見出し画像

ZARAの感想1

今年もZARAのセールがやってきた。ZARAといえば、H&Mと並んで双璧感のあるオシャレ海外ファストファッションブランド。だが…

●ファストファッションのくせに別に安くない
●基本海外向けに作られているので、全てがでかい
●服のパターンが大味で体に沿わないので、そこに気付かせないような着用者自身の素体レベル(しっかりしたメイク、迫力ある体型)が必須

と、とにかくハードルが高いと感じるため、服を買ったことはない。

昔、大事な仕事で関わった美人でおしゃれな女性が、「ZARAが大好きでテキスタイルを見ただけで期と服の値段がわかる」と言っており大いに関心したのだが、彼女はその後鬱・関係者内でデキ婚・夫婦で横領という美しいトリプルコンボを決め、そのプロジェクトを最後に業界から消えた。
当時迷惑を被った恨みから、その後3年くらいは、ZARAのしゃらくせえ白い店内を見るたびにイラつき、売れ残った数トンの服たちがミルフィーユ状に圧縮され泥と資源の区別なく廃棄場にうず高く積まれ、やがて極彩色のヘドロが怪獣に変化したと思うと突如巨大な炎を吐き、アパレルの廃棄問題、女の悪徳、それからこんなくだらないことに何年も怒っている愚かな人間への戒めを込めて地球全体を焼き尽くすという妄想を繰り返した。

そんなZARAがジョーマローンとコラボした素晴らしい香水を出していると知ったときも、己の脳は「ビッチ憎けりゃZARAまで憎し」の精神と「でもジョーマローンのクリエイションは好き💗」の間を9対1で揺れ動き、その振り子は憎しみの壁にめり込んだまま帰ってくることはなかった。

その後自分にも子供が生まれ、ZARAの子供服のデザインの豊富さ・おしゃれさの恩恵を受けるようになると、そのような強い怒りは嘘のように消え去った。我が子の可愛さ・子育ての忙しさに揉まれる日々の中では、数年前の不愉快な思い出など塵に等しいのだ。

そんなこんなで、今年も香水オタクの皆さんが「ZARAのセールで香水買いました~~💖💖」とオススメ情報をめちゃくちゃツイートしているのを見て、今更ながらこの波に乗らねばと鼻息を荒くすることとなった。

ところが、興味が湧くのが遅すぎて、セール開始当日にカートを見たら欲しい商品はすでに売り切れたあとであった。
ジョーマローンコラボのキャンドルセット……これ同じグラム内容で3990円のやつと11990円のやつあるよね? 高いほうが信者としての格が上がるとかそういうこと? ちょっと怖いので買う勇気が出ず。

せっかくなので、実店舗に香水を見に行くことに。ファストファッションの香水をブラインドバイするのは流石に命知らず、砂漠の地雷原にビーサンで遊びに行くようなものだからね。(実際JMコラボ以外のザラ香水を肌乗せしたら頭痛がヤバすぎた)

ちなみに、ZARAのサイトで「在庫あり」になってる店舗を6件回ったら、実際は棚にあったのは2件のみで「そこに無ければないですね」の世界。ジョーマローンコラボでいうと、アマルフィサンレイとキッズシリーズは割とあるけどそれ以外は見かけたらラッキーくらいのレア感でした。南無。
結局中古市場でディスカバリーを購入。

ZARA エモーションズ コレクション セット(ジョーマローン)

Vetiver Pamplemousse ベチバー パンプルムース

こちらのコレクションはオードパルファム表記だが、いずれもトップにアルコール感があり、持続も3時間程度でトワレに近い印象。ただしアルコールもツンと来る感じではない。夏のハッピータイム、ジョッキをぶつけ乾杯するサワーの一口目。
喉を焼くアルコールが晴れると、ジューシーなグレープフルーツが弾ける。フルーティー感は持続せず、すぐに黄色いガラス玉のような概念的グレープフルーツの甘みへ。しかしさすがのジョーマローン、ただ甘いだけでは終わらせず、ベチバーが落ち着いた影を添える。黄色い太陽が沈みかけ、暑さがやわらぐ夕方にドライブへ出かけるひとときのよう。

