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共焦点顕微鏡で反射像を観察するには。

最終更新: 2024/07/10
トップの画像はフリーの写真提供サイト、ぱくたその、「鏡合わせの緑の世界」の写真素材です。


透過像ではなく、反射像を観察したい!

利用者から、「不透明な基板」のため透過像の取得ができず、他の事例では「反射像」で観察しているため、そうした観察ができるかの相談を受けた。
「反射像と蛍光像」の観察となり、とりあえずいろいろと試してみたところ、我々も反射像が観察できることを確認したため、忘れないうちに認めておく。

共焦点顕微鏡での設定

共焦点顕微鏡の場合、通常はレーザーをサンプルに照射し、発せられた蛍光を検出する。蛍光は励起光の1万~100万分の1と微弱なため、一般には励起のレーザーは一切検出させないようなフィルター構成としなくてはいけない。しかし反射像の場合は、照射光と反射光は同じ波長のため、通常の観察法では検出できないため、工夫が必要である。

そこで第1ダイクロイックミラーとして、BS20(Beam Splitter 20%)を使用する。これにより、20%の光のみを通すため、励起光と同じ波長の光も、検出系まで到達させることができる。
次に検出系では、この波長の光を検出できるよう、ダイクロイックミラーや蛍光フィルターを設定する。特に、任意の波長帯域の観察ができる仕様(Virtual Filter など)なら、好都合である。例えば488nmのレーザーを使うなら、480-500nmほどとするのがよい。

実際の観察では、反射光が強いサンプルでは、検出系の保護のためにも、ごく弱いレーザーで十分かと思われる。反射像の場合は、共焦点効果はないので、ピンホールは考慮しなくてもよい。
また蛍光像も必要な場合は、反射像観察用レーザーが蛍光像の取得に影響しないよう、明らかに異なるレーザー、蛍光を発しそうにないレーザーで反射像を取得するほうがよいかもしれない。例えば、共焦点観察用レーザー:488nm, 反射像観察用レーザー:640nmなど。
また共焦点顕微鏡の場合、自由にズームをかけることができるのも、大きなメリットである。

実際の画像例

では実際に、観察画像の例を以下に載せてみる。
"透過像ではないことを示すため、一切透過せず、それなりに模様や凹凸などがあって『ちゃんと見えてるな』と示せるうえ、レーザーを当てても劣化しない、そしてそのあたりにあって直ちに使えるサンプル"は、硬貨しか思いつかなかった…。そこで今回は、スライドガラスの上に、硬貨を載せて観察を行った。

10円硬貨の裏面.
10円硬貨の表面。

こんな具合に、10円硬貨の観察を行った。
実際には1個の視野より硬貨のサイズがはるかに大きいため、8×9のタイリング観察を行ったが、継ぎ目なく広域が観察できた。

平等院鳳凰堂をトリミングしてみる。

そして一部を抽出してみると、肉眼では観ることが難しい、平等院鳳凰堂の屋根の上の鳳凰(約700マイクロメートル)や、扉などの円い構造(約50マイクロメートル)も、反射像で明瞭に観察できた。

更に大きな金属板ーとして、500円硬貨も観察してみた。

500円硬貨の表面.
中央付近をトリミングしてみる.

今度は、縦:24, 横:24で広域反射像を観察した。こちらも、鮮明な画像が観えているが、更に肉眼では観ることが到底不可能な、正規の500円硬貨に彫られている小さな文字のサイズや、桐の葉部分の円い構造も観察でき、そしてサイズを計測することも可能。

このように共焦点顕微鏡では、その仕様次第でもあるが、反射像の観察も容易であり、非破壊観察ができるため、微細加工を施した基板等にも対応できると思われるので、興味があれば試してみよう。
ただし10円硬貨のほうで顕著だが、スライドガラスの上に硬貨を置いて観察を行うと、スライドガラスと硬貨の間で反射光が更に反射してしまうーなどのためか、干渉縞のようなパターンも観えてしまった。このあたりを軽減させるには、更なる工夫が必要かもしれない。