自転車のまち尼崎市がシェアサイクルを始めて6年!シェアサイクルの効果とは
兵庫県尼崎市は、阪神電車、JR、阪急電車が東西に走っていて、大阪や神戸、京都や奈良へも乗り換えなしでアクセスできる、交通の便がとても良いまちです。また、山がなく、坂道も少ないため、徒歩や自転車での移動に最適な環境になっています。南部に工業地域、中央部に商業地域、北部に住宅地が広がる形で発展を続けており、平成28年には、市制施行100周年を迎えました。自転車の取り組みが盛んで、「HELLO CYCLING」を関西で最初に開始した尼崎市の自転車事業について、尼崎市の石原さん、星名さん、山本さん、毛利さんに話を聞きました。
ー 尼崎市はどのような特徴があるまちなのでしょうか?
石原さん:尼崎市は50平方キロメートと比較的コンパクトなまちですが、阪神電車、JR、阪急電車の3つの路線が東西に通っていて13駅あるため、関西での交通の要衝となっています。また、山がなく、坂道も少ないため、徒歩や自転車での移動に最適な環境です。南部に工業地域、中央部に商業地域、北部に住宅地が広がる形で発展を続けており、平成28年には、市制施行100周年を迎えました。
ー 3つの路線が通っていて13駅もあり、交通の便がかなり良いまちなんですね!
石原さん:電車が通っている東西の移動は便利なのですが、南北には電車が走っておらず、市バスが主な交通手段でした。市バスだけだと移動手段が足りないので、そこで始めたのがシェアサイクルです。坂道も少なくフラットな土地なので自転車との相性が良いんですよね。
ー シェアサイクルをはじめとした自転車に関する取り組みをされている部署が庁内にあるのでしょうか?
石原さん:元々は、交通安全の係、自転車の係がそれぞれ分かれていたのですが、交通安全と自転車の係が統合されました。自転車が市民の方にとって身近なものである一方で、放置自転車や盗難などの問題があったのでそれらを減らせるように取り組んできましたね。
放置自転車や盗難などが目立つため、自転車をネガティブに捉えがちですが、自転車を魅力的なものにしたいと思い、庁内で自転車の取り組みを行う横断的なプロジェクトが立ち上がりました。
ー 尼崎市自転車総合ポータルサイトの「尼っ子リンリン」を見たのですが、かなり自転車の取り組みに力を入れていることが感じられます。
石原さん:はい、自転車のまちとして発信にも力を入れています。「尼っ子リンリン」という、尼崎市の自転車総合ポータルサイトでは、自転車ルールのクイズや4コマ漫画、動画コンテンツなどを掲載しています。
また、「HELLO CYCLING」のシェアサイクルを使える豊中市と連携して、各市における桜スポットとシェアサイクルのステーションをまとめた「あまとよ桜散走デジタルマップ」を作成しました。「散走」とは、自転車でゆっくりと散歩感覚で各所を巡ることですが、桜を通じて尼崎市と豊中市を散走し、それぞれのまちの魅力を感じていただくことが狙いです。
ー 「HELLO CYCLING」が使える他市と連携した取り組みもあるんですね!尼崎市は、2018年12月から2020年3月に「HELLO CYCLING」を活用したシェアサイクルの実証実験をやり、関西では1番最初にシェアサイクルを開始した自治体ですよね。
毛利さん:2016年に、兵庫県が自転車のまちづくりを進める中で、県内で最も自転車の分担率が高く、自転車に関する総合的な取組を行っている尼崎市が自転車活用推進のモデル市として選定されました。自転車のまちづくりを進める上での1つの施策として、兵庫県と尼崎市の共同で、2018年から「HELLO CYCLING」を活用したシェアサイクルの実証実験に取り組みました。
実験は①市内南北方向への移動における利便性向上に寄与するか②市内の新たな魅力を発見する手段となりえるかを目的として、ステーションは13カ所から始まりましたがユーザー様からステーション数を増やして欲しいという声もあったので、実験終了時にはステーション数は23か所まで増加しました。
また、尼崎市では自転車盗難が問題になっていましたが、「HELLO CYCLING」で使える電動アシスト自転車にはスマートロックとGPSがついていることもあり盗難されないので嬉しいです(笑)
ー 実証実験を経て、2021年からシェアサイクルを本格実施されていますが、現在はどういったことが課題なのでしょうか。
石原さん:右肩上がりで利用が伸びているので、さらに多くのステーションを設置して高密度化させていきたく、まずは13駅全てにステーションを設置したいです。駅までの移動と駅からの移動が多いので、駅に設置することが利便性向上につながると考えています。
また、夜間人口のデータなどを見ながらどこにステーションを設置すれば市民の皆さまの利便性が上がるのか、OpenStreet様や尼崎エリアの運営事業者である阪神ステーションネット様と日頃から連携しています。庁内の他部署とも連携し、さまざまな部署でシェアサイクルの計画策定や設置提案などを行っています。現在は、産業政策課などと連携して市内の中小企業の敷地の空きスペースに設置できないかなど検討を進めていますね。
ー 尼崎市民は多くの方が自転車を持っているけれどシェアサイクルを使う方もいるということなのでしょうか。
石原さん:アンケート結果によると、シェアサイクル利用者のうち7割が自分の自転車を保有しています。利用目的の多くは、買い物や通勤・通学などの日常利用ですね。兵庫県の中でも尼崎市は、最も人口密度が高く、医療機関も多いです。シニアの方も多いので、シェアサイクルで使える電動アシスト自転車が市民にとっては良いのかなと思っています。
ー シェアサイクルを活用したイベントなどの取り組みがあれば教えてください。
山本さん:落第忍者乱太郎の作者が尼崎市に住んでいることもあり、落第忍者乱太郎30周年の時に、尼崎市で聖地巡礼のイベントを実施しました。尼崎の地名がキャラクターの苗字になっているんですよ。尼崎市役所でHELLO CYCLINGアプリをインストールしてアンケートに回答してくださった方に、落第忍者乱太郎のクリアカードのノベルティをプレゼントしました。
クリアカードは市役所オリジナルで作成したもので、想像以上にご好評いただきました!クリアカードを地名が書かれた標識にかぶせて写真を撮るなどの利用があり、SNSではクリアカードにデコレーションをして載せている人もいました。利用者の多くが尼崎市外の人たちで、中には外国人の方もいましたね。
また、尼崎市を舞台にした映画「あまロック」のロケ地マップを作った際に、シェアサイクルの利用をPRしました。
ー 尼崎市にとって自転車はどんな存在ですか
星名さん:東西は電車3本が通っていて便利ですが、南北はバスでの移動になり、乗り継ぎが必要です。シェアサイクルは、乗りたい時に自由に乗ることができ、南北の移動を補完できているので、尼崎市の交通の一端を担う存在です。今後もっと普及してほしいですね。
ー シェアサイクルの今後の展望、新たに取り組みたいことは?
石原さん:阪神尼崎駅を中心に、寺町や商店街など人が多く集まる場所があるので、駅中心に今後も設置を増やしていきたいです。また、阪神タイガースの2軍球場も完成するので、球場と駅をつなぐようなシェアサイクル利用も生み出していきたいです。