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第9話 退院まで②

起て飢えたる者よ 今ぞ日は近し

2024年5月1日
廊下ウォーキング連続5周 すなわち1km

午前中、パウチを取り扱う医療機器販売店の営業担当者と商談。基本契約に合意して注文・支払方法等を確認して、いろいろパウチや、その他の付属品をその場で発注してしまう。

入院中という心理的、身体的に閉鎖された状況での商談が、フェアかどうか?
病院、業者双方に対し疑問がないこともないが、まあ、後から変更すればよろしい、と大人しくしておく。
スターターキットももらったことだし。

Amazonでパウチや付属品などストーマ関連を検索すると出てくる。価格は多分おなじ?

パウチは医薬品なのでメルカリやジモティーでは扱ってないだろう。調べたことないが

医薬品等をオークションショップで買う人は勇者だと思う。

腹へったよ〜

前日から給食のメニューが異常に気になってきた。

早く普通食にステージアップしないかなぁ

ご飯はお粥じゃないし、おかずも何だか字面は美味しそう。

同室の方がストーマ閉鎖の手術をしたのだが、下痢に苦しみながらも、自分より硬そうな物を食べている。

うらやまし

談話室に行った都度、掲示してある献立表を確認してしまう。
チェックしたからといって、どーにかなる訳ないんですけどね。

まるで給食だけが楽しみの小学生である


脳内メーカーは

      飯飯飯飯飯
    飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯
   飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯
 食い物食い物食い物食い物食い物
  食い物食い物食い物食い物

退院したら食べたいものをランク付してみる。

入賞は以下のとおり。

第3位 カレー
第4位 鳥唐揚げ
第5位 メンチカツ
第6位 ハンバーグ


第2位 トンカツ

そして、栄ある第1位は

カツ丼  でした。

退院して数日ですべて制覇しております。

メイディ 追憶
今日はメイディである

昔々のその昔、総評系の労働組合に所属していたときは、5/1は原則、全員動員されて集会からのデモだった。

普通の通行人は無関心だが、つかず離れずこちらを注視しているオジサンたちがいる。

短髪 イヤホン 鋭い目付き サファリルックのジャケット(わかるかな〜 わっかんねぇだろうなぁ)が共通点

本人たちは目立ってないと思っているのだろうが、一般人とは明らかに違う雰囲気がプンプン

ハムですね(公安警察のこと)

彼等からすれば、労働組合は政府転覆を企む悪の結社であり、常に監視を怠れない存在だと認識されていたんだろう。

実際、⬜︎○に乗っ取られた組織もあったし。

当時は、余程のことがない限り、メイディへの参加は労働組合に加入している者にとっては当然のことであった。

「連休利用して海外旅行に行くからメイディには出ませ〜ん」
なんて言う思想薄弱な労働者は皆無だった。
いたら総括されただろう。
(いったいどこの国の何時代の話よ)

大袈裟なこと言いましたが、同調圧力はあった。

バブル以降、この統制が緩くなってから、日本社会党や労働運動の凋落と、不正規労働者の増加と賃金上昇の停滞が始まった気がする。

従来は原則全員参加が、いつの間にか人員割り当ての動員制になった。

時代が変わってしまったのだ。

毎年昇給あるし、春闘のベースアップでお給料上がった→
なんだか貯金増えたし、夏のボーナス今年もいっぱい出そう→
皆んな行ってるし、5月のゴールデンウィークはハワイでいいから海外旅行に行きたい→
メイディなんか海外旅行へ行くから欠席でーす

となる。

労働組合の存在意義が薄れてしまったのだ。
「スト」とか「春闘」といった言葉が死語になり、会社側からやられっばなしになっていく。

2024年5月2日

朝の回診時に主治医の先生から
「自力でパウチ装着出来れば退院していいですよ」
と、お墨付きが出る。

  よっしゃあ

明日、パウチの交換があるので、ここで自力で装着出来れば、最短で2日後の5/4には退院出来る。

もう少しの辛抱だ

僕の我慢が実を結ぶ時が来たのだ
外を見ると花水木が咲いているじゃあありませんか

俄然モチベが爆あがる。

明日のパウチ装着は絶対一発で成功させてやるぞ!

鼻先ニンジン馬状態。

1日でも早く病院の飯からおさらばしてカツ丼食いたい。

他の理由は ‥‥ 無い

深夜の病棟徘徊

結腸膀胱瘻と手術の痛みが軽くなった。
そうしたら連続して睡眠が取れるようになった。

いいことなのだが、3時間ほどで目が醒めてしまう。身体も頭も動かして無いからね。

消灯と同時に入眠してしまうので、日付が変わった頃には目が覚めてしまい、その後は眠れない。

ベッドの中でしばらく我慢するが、ごそごそ音を立てると同室者に迷惑なので、トイレに行ったり談話室に飲み物買いに行ったりして廊下を歩き廻る。

廊下の端にあるイスに座って、少しづつ色の変わっていく東の空を眺めたりする。

5月なので夜が明けるのは早い。

ナースセンターの前を通ると当直の看護師さんが何やらお仕事中

夜勤がある仕事は大変だな、と思いながら会釈して通過。

入院してる病院は新しいので、そんなことはないが、昔の病院の夜は気味が悪かった。

平成の初めに痔で入院した病院は、もしかしたら戦前の建築?の古さで夜中にトイレ行くのに決心が必要だった。

高所、暗所、閉所、ある種の昆虫等が怖いが、心霊現象も勘弁して欲しい。体験したくない。

幸い見たことないけど。

「音」はある。

母親は某大学病院で亡くなったのだが、葬儀社が遺体を引き取りにくるのを病室で息子と二人でベットの脇のイスに座って待っていた。

突然、母が寝ているベッドの反対の床で子供が裸足で走るような “パタパタパタ“という音がした。

時間にして2,3秒。間違いなく部屋の中。

息子と二人顔を見合わせて、
「今のなに?」
二人とも聞こえたので空耳ではない。

あれは何だったのだろうか?

続く

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