD(オンデマンド)書籍もあります。(POD版は電子書籍とは価格が異なります)

以下は本書の目次です。

第1回 1. 光とは
    2. 光の伝搬と屈折と反射
第2回 3. 干渉縞
第3回 4. 対称分岐
    5. 波動の表現
第4回 6. 横波の反射
第5回 7. 波動方程式
第6回 8. 正弦波解
第7回 9. 電磁場とベクトル解析(1)
第8回 10. 電磁場とベクトル解析(2)
第9回 11. マクスウェル方程式

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