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オペラ「聖母の軽業師」/上演報告

上演日:2022年3月25日(金)26日(土)
会 場:札幌サンプラザコンサートホール
札幌市文化芸術再開支援事業、文化芸術復興創造基金助成事業

<コロナ禍の影響>
 2020年か2021年の間に、3公演の中止を余儀なくされました。しかし、感染対策の徹底により札幌市時計台でのコンサートなど、小規模なものは開催することが出来ました。いずれも観客数に制限を設けての上演でしたが、演奏の様子をネットで配信し、来場くださったお客様以上に広く音楽を届けることが出来ました。

 しかし、中心的な活動であるオペラ公演の実現にはまだ大きな困難が伴っていました。どうしても大きくなってしまう舞台費や人件費、それを賄うためのチケット販売が問題でした。自治体や施設からは特に観客数を制限しろとの指示はありませんでしたが、感染に対するお客さまの警戒心は簡単に和らぐものではありません。そのため、入場券の販売が非常に困難な状況でした。
 打開策として、入場券の販売だけでなく、DVDや有料配信の予約を募るなど、資金と作品の発表の機会を確保する計画を立てましたが、オペラに必要な資金を補うには不十分でした。そのため構成員からの借金を資金とする覚悟でした。
もしオペラ上演が実現出来ないとなれば、私たちの存在価値は無くなり、市民の支持も途絶えてしまうでしょう。

<作品との出会い>
 しかし留まってはいられません。苦しい時にこそ表現すべきことがあると考え、今上演すべき作品を探しました。
 そして巡り合ったのが、マスネのオペラ「聖母の軽業師」でした。このオペラのテーマは、誠実であるものが救われる。あるいは、芸術家は芸術家であることで救われるというまさに私たちが求めていたテーマです。乏しい資金で苦しい状態でも活動を続けることに存在意義を見出そうとする私たちにふさわしいものだと思いました。
 
 調べてみると日本ではまだ上演されてない作品でした。私たちが求めていた作品であると同時に、作品もわたしたちを求めていたという思いもいたしました。
 しかし「オペラ」です。出演者の他に室内楽や音楽スタッフなど特有の人材が多数必要であり、加えて舞台芸術で必須の照明・音響・衣装・メイクなど、上演の規模とは関係なくどうしても嵩む経費があります。作品を決めた当初は、もしかしたらこれが最後の公演になるかもしれないとすら思いました。
 
<助成金をいただく>
 しかし、公演2週間前に、文化芸術創造復興基金の助成金をいただけるという通知を受け取りました。私たちのオペラが救われた瞬間です。
 早速、関係者に報告し、諦めていた設備利用を復活させ、諦めていた稽古予定を増やし、さらに室内楽のメンバーを増やすなど、本来作り上げたかったオペラの形に戻しました。

 結果は、集客数こそ少なかったものの、お客さまの熱い拍手と新聞紙上での高い評価として現れました。そして、動画収録を専門家に委託して出来上がったDVDは80枚を販売し、インターネット配信の視聴数も順調に伸び、ネット上に長く残せるものとなりました。
 
 誠実に芸術に打ち込むものが救われる。上演したオペラのテーマが現実のものとなった経験でした。

軽業師ジャン/今回の上演では、人形と人間で一つの役を演じた
5月、修道院前の市場は大賑わい
修道院の料理人ボニファスも買い出しにきていた。
ジャンがやってきて軽業を披露。
修道院長に諭され、ボニファスにも誘われ、ジャンは修道士になる。
しかし、軽業師か出来ないジャンは、マリアを讃えられないと悩む。
他の修道士たちは、絵画や彫刻、詩や音楽で競ってマリアを讃える。
ジャンは、軽業でマリアをたたえようと、夜密かに礼拝堂に忍び込む。
そして歌を披露。
踊りも披露する。
踊り疲れ倒れ伏した時、マリア像が動き出し、奇跡が起きたと驚く修道士たち
ジャンは天国に召される
残された修道士たちは、奇跡を目の当たりにし、祈りをささげる。
北海道新聞2022年4月11日 中村隆夫氏評

■来場者アンケートのご紹介
https://photos.app.goo.gl/WBoHQ94eH3ReyGhQ9

■3幕5景 奇跡のシーンのご紹介


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