見出し画像

初めて作った推し香水が驚きに満ちていた話

べったーで既に書いた、2022年9月に初めて作った推し香水のレポです。もうちょっと詳細に作っていただいた香水について記録しておきたいな…と思ったのでこちらで書き直しています。大筋はべったー版と変わりません。変わりませんが、何故か5000字を超えました。バカ??

推しについてとインタビューシート

「都内で遊ぼ〜〜対面カウンセリングで推し香水作ってみよ〜」
「イイネ!!!」
ほんとこの勢いでFINCA新宿店さんにお邪魔して推し香水を作ることになりました。

今回初めて香水を作るにあたり選定した推しは、かれこれ七年(22年9月当時)ほど信仰しているゲーム原作の二次元キャラです。マジでいろいろあって「こいつぁガチだわ…(戦慄)」となったので向ける感情は信仰で間違いありません。そしてかなり強固に解釈も固まっていて、「うちの推しは線香(白檀)と血と墓場の土の匂いがする」という確信もあるのですが、ちょっとそれ香水としてはどうなんだ…とか、店員さんをフリーズさせるようなこと言うなよこの狂信者が…と内なる声に窘められたので比較的公式に近いイメージで自分内解釈の推しについて書きました。詳しい内容については既に記憶が曖昧なのですが、
・イメージカラーは白、差し色で金と灰色と紺
・モチーフは鶴
・色素が薄く、細身の外見
・その外見に合わず中身は非常に男らしく酔狂
・驚き(恐らくはセンスオブワンダー)を好む
・気さくで包容力があり、視野が広い
・墓に縁がある
などを羅列した気がします。
こちらのインタビューシートを店員さんに読み込んでいただいたらたのしい質疑応答のはじまりです。

質疑応答とベース決定

「最初に好きになった部分は顔、声、性格でいうとどれですか?」
→顔です(ノータイム即答)
「彼の顔は男性的ですか?中性的ですか?」
→顔だけ見れば中性的かもしれません…ただ声は低いし仕草が完全に男性なので、付き合いが長くなればなるほど中性的な印象は薄れるタイプです
「格好いいタイプですか?可愛いタイプですか?」
格好いいです(ノータイム即答2nd)。でも人を驚かせることが好きなので茶目っ気もあり、そういう意味では可愛げもあります
「細身とありますが、華奢ですか?」
→骨と皮と筋のみで極限まで絞られ、鍛えられた体というイメージなので華奢ではないと思います。痩せ型ですけどもか弱い印象は皆無です
「戦闘のある世界観だったりしますか?」
→はい。推しは戦うことが大好きです。ちょっと戦闘狂の気もあります

などなど。最後に聞かれたのは「推しの香りのイメージってありますか?」でした。これはもう先にも書いた通り明確に存在してたんですがインタビューシートには記載してなかったんですね。なんでかって血と墓場の土は論外にしても残り一つもホラ…線香もとい白檀だったから…香水クソほど初心者からしたら「ハァ〜〜〜???おまえそんなん線香でも鼻に突っ込んどけやボケ」って苛つかれるんじゃないかと思ったの…だってまさか香水の一ジャンルとしてそのまんまずばり「お香系」があるとは予想もつかないじゃないですか!!
なので若干びくつきながら「あの…香水作りに来たのにアレなんですが…お線香というか白檀のイメージなんです…!」とゲロった結果、店員さんは「この勝負、もろたで工藤」みたいな顔でにっこり笑ったのでした。
「白檀の香水、あるんですよ!」
「あるんですか!?」
マジクソ無知なのでほんとにびっくりした。あるんだあ…タバコ系があるのは知ってたけど…そうか、タバコがあるならお香もあるわな…
妙なことに感心してる私の前に差し出された一本のムエット。指示通りに折り目の付いた箇所を嗅ぎ………
「これだ!!線香!!推し!!!」
「まだベースですから!」

おっとごめん判断が早すぎた。いやでもいきなり推しがお出ましになったからさあ…この冴え冴えとした白い喪の香り、気持ちを鎮静させてくれるけどどこかで不穏さも覚えるような尖った煙たさがたまんねえ。
更に言えばこの白檀系の香りこと「ヴァンサンク・ムーン」、和名は「25時の月」でありラベルにはその名にふさわしく夜空に浮かぶ大きな満月が描かれてるのですが、推しの対になる存在(だと私が勝手に思い込んでいる、前回レポの推し)のモチーフがそれこそ月なのでもうこの時点で脳内は狂瀾怒濤のお祭り騒ぎでした。例えて言うならガチャのSSR確定虹演出。既に優勝したも同然です。
ムエットを夢中で嗅いでいる私の前に店員さんは「では更に深掘りしていきますよ〜」と更に数本ピックアップした瓶を並べていきます。既に最高なのにこれ以上があるというのか…!?
結論から言えば、ありました。

