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オタク、DUNG BEAT POSSEについて考えてみる

まだ今年のBOTの記者会見の内容とか見ないとなんとも言えないんでアレなんですけど、6巻待ってる間にないシーン、ない設定をたくさん思いついたのでまとめておきます。
小説5巻で今の内容は終わって、次の巻から全然違う並行世界の話になってしまうかもしれないと勝手に怯えているので。私はDBPの設定気になりまくってるし、再戦もしてほしいし、バーサス曲もほしい人間なのですがどれも来ないで急にジュニエグで一致団結になる可能性も全くないとは言えないのがこの世界なので......。
ちょっとだけ本編の話しますが、その少ない素材から生み出された幻覚の話がほとんどなのであらかじめご了承ください。
無事に続きが読めたら答え合わせしたい。

DBPに重い過去設定ある説

マリクは本人は気にしてる様子ないけれど義体の被験体になってる時点でけっこう重い過去持ちなの確定です。しかも勝たないと自分の存在意義がないとまで言ってる。「オレは最強だぜ!」って調子に乗ってる子どもかと思いきや、ちゃんと勝たないと最強じゃいられない自覚あるんだなって......。無意識にありのままで良いという考えを否定してて、切ない。実験を繰り返されて、データとか結果を重視されてきたりゼロと比べられてきたから「1番じゃないと生きてる意味がないんだ」って思ってしまってるとかだったらどうしよう。単純に気分良いから最強でいたいみたいなことじゃなさそうに思える。
ハンキチはこの世界を苦しい場所として捉えている様子。だからスキートが何もかも踏みつけにしなくても強者にはなれるみたいなことを言った時に、あんなに機嫌悪そうに否定したのでは。邪魔になるものを全部殺して、騙したり奪ったりしないと上には立てないって思うからにはそう思うきっかけとなる出来事があるはず。元々は騙されて奪われてきた側なんじゃないだろうか。
それからミチさんのスキルが具体的になんのマージスキルなのかははっきりしないが、怒りが重要な要素になっていることが気になる。おそらくは自分の感情とのマージで武器を強化する
、感情の度合いによって威力の調節が可能、スキルの発動/解除時に発生する熱と光で爆破攻撃、ないし撹乱を行うこともできる、みたいなそんな感じではと推測。ハルトは一般的な感情、感覚とのマージだけどミチさんのは自分という個人の感情をマージしてるイメージ。スキルの特性は個人の精神と強く結びついてるのではという推測は作中でジギボのみんながしていたことだけど、その仮説が正しいとするとミチさんは何かものすご怒り、あるいは憎しみ、恨みを抱えて生きてきたことになりはしないだろうか。
最後にアヤセ。なぜあんなに元気がないのか......。かつヴィーの守護者を名乗り、駒として動くあの感じ。何もないとは言わせないぞ。個人の精神とスキルが結びつくなら、影とのマージスキルを持つアヤセの心の中は真っ暗闇な気がするんですが......。
というような要素からDBPすごい暗い過去あるのではと思ってしまう。これでみんな特に何もなかったら逆にびっくりする。

過去について考えてみる

もう勝手に暗い過去があるものと思っているので、ない設定を考えだしました。
LDH産のコンテンツでこんなに酷いことするとは思えないので絶対に当たらない予想。というかこうだったらめっちゃ読み応えあるのになぁというものでしかないです、これは。

・マリク

全状況対応戦闘義体の完成形。どこかから拾われるというか誘拐されてきて被験者となった子どもで、記憶操作を受けているため過去の記憶はほとんどない。なにか過去の記憶らしきものがたまにぼんやりと浮かんでくることはあるが、それがなんなのかをもはや思い出せない。
「マリク〈王〉」というのはゼロと同じく識別のための呼称であって本名ではない。今は自分の名前として使っている。(元々の名前は忘れた)
義体化初期の段階では実験棟内特別病棟で過ごしていたため、他のみんなのいる寄宿舎には後から移された。ゼロを作った企業のバンコク支社の研究施設で開発されていた義体。
ゼロの戦闘データを元に模擬戦を繰り返すが、スキル発現までは研究員の期待以上の結果は出せていない。戦闘技術だけをみるとプロトタイプに劣るが、被験者としての適性と戦闘に対する意欲が評価され最新型の義体の有力候補になる。
ゼロ以外の被験体は不適合、または実験過程の負傷により死亡・廃棄されている。