そうそう、ZARAってこういう感じ。ファストファッションだけど、提示してくるライフスタイルは小金持ちなんだよね。オッパはカンナムスタイル。

Waterlily Tea Dress ウォーターリリー ティー ドレス

一番好き。これだけはボトルがある時代に出会っていたかった……
ウォーターリリーは睡蓮、ティードレスは英国のアフタヌンティーの時間に着るドレスのこと。パーティーの準備が整えられたイングリッシュガーデン。初夏の日差しに勢いを増す草花、涼し気な水辺の気配。清潔な白いドレスの衣擦れの音……次第にオレンジブロッサムの厚みが増して、パーティーに会話の花が咲くひとときのようで素敵。

わたくしの愛するJo Malone Londonのワイルドブルーベルからスイカの甘さを抜いた香りに近いと思います(それワイルドブルーベルじゃないじゃん)

Ebony Wood エボニー ウッド

黒檀の木材

エボニーウッドとは黒檀のことだが、どう見てもポロショコラ
庶民生活の中で黒檀に触れる機会はほぼないのだが、たまに楽器屋さんとかスピーカーコーナーに行くと、この色の木材からスッキリかつコクのある香りを感じることがある。
私はウッディ系の香り全般、木屑を飲み込んだ感じが喉にきて苦手なのだが、これに関してはクローブが主役で暖かくふんわりと香り、ジョーマローン系特有の清潔な透明感がキラキラと包み込んでくれるので、かなり好き。ウッディ苦手な人にもおすすめ。ミドル~ラストは香ばしいマテ茶のようでちょっとお腹が空いてくる。
CGみたいにキレイな令和の若者たちにはよく似合いそう。

Amalfi Sunray アマルフィ サンレイ

なんかこれはどの店でも割と在庫を見かける。普通に王道のコロン(ベルガモット、ネロリ、プチグレン)って感じなので、見かけたらでかいボトルを買っていいと思います。
私は似たようなコロンを死ぬほど持っているので買えないけど…100mlでセール価格2590円でこのクオリティ、学生時代に出会っていたらなあ(これと同じことをプティララバイでも言ってる)。

Tubereuse Noir テュベルーズ ノワール

チュベローズのエグみがキリッと光ってよし。このエグみが紅茶と加齢臭の間を絶妙なバランスで揺れ動き、うんことジャスミンの香りが紙一重であることを思い出させる。いいにおい、わるいにおい、そんなのひとのかって。本当に香水が好きならうんことか気にせず好きな香水をつけるべき。
とにかくユリの花粉みたいに迫力あるフローラルで、ジェネリックドソンとして良いのではないでしょうか。テュベルーズノワール90ml3350円とドソンEDT100ml22,770円なら、無理してドソン行かなくても良い気がする。まあもうZARAの在庫ないから買えないんだけど……

Fleur D’Oranger フルール オランジェ

日本語読みは「フルールドランジェ」じゃねえの? と思いましたが、ZARAがスペインのブランドだしJo Lovesはイギリス、日本語訳を作ってるのは多分日本人なので誰も気にしないということですね。香水の名前って何でやたらフランス語を使いたがるんだろう。

ちなみにFleur D’Orangerという名前をFRAGRANTICAで検索すると30件くらい出てくる。ルタンスもルラボも(JMのオレンジブロッサムも)みーんな消毒液に漬けたみかんの背わたの匂いがする。これだけなら良いんだけど、一滴だけオヤジの靴下みたいな臭みがサブリミナル程度に感じられるときない? ZARAもそう。ディズニーの前日にコーデの相談をするJKの如く「みんな同じ名前で同じ香りの香水つくってオソロっちしよーよワラ」みたいなLINEでもしてるんか?
この名前の香水を見るたびに「同じ名前の同じ香り作って何がおもろいねん」とイラついてしまう病気なので、香りについて正常な判断ができない。

Fleur De Patchouli フルール デ パチョリ

open deal

名前にフルールって入ってるし、最初は柔らかでウォータリーな香りがするのでとっつきやすく感じるが、ミドルからソヴァージュ(青いやつ)とかニコライのニューヨークみたいなビジネスマンがオラつき始める。
付き合う前は、人当たりよく女心をわかってくれる素敵な人に見えたのに、いざ一緒に過ごすと筋トレと株にしか興味がない漢で、デート中もスマホで謎の折れ線グラフを凝視し続けている……そういう感じです。
かっこいい香りだけど自分には合わないかな。

Bohemian Bluebell ボヘミアン ブルーベルズ

都会的・清楚系。KO-GUのラベンダーモスをかけあわせた香りがする。ラベンダー6割、モス3割、ハニー1割。
運良く40mlを入手して歓喜したのも束の間、何日かつけていると、どうもハニーっぽい甘みに人工的なチープさを感じるようになる。