そしてはじまる概念VS実在の解釈千年戦争

まず出していただいたのは「ヴァンサンク・ムーン」に透明感のある「ラクリマ」を重ねた香り。色素が薄く、繊細で儚い印象の推しの外見を反映した香りです。マジでめっちゃ鮮明に顔が見えた。なにこれ嗅ぐタイプのおハーブでして?
店員さん曰く「推しの最初に好きになった部分って、一番好きな部分でもあることが多いんですよ。なので外見を模した香りにしてみました」とのこと。いやさらっと言ってるが外見を香りに落とし込むってめちゃ技術力高くない??ただあの、すごい顔が浮かぶしハイパー綺麗な香りですごい好みなんだけど、じゃあ自分解釈の推しかというと「ちょい違うかな…」と。確かに最初に好きだと思ったのは推しの顔なんですが、今現在推しの一番好きなところは「細身で色素薄い外見を裏切って所作が男っぽく言動が酔狂なところ」なので。あとあんま推しを儚いと思ったことがなかったんだナー。死に近いし「死」の体現だけど、儚くはない。黄泉帰ってきたひとだしなあ…。むしろしぶといイメージ。何回か所在不明になりつつもそのたびに見出されて現存してるくらいだもの。
二番目に出していただいたのは「ヴァンサンク・ムーン」にお化粧品やふくよかな薔薇を想起する「パウダーフィーリング」を重ねた香り。大人の余裕と包容力をそのまま表していて、とにかく上品。推しは現在やんごとない関係の場所にお住まいなので、この格調高い香りドンピシャすぎる〜〜〜!!!
こちらは顔そのものではなく、華やかな襖絵や精緻な欄間の彫刻の影が落ちる、艷やかな黒檀の調度が揃う品のいい部屋の前を、真白の羽織を翻しながら颯爽と通り過ぎてく推しの姿が見えました…なんなら風も感じた。身に付けてる金鎖の音も聞こえたかもしんない。これは推しから実際にする香りです。嗅いだ。顕現した時に舞い散る桜吹雪の向こうから確かにこの匂いがしてた。ここまでぜんぶ妄想なんですが実際に嗅いだことがあるという存在しない記憶が生まれてるのでそういうことです(?)
三番目に出していただいたのは「ヴァンサンク・ムーン」に「すずらん」を重ねた香り。これが予想外にはちゃめちゃよかった。推し、白い花のイメージではあるけどすずらんではないかなと思ってたんですが、想像よりもグリーンノートが強めに香るのでいわゆるフローラルというよりお花屋さんの店先の香りがします。それがなんとも推しの生き生きとした姿を彷彿とさせるんだよなあ…萌えいづる生命の鮮烈な香り…嗅いだ瞬間の第一声が「推し、生きてる……」で店員さんを爆笑させてしまったんですが、いやほんと目の前に全身で生を謳歌しながら戦場で舞う推しがいるんですよ。やっぱ嗅ぐタイプのおハーブやぞこれ。
推しから漂う香りかというとたぶん違うし、事前に想像してた香りともまったく違う。でも推しの概念として完璧すぎる…そして気付きました、私は推しを「死」の体現だと思っているしリミナルスペースの擬人化じゃねえかと疑ってるし一単語で表すなら「虚無」or「不穏」だと捉えているけど、同時に生命力の化身だとも思っていたんだと。虚無そのものあるいは虚無を内包した存在ながら、その核には眩いばかりに白く燃える剥き出しの「いのち」がある…単なる死ではなく死と生の混合体、それが自分内解釈の推しだったのか………
これは推し香水作りに来なかったら一生気付かなかったと思います。もうこれだけでも作りに来た甲斐があった。早いな、まだ推し香水完成してません
四番目に出していただいたのは「ヴァンサンク・ムーン」に「リトルウィング」を重ねた香り。すっごくピュアで躍動感に溢れてる香りです。嗅いだ瞬間「あっかわいい!!!」ってなる。推しの驚きが大好きで茶目っ気たっぷりな部分にフォーカスしたんだろうなと。方向性としては一番目の「ラクリマ」に似てるけど、ラクリマより無邪気で無垢な印象でした。ねんどろの推しの香りだな…もしくはアニメの推し。劇場版三部作やった方の(アニメが二種類あります)。
ほんとかわいいしこれも大好きだけど、自分が思う推しとはちょい違うかなあ…こう、左右で言うならたぶん右の香りなんですよね。でも私、推しは魂の色が左だと思ってるので…逆もリバも嗜むけどそこは譲れないので…
というわけで二番目と三番目をすげー嗅ぎ比べるんですがこれがもう全然決まらない。推しから実際にする匂いVS推しを概念化した匂い、そんなの…決めきれるわけなくない…!??どっちもびっくりするくらい推しの匂いすんだけど!?!!??
店員さんの勧めに従いコーヒー豆で嗅覚リセットしたり、一度お店の外に出て嗅ぎ比べたり、それでもなお決まらない。「概念香水と言うからには概念を優先すべきか…でもこの包容力ある香りはあまりにも惜しい…存在を感じるのは絶対この香りだし…でも概念のはっと意表をつかれるような鮮やかな香りはマジで我が推し…」と冗長ループし続ける思考。
するとそこで呻吟する様子を見かねたのか「ちょっと試してみたいことがあるので、いいですか?」と店員さんが救いの手ならぬ新たなムエットを差し伸べてくれました。
五番目に出されたそれは「ヴァンサンク・ムーン」と「パウダーフィーリング」と「すずらん」、迷っていた三つすべてを重ねた香り。概念と実在どちらも兼ね備えた、紛れもない推しの香りでした。これだ!!って叫んじゃった。念のためコーヒー豆リセット挟みつつ二番目や三番目の香りとも嗅ぎ比べて間違いないなと確信。
目の覚めるような眩しい白さの、でも暖かな包容力を持つ羽織姿の推しがそこにいました。
ねえ再三確認するけどこれ本当に嗅ぐタイプのおハーブではなくて???大丈夫??合法なやつ????
そして重ねる香水が三種類になったことで店員さんには恐縮がられてしまったのですが、推しを追求するならお金に糸目は付けるもんじゃないし何より妥協しちゃなんねえってばっちゃも言ってた。