・ハルト

マリクと同じ研究施設の別プロジェクトの被験体。他人の感情への共感能力が高かったため、マインドコントロール、テレパシー研究の対象。IUS以前からスキル(この段階では超能力)の発現が期待されていた。研究棟もマリクとは別棟。
温和な性格のため、寄宿舎に移ってきたマリクとも早い段階で親しくなった。部屋ではミチからもらったバイクの雑誌を眺めたり、ギターを弾いたりして比較的不自由なく過ごしている様子。敵の行動を鈍らせる、一時的に行動不能にする程度のスキルのため、脱出時はマリクを援護する形で同行していた。スキルは攻撃以外の手段にも使えるため、味方に対して使用することも。

・ハンキチ

マリクとは別のプロジェクトの被験体。兵器としての適性は未確定だが、IT技術適性があったためマリクのプロジェクトの補助要員として同じ棟で仕事をしている。初めのうちはデータ収集と分析のみ担当していたが、後々マリクのメンテナンスを担当するように。他人のことは基本的に自分より下だと思っているので、研究員のことをあからさまに嫌い、自分の作業のための研究室を用意させて使っている。マリクに対しても厳しいが、同じ被験体であるため嫌っているわけではない。ミチの脱出計画に賛同しており、スキル発現後は自分たちのスキルに関する情報を密かに収集し持ち出す準備をしていた。アヤセとは特別仲がいいわけではないが、アヤセの能力自体はきちんと認めている。

・アヤセ

マリクとは別のプロジェクトの被験体。兵器としての適性は未確定。高IQの持ち主だが、積極的に意見を述べる姿勢が見られないためマリクのデータ収集、分析の仕事を割り当てられて、それを黙々と行なっている。後にハンキチのメンテナンス作業の手伝いのために研究室を訪れてそこで初めてまともに会話する。宿舎ではハンキチがほとんどの時間研究棟の方に行っていて、アヤセはアヤセで自分のスペースでじっとしているだけなので必要なこと以外はお互いにあまり話さない。スキル発現後は以前よりも評価が上がるものの、模擬戦では予測値以上の結果は出せず。自己肯定感が低く、消えてしまいたいという考えを持っていたためにそれがスキルに反映された。ヴィーとの会話によって以前よりも気持ちが楽になったため以降ヴィーの守護者として行動をともにすることが多い。

・ミチ

マリクとは別のプロジェクトの被験体。兵器としての適性は未確定。被験体としては最古参で、目立った適性は見つからないが、耐久性に優れている点、また研究所が立てた能力者(スキル使い)の条件に合致したため実験を継続して受けている。マリクとは違い、でたらめな実験を数多く受けさせられている関係で身体は手術痕だらけ。しかし研究員に上手く取り入って行動の自由を得るために、引き続き実験を受けている。被験体の中で唯一、企業としての仕事を任され、かつ施設から外に出ることができる存在。組織のために邪魔になる人間を殺すことも。少しだが外に出た時に必要なものを買う自由も与えられているので他の被験体の分も買って帰っている。宿舎にいない時間の方が多いがそういったこともあり、信頼されている存在。施設からの脱出計画の首謀者。スキル発現後は兵器としての評価が上がったが、スキルの正体が怒りのマージによる武器強化であることを黙っていた。名前の由来は「未知」。

・フォース

剣客。ROWDY SHOGUN ゴエモンの弟弟子。超バンコクに流れてきてからは暗殺の仕事などを請け負いつつ、気ままに過ごしていた。ある時、ゼロを開発している軍事企業の人間を始末する依頼を受けそれを遂行するがその時にミチと出会う。施設からの脱出計画を聞きそれを手伝ってほしいというミチの申し出を受け入れるが、ミチが自分たちのスキルの解明に研究施設での実験を利用しようと考えていたこともあり、その後何度か会って計画を聞きながら脱出の準備を手伝う。ミチたちにとっての外の世界の案内人。ゴエモンに勝ち、彼を超えるという思いは未だにあるため、イヌイからの依頼を受けた際にはゴエモンとの過去をミチに話し、共にROWDY SHOGUNとの交渉に赴いた。

