横濱中華街の麻婆豆腐が不味かったのかもしれない話

こんな記事がバッズっていた

読んでない
しかし横濱で麻婆豆腐は死んでも喰わないと思いを決めた
なんなら横濱には絶対に行かない
神奈川へ行っても横濱だけは避けて通る
行っても中華街
行っても川崎から放たれるブルーライトの確認のみの滞在

15年くらい前のことだ
横濱の中華街で食事をした
ある店に入った
驚くほど不味かった
臺灣人が経営する店のようだった
なぜその店に入ったのかわからない
それ以前に中華街に来たときにとても旨い店があってそこにまた行こうと思っていたのだが見つからず近辺の店に中華街だし大きなハズレはないだろうと思ってその店に入ったのが大げさにいえば運の尽きだった
期待値の高さでより不味く感じたというものあるだろうがそれでも何も努力していない味に感じた
いい言い方をすれば自然な味か
ほんとうにほんものの努力してない気取りのない普段の家庭料理をそのままにというか
いや
そういう感じでもなかった
田舎の素朴な家庭料理だってとくに不味くはないはずだ
よく憶えていないのだが麻婆豆腐を頼んだような気がする
麻婆豆腐なら無難だと思って
しかしそうでもないんだな
一般的にもつまり中華街以外でも麻婆豆腐が不味いという体験は結構あった
豆腐が冷たいとか
麻婆豆腐は意外と難しいのかもしれない
意外と火が通り難いとか
べつに火が通ってなくても大丈夫なのだからとか
理由ならいくらでも
麻婆豆腐はそもそも大陸にも臺灣にもなく日本のみたいな話もよく聞く
だったら
とはいえ
まあとにかくその店は不味かった
考えてみればそれ以降麻婆豆腐は食べていない
その店である若い男がひたすら酒を呑んでいた
コーラのような黒い液で割った酒をずっと呑んでいた
しかし酔っている様子はなかった
目は据わっていたが酔って乱れている感じではなかった
それはなにかの修行をしているふうにすらみえた
料理も頼まず一心不乱に酒を呑む男とるるぶを読むような若い女性が二人客として入っていた
覇気のない女主人がぼんやりと所在なさげに座っていたような気がする
窓には褪色したカーテンがかかっていて中華料理屋にありがちな鮮やかな飾りもなかった
あれはひょっとすると店ではなかったのだろうか
横濱の中華街が敗戦後、日本政府から切り棄てられた臺灣人によってつくられたことを考えるとその店にも重い歴史があったのかもしれない
それから悄然とした気持ちで店を出てどうしたのだろう
煙突男(天皇を見下ろす形になると大騒動になった戦前の労働争議の主人公)が浮いていた運河と右翼所有の不気味なだるま船を見て悲しい気持ちのまま帰ったような気もする





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