貸していただけるフレームは季節ごとに変わる模様
今回の解説カード。エモオブエモ

完成した推し香水は生と死の香りがした

トップノートで香るのは清冽な花の香りとグリーン、そして背筋がぴんと伸びるような高貴で鋭い白檀。ミドルでは白檀を残しつつ他二つが徐々にやわらかく肌馴染みのよいフローラルとパウダリーに変わり、ラストではじんわりと烟る甘さのウッディノートに落ち着く…ゆりかごから墓場まで付き添ってくれる推しの香りだよこれは。ラストノートなんか最期の時に推しが掛けてくれる羽織の香りしたし。滑らかな正絹の感触までしたわ。なんの未練もなく麗らかな気分で彼岸に渡れること間違いなしだったわ。あとはそう、推しの真っ白な衣装は産着であり婚礼衣装であり死装束であると確信してやまない狂信者なので、トップでグリーンノートがぱっと立つのが余りに解釈ド一致すぎた。推しには緑色の要素はないんですけども、この国には嬰児を「みどりご」と呼ぶうつくしい言の葉が存在するではありませんか…喪を表す白檀にくるまれて生命そのものであるグリーンの香りが突き抜けるの、完璧としか言いようがない。虚無のただなかにあっていのちの輝きを貫く推し概念そのものです。核(こころ)に触れちゃったな…
怪文書抜きにしてもシンプルに品がよくていい香りなんですよ。甘すぎず、重すぎず。程よく謎めいて溌剌としてる。フローラルだし薔薇も入ってるんですがユニセックス〜メンズの範囲に収まってるし、何より個人的にハイパー直球で好みの香り。すれ違ったときに色素薄い別嬪の男性からこの香りがしたら思わず振り返るなってくらい。
推し香水を作りにいって、推し概念としても5000パー大正解なものが作れてしまったんですが、自分の好みとしても同じくらい大正解の香りだったなという…考えてみれば当然だな。今回作った推し、全パーツ好きな部分しか存在してねえもん。そら香水として解釈したら大好きな香りになる、あたりまえ体操。

この推し香水が大成功かつドツボったことで三ヶ月後には二人目の推しの香りを作りに行き、そして今は推し関係なく香水そのものに興味が湧きつつあります。とりあえず白檀はサンダルウッドで伽羅(沈香)はウード、お香系はインセンス。覚えたぞ!!

二人目の推し香水レポはこちらからどうぞhttps://note.com/opera21g/n/nf45363fb6bfe


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?