・ヴィー

人形遣い。超バンコクの都市のあちこちに出没し、自分以外のスキル使いを探し出そうとする。DUNG BEAT POSSEのメンバーたちのうち、アヤセがスキル持ちであることを観測したため彼らと接触をはかりチームの一員になった。
アヤセからは精神的に依存されているが、彼の意思を尊重しているため特別何かをするように指示をしているわけではない。自分に接近された際に防御する手段がないスキルのため、戦闘の必要がある場合はアヤセを伴って行く。
国外のスキル使いたちに関する情報を独自に入手しており、超東京の乗っ取りを最終目標としてブルーシールド長官のイヌイとの契約を提案する。

そんな形で超バンコクの研究施設から逃げてきた子たちにフォースが合流し、その後ヴィーの方から接触してきて今のチームの形になる。結成はIUS以降、リーダーは特に決めていない。

ない場面を考えてみる

上記のような設定のもと、結成までの間にあったらいいなと思うシーンをあれこれ考えるとなんとなく一つの話みたいになる。分量的にこれで1冊分にできちゃいそう。ここまでの掘り下げはないだろうけれど、考えるの楽しいので。

・マリク、病棟から寄宿舎へ

白い壁に囲まれた病棟で過ごしてきたマリク。今回の実験で生じたパーツ損壊の修復作業が終わったタイミングで他の青年たちがいる寄宿舎へ移される。全状況対応戦闘義体は単なる機械ではなく、自分の頭で考えて判断する存在であることを期待されているため、機能拡張を目的として他の人間とのコミュニケーションをとれる環境が用意された。青年たちは一つの広い部屋に集められて生活しているようで、お互いに干渉しすぎることなく過ごしている様子。部屋までは研究員によって案内されたが、そこからミチという青年に案内が引き継がれる。ミチはここにいる青年たちの中では年長者であり、ここでの監督生的な役割を担っているらしい。ミチから他の子たちの名前や受けている実験のことを聞かされるマリク。自分と同じ義体実験の被験体ではないことを知り、警戒を緩める。(試作機ないし、自分と同じ完成形候補だとしたら殲滅対象になると考えていたため)
その後自分のベッドのところでぼーっとしていたところ、何やらみんながミチの周りに集まり出していることに気づく。どうしたものかと考えていたら、ハルトが誘ってくれて輪に加わった。ミチだけが施設から外に出られるため、それぞれが頼んでいたものを買ってきてもらって今日はそれを受け取る日なのだという。ミチはマリクも何か選べるようにといろいろと用意してくれていたようで、頼りにして良いのかもしれないと思いはじめる。何気なく外の世界のことを聞いてみると、「完全に自由になって歩けたら、きっと楽しいでしょうね」と意味深な返事が返ってきた。それからしばらく寄宿舎での生活は病棟にいる時よりもはるかに楽しいものになり、みんなとも仲良くなってきたマリクは研究施設からの脱出計画を聞かされる。ここから自由になって好きなところで好きなように生きていけるという言葉に不思議と魅力を感じ、マリクはこの計画に協力することを決める。

・ハルトとマリク

IUS以降、感情のマージスキルが使えるようになったハルト。模擬戦の結果のことで悩んでいるマリクの話をよく聴いている。いつも実験やら検査を受けている研究棟は別なので寄宿舎に帰ってきてから一日のことを報告しあったりして友達と呼べる間柄になっている。マリクとふだん頻繁に関わってるのはメンテナンスを担当しているハンキチだけど、ハンキチは模擬戦の結果について慰めるようなことは言わない。ただ「マリクは完成形になれる義体として選ばれていて、そのためにプロトタイプの零号機だとかその他の義体が犠牲になってきたのだからマリクをそう簡単に殺すことはないだろう」というようなことは言ってくれる。けどゼロの模擬戦結果に追いつけないことによる焦りに共感してくれたりすることがないからマリクは時々寂しい気持ちになる。ハルトはそんなマリクの気持ちに気がついているので、自分のスキルを使って助けてあげることに。気を落ち着かせることができるよう、ハルトがふだん実験を受ける前の瞑想の感覚を送ってみる。「こんなになんにも感じないの、初めてかもしれねぇ」「そう、何も考えないの。悲しいことも、気になることも一旦全部受け流すんだよ。気分は?」「良い」「練習したらできるようになるんだけどね。疲れてる時はこうやってスキルで送ってあげる」「......ありがとな」「いいんだ。よく眠れるといいね」そうしてたびたびスキルを使うんだけど、実験で誰かを拷問したりするのを手伝わされてる時よりよっぽどこっちの方がいいやと思ってる。

