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RIZAPに学ぶカスタマーサクセス(ハイタッチ支援)~顧客と向き合い、寄り添い、繋がる。

カスタマーサクセスという職種を考えるうえで、日本国内には「顧客を成功に導くエキスパート企業」が存在します。それが、RIZAP(ライザップ)です。

RIZAPのトレーニング方法はこれまでベールに包まれていましたが、RIZAPの目標達成メソッドとトレーナーの教育プログラムを設計した、RIZAP立ち上げメンバーである幕田 純氏が執筆した書籍、「ゲストの心を離さない ライザップ式接客術」にそのノウハウが公開されました。

そしてこのトレーナーのノウハウは、まさしくカスタマーサクセスの(特にハイタッチ領域)のノウハウの塊でもあります。
本記事では、RIZAPのトレーナーノウハウの内容を応用し、カスタマーサクセスとして「顧客と向き合い、寄り添い、繋がる」方法をご紹介したいと思います。

1.1  RIZAPメソッドの前提は、顧客の「真のニーズ理解」にあり

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RIZAPは大前提として、顧客の真のニーズを理解することが、挫折を克服し、成功に導く鍵であるとしています。それは、ダイエットはきつく、目的意識がないと継続しないからです。
カスタマーサクセスにおいても同じく、製品導入時は期待に満ちていたとしても、実際には初期設定や機能利用などで、きつい/面倒くさいシーンも出てきます。それを乗り越えるうえでは、顧客のことをしっかり理解して成功に導くのがRIZAP式です。

1.2  顧客に対する3つのスキル:①向き合う力、②寄り添う力、③つながる力

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顧客を真に理解し、成功に導くためには3つの段階的アプローチで、顧客との関係性を深めていきます。それが向き合う力、寄り添う力、つながる力の3つです。
はじめて出会う顧客は、まだあなたのことを信用していないかもしれません。そこから伴走して、顧客を成功に導くうえでは、パートナーとしての信頼獲得が必要です。以降は、そのためのコミュニケーションのコツをご紹介します。

2.1  向き合う力:顧客の真の目標に向き合う

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まずは「顧客と向き合う力」についてです。
SaaSの製品導入においても、顧客の目標は何なのか。目標達成に対してどんな課題があるのか。現状どう向き合っていこうと思っているのか。
顧客のホンネを知りたいはずですが、このような話は信頼関係がなければなかなか深い情報まで話してくれません。
顧客と深く向き合い、本音で通い合い、顧客の目標に共に向かっていく力が「向き合う力」です。

2.2 顧客と向き合うコミュニケーションとは

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カスタマーサクセスにおいては、製品についてあれこれ説明するべき情報が多いため、どうしても「GIVE」のコミュニケーションが多くなりますが、RIZAPにおいては「TAKE」のコミュニケーションを重要としています。

「顧客を100%肯定すること」「顧客に一生懸命興味を持つこと」、これはすなわち顧客が発する言葉ひとつひとつに対して、しっかり承認をしていくことです。
一方的に製品説明だけ淡々としていくカスタマーサクセスと、顧客の話す内容を肯定しながら対話を深めていくカスタマーサクセスでは、後者のほうが信頼されるに違いないでしょう。カスタマーサクセスが「話を聞く」アクションを取れているのかは、盲点ですがとても大切なことです。

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また5つのWHYは、なぜ?なぜ?と5回深ぼることで、顧客の目標について真剣に向き合って、考えるということです。その目標を立てるにいたった背景や、状況、課題などは実はアッサリ聞くだけに留めてしまっているカスタマーサクセスは多いのではないでしょうか。全く目標について話題にもしないこともあるでしょう。

しかし、製品の導入時に、なぜ製品を導入するにいたったか。なぜその目標を立てたのか。しっかりヒアリングをする時間を作ることで、今後辛くて退屈なこともある製品機能利用のモチベーションに繋げることが出来るのです。

2.3 顧客を「承認」するメッセージ

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顧客に心をひらいてもらうためには、顧客を「承認」することが重要です。
すごいですね、とお客様に対してストレートに言えないカスタマーサクセスは実は多いのではないでしょうか。しかし、実際に活躍しているカスタマーサクセスの振る舞いを観察すると、電話口や商談の中で、お客様に対し、しっかり「承認」のメッセージを伝えていることがわかります。

また、承認の表現として、YOU(あなたは○○ですね)、I(私たちは○○だと思いました)、WE(私たちのチームも○○と言っています)といった、それぞれの人称で顧客に伝えることで、より深く気持ちを伝えることが出来ます。

2.4 顧客の「理想を超える目標」へ導く

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RIZAPのすごいところは、顧客の目標をただ叶えるだけではなく、「ここまで叶えられるのか!」というくらい高い目標まで成功に引っ張っていくところです。そして、それをやり遂げる秘訣が「寄り添う力」です。

3.1 寄り添う力:顧客に徹底的に寄り添う

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「顧客に寄り添う力」とは、より深い本音を言い合える関係性を作り、目標達成を導いていく力です。表面上のコミュニケーションではなく、深く顧客と寄り添うコミュニケーションを取ることで、顧客を変える奇跡が生まれるのです。

3.2 3つのMで顧客の人生を変える

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RIZAPでは3つのMにより、「顧客が望む以上の目標」を叶えられるとしています。

1つ目は正しい目標達成プログラムの作成です。
RIZAPでは「Navigator」というカウンセリング専用アプリを用いて、2ヶ月で体重は○kg、体脂肪は○%まで落ちます、というデータ目標を算出します。この目標は、他のお客様が実際に成し遂げた実績をもとにはじき出したデータです。

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※画像は東洋経済ONLINE記事より

カスタマーサクセス業務においても、○ヶ月でKPIを○%達成まで目指しましょうと、他のお客様の事例を元にしながら、導入目標を定量的な形で設定してあげるべきです。
目標を具体的に見せる、他のお客様の実績に基づいて目標設定をする、ということで目標が自分ごと化して、よりリアルになります。

ちなみに、この「Navigator」での数字の見せ方としては、お客様に目標数字を書いて頂いたうえで、「RIZAPならここまでいけます」と顧客でも見えていない最高点数を見せることがキモとなります。ここまでいきませんか??とお客様が期待している以上の「MAX値」を目標として示す、これは本当に顧客に寄り添おうと思わなければ出来ない提案であり「覚悟」です。

また2つめのメンタルサポート、3つめのマインドは、精神論かもしれませんが、カスタマーサクセスであるあなたが「顧客を支えるんだ」「顧客を変えるんだ」という強い気持ちがなければ、顧客を成功に導けません。

3.3 シャドウタイム:顧客と会っていないときこそ重要

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私もなるほど、と頷いたのは、シャドウタイムの重要性です。
RIZAPは顧客と会っていない時間(シャドウタイム)を有効に使うようにしています。日本には「おもてなし」という言葉がありますが、これは「その人がいない時にも気を配る」日本特有の言葉と聞いたことがあります。

具体的にRIZAPが行っているのは、顧客と会っていないときにも、こまめに連絡をしてあげたり、承認をしたりすること。つまり、常に気を配っている状態を作り、顧客のトレーニングの優先度を上げているのです。

カスタマーサクセスにおいても、会っていないときに、お客様の会社のニュースをチェックする、役に立つ情報をシェアしてあげる、お客様が書いた記事を読んで感想を伝える、といったことで、「あなたに意識が向いている」という状況を作ることが出来ます。

4.1 つながる力:目標達成後も繋がり続ける

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顧客に向き合い、寄り添い、ともに成長していくことで、顧客との関係性も変わっていきます。目標を達成した「その後」にどうするか、これがつながる力です。

4.2 顧客との関係性の3つの段階「依存、自立、相互依存」

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顧客の関係性は、3つの段階があると言われています。
第一段階が依存。SaaSのカスタマーサクセスにおいても、はじめの顧客はカスタマーサクセス担当に依存することになり、設定や利用方法など色々サポートすることが仕事になります。

第二段階が自立。カスタマーサクセスでは、よく顧客を「自走」させるという表現もします。製品機能に成熟していった顧客は、少しずつカスタマーサクセス担当の手元を離れていきます。

第三段階が相互依存。これがカスタマーサクセスが目指すべき究極の姿でしょう。これは、あなたがいなくても出来る「自立」の状態から、あなたがいればもっと出来る状態に変わること。カスタマーサクセスの存在意義でもあります。

4.3 ストレッチゴール(新たな目標)の設定

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相互依存の状態まで関係性を深める上では、顧客に対しさらなるストレッチゴールを見せてあげることが出来るかが重要です。
自社の製品で叶えられるMAX of MAXの状態があるとして、それを目標設定し達成していくことで、顧客の目標や期待を叶えていく。
ここまで出来た!と思ったお客様に対し、もう少し頑張ればこんなことも出来ますよ、とさらなる希望を見せていく。

なお、SaaSの特徴としては、製品を継続的にアップグレードしていくことが出来ます。
常に顧客の課題に寄り添い、顧客が求めるものを機能としてアップデートする、カスタマーサクセスが顧客のためにサポートするフローを続けることで、顧客の課題解決を出来る範囲をより深く、大きく広げていくことも可能です。

そうして「顧客の人生を変えていく」ことが、カスタマーサクセスの仕事です。
ぜひ、日頃のカスタマーサクセス業務にRIZAP式を取り入れてみてください!