「ボヘミアン」という言葉の自由な民族・開放的なイメージとは反対に、香りから想起するのは、狭い室内で飼い殺されるオフィス系グリーンの宿命的な暗さ。行き過ぎた清潔感が逆に際立たせる小さな不衛生、埃にまみれていくガッカリ感……いや別に観葉植物を置いてるオフィスがダメって言ってるわけじゃないです。でももし仮に木に生まれたとして、「出版事業部書籍制作課進行管理部部長の山田さんのデスクの後ろのコーヒーマシンの隣」みたいなところでクソ狭い植木鉢に押し込められて生きたいですか?

ちなみにJo Malone Londonのワイルドブルーベルとは1ミリも似てない。

ディスカバリー以外

Hip Hop Red Apple ヒップホップ レッドアップル

「Zara Emotions - The Glace Collection For Kids」という、ジョーマローンコラボのキッズ向けのひとつ。これ以外の「チェリーウォーターメロンアイス」と「ローズマシマロキャンディ」が死ぬほど死ぬほど甘くて、後部座席のシートにサーティーワンのアイスをぶち撒けたかのような香りだったので、このヒップホップレッドアップルも巨大なチューインガムで撲殺される系の甘さなのかと身構えた。

いざ肌乗せしてみると。
わっすごい、これは薄くて儚い……Qooのりんご味を更に薄めたような。子供時代の思い出が蘇り、どこでもない概念的なフードコートが目の前に立ち現れ、お盆の上、ビビットカラーのプラコップに注がれたジュースが照明を受けてキラキラと輝いた。

「そもそもヒップホップというのは身内は身内でよそはよそ」「よそのことをゴチャゴチャ言うやつはbitch」「他人のこと言い出したらキリない」
私はZARA店内で黄緑色の無邪気な液体を嗅ぎながら、バダサイの言葉を思い出していた。かつての私はあのZARA女をビッチだと思っていたが、他人のことを気にして、惑わされてばかりの自分こそがビッチだったのだ。もはや30超えたら目指すのは不惑のみ。

もしあなたに小さな子供がいて、早めにHIPHOPの精神を叩き込みたいならおすすめ。ちなみにJo Loves創設者ジョー・マローン CBEによるコンセプトは「側転や笑いで踊りまくる」だそうです。

Le Petit Lullaby ル プティ ララバイ

すごーく注意深く嗅がないと、香水をつけているとはわからないレベル。肌の匂いに負けそうになりつつも、洋梨とムスクがコットンのようにふんわり香る。初心者向けレイジーサンデーモーニング。

プチララバイ単品
ゴールデンララバイとのセットが可愛すぎる

それにしてもパッケージがめちゃくちゃ良い。レイジよりこっちのほうが好き。あまりにもスキンセントすぎて物足りないので買わなかったけど、学生時代に出会っていれば使いたかった。セール価格1990円でジョーマローンのクリエイションを纏えるなんて……。
皆買ってるしマルジェラだしみたいな感じでレイジを選ぶ子より、ZARA香水をうまく使いこなす女子の方と付き合いたい。これ書いてたらセット欲しくなってきた。

キャンドル Fashionably London ファッショナブリー ロンドン

「ベルガモット、ローズ、ムスク」とのことなんだけど、そんな可愛い感じじゃなくてレザーかウード系の重みがある。つかパッケージの色がすでに重いよね。ドクターマーチンでアンプを踏みつけ観客に飛び蹴りを食らわしてこそロンドンよ。
夏とかに閉め切った室内で炊くと偏頭痛確定。風が気持ちいい季節にきちんと換気しながら楽しめば、横浜イングリッシュガーデンのように親しみやすい規模感の英国庭園があなたを楽しませるでしょう。

他にもキャンドル3個買ったんだけど、文字数的に誰も読まない長さになるので機会を改めます。

あとは子供のためにサメのセットアップを購入。「サメ!?これサメ!?」(カメと同じ発音)と喜んでいたのでよかったです。
もしまたジョーマローンとのコラボ香水がでたら、今度は必ず発売日にチェックします。セールを待たなくてもプロパーで優しいお値段なのが素晴らしい。今(在庫)があるなら迷わず 突き当りない自由走らせるMy Words…

頂いた支援はおもしろ香水を買うのに活用させていただきます