・フォースとミチ

依頼されて交渉中の某軍事企業の人間たちを殺しにきたフォース。一通り斬ってまわって、逃げようとしてる奴を見つけて攻撃しようとしたらそいつが目の前で倒れる。頭には銃弾を撃ち込まれた痕があり、即死。視線を移した先にはターゲットリストには載っていない顔があった。「お前......」「すみません、いきなり割り込んでしまって。でもどうせ殺すのでしたら同じ、ということにしていただけませんか?」困ったように笑う青年の手には拳銃が握られていた。「俺になんか用か?」フォースが冷静に問いかけると青年は「えぇ。実はあなたとお話したくて。......わたくしの名前はミチといいます。今ここで倒れている人たちに連れられてここに来ました」と自己紹介する。「だが、立場は違う。そういう話か?」「その通り。実を言うとわたくしはこの人たちに囚われていましてね。逃げ出したいんですよ」それなら武器も持っていることだし、さっさと好きに逃げれば良いとフォースは考える。このミチという青年のことをろくに知りもしないのに逃してやってもいいと直感が言っていた。けれどミチの語るところによると他にも逃さなければならない子たちがいて、さらに今すぐに逃げ出すわけにはいかない事情があるらしい。「調べさせたいんですよ。......自分たちに備わった力のことを」「......!」「ご存知でしょう?あなたも。不思議ですね、なぜだかわからないけど......あなたにも"ある"ってすぐに気がつきました」取り入ろうとするというのではなく、妙に親しみをこめて接してくるミチ。「さっきみたいに斬ってやればええんか?タダ働きは......」「あぁ、そうではなく。逃げるだけならわたくしたちの持つスキルでどうとでもなりますから。逃して......ではなく、この先わたくしたちの仲間になってほしい。そう思っています」どうにも話が読めない。フォースは肩をすくめてみせた。「どうも俺に関係ある話とは思えへんけどな」「......わたくしたちは、ただ自由になりたいのではないんです。それじゃあ釣り合いが取れない。まずはこの人たちから命だけじゃなく、全て奪う。それから邪魔なものは全て排除して、欲しいものなら何でも手に入れたいんです。一番上からみんなを見下ろす、そういう自由の方がずっといいじゃないですか。あなたも、この人たちとは違うから......」本心か演技か、少し緊張したような表情で、ミチは次の言葉を探しているようだった。「えぇと、この軍事企業の持つデータ全てを手に入れてそれを使ってビジネスをするつもりです。この人たちがやっていたのよりももっと素晴らしい形でね。わたくしたちは同じ能力を持つもの以外、誰に頼ることもありませんし上手くやれると思うんですよ。けれど......そう、残念ながら長く施設の中に閉じ込められていたので世の中のことをそれほど分かってるとは言えないんです。だからあなたのような方が我々の作るチームには必要なんですよ」「逃げるだけじゃなく、のし上がる......か。おもろいやんけ」フォースはそう言いながら兄弟子であるゴエモンのことを思い出す。今は遠い超東京の地でROWDY SHOGUNという用心棒集団の一員として名をあげているゴエモン。今まで手応えなく、淡々とターゲットを斬ってきたが案外ゴエモンのやり方に倣うことが彼を超えるためには必要なのかもと思えた。「わかった。その話、乗ったで」「......良かった。では、よろしくお願いしますね。フォースさん」名前を名乗った覚えはないが、知られていても大して驚きはしなかった。ミチははめていた黒い手袋を外して右手を差し出した。職業病というか、フォースは無意識にその手を観察する。普通は相手の実力をはかるためにやるのだが、今日はミチの手に無数についた細かい傷跡が気になった。「......死のうとしたことは」思わず問いかけると、ミチは床に血まみれで倒れている男たちを見ながら「まさか。けれどその方がマシと思うようなことは何度も、ね......。だからわたくしは、この人たちのことを憎んでいるんです」と言った。その時の表情は真剣なものだったが、次の瞬間にはまた笑顔になってフォースと握手をするとまた手袋をはめなおした。それから逃走までの間に会う約束をする二人。「外にもう一人いるはずですけれど、それは殺さないでください。わたくしが疑われてしまいます。......よければ、死なない程度にわたくしのことを斬ってもらっても?」「いらんわ、そんなん。見逃したように見えるように上手くやり」「わかりました。それでは、また会いましょうね」「おぅ」フォースはそのまま建物をあとにする。ミチはどうということもないという様子で死体が何体か折り重なっているところに行くと血溜まりに浸かるようにして寝そべった。死体に紛れて死んだふりをしていたら運良く生き残れたとでも言うのが安全だろうと思い、実際にそれで上手くいったのだった。

・義体開発の最終段階 ハンキチとアヤセ

もうすぐマリクが完成するということで、ハンキチはデータ取りだけでなくマリクのメンテナンスに関わるようになる。メンテナンスのたびにマリクは模擬戦の結果についてどう思うか、しつこく聞いてきた。「大丈夫だと思うか?」と言うのが、ほとんどマリクの口癖になっているとハンキチは思った。正直なところ、大丈夫かどうかは微妙だった。というのもマリクを作る際に元にしているプロトタイプのデータや、模擬戦の実際の映像を見る限り、マリクは純粋な戦闘技術の面で相当に劣っていると言わざるを得ないからだ。なぜこのプロトタイプをそのまま使わなかったのかと思うレベルで、その実力には開きがあるように見える。プロトタイプの被験体となった男は戦場で身体のほとんどを欠損し、延命の実験も兼ねて義体化手術を受けたと聞いているけれどパーツならいくらでも付け替えればいいのにそうしないでマリクが選ばれた理由は何かとハンキチは考えてみる。プロトタイプの模擬戦に関する報告書によれば、この被験体はターゲットを効率よく殲滅することには長けているものの指示された以上のことーーたとえば追撃によってターゲットを粉々に破壊したりといったことーーがまるでなかったらしい。ならばそれが原因か、となんとなく納得する。そもそも開発者たちは義体に攻撃力だけでなく、自分で考えて行動することを期待している。指示通りにしか動かないのなら手間がかかるし、イレギュラーな事態に対応できずに破壊される可能性すらある。マリクがもともと改造しやすくて健康な身体を持っていたこと以外でプロトタイプより優れているところがあるとするなら戦いに対するやる気くらいだろう。ハンキチとしては、そんなくだらないことは優れているという評価を得るに値しないと言いたかったのだがそういうことを言ってしまうとマリクがとたんに拗ねたような態度をとるのが面倒くさくてあえて言うことはしなかった。模擬戦の結果については誤魔化しようがないからはっきりと伝える。「一応ターゲットは全部破壊したから合格は合格だよ」と伝えたところ、マリクは案の定「けど、すげえとは思わせられてないんだよな?あいつら、そういう反応はしてなかった......」と言って悔しそうな表情を浮かべている。ふだん最強だのなんだの言って騒がしいくせに、大人の顔色をうかがっては不安になっているのが妙だった。「当たり前だよ。全部倒すのにプロトタイプの倍以上かかってるし。そのうえ集中しないから、三発も喰らってる。しかも一箇所は首の近く。模擬戦だから威力調節されてるけど実戦なら死んでるよ、お前」「......前回のスコアは」「大して変わんないよ。武器の威力とか機動力には調整かけたけど、そういう問題じゃないのになぁ。それで僕までごちゃごちゃ言われんの鬱陶しいんだよ」ハンキチが大きなため息をつくので、黙り込むマリク。ただメンテナンスをすればいいと聞いていたので引き受けたが、こう毎回落ち込まれると厄介だった。寄宿舎でも同じ部屋で過ごしてはいるが、お守り役はハルトが引き受けていてそれで上手くいっている。治療やメンテ中は眠らせておいて起きたらハルトを置くわけにはいかないかとかをあれこれ考えたりした。
それからしばらく模擬戦のダメ出しをしていると流石に改善が見られた。というより、これまでゼロの真似をして戦おうとしていたのをやめたら良くなったといったところ。マージスキルを活かしてでたらめに乱射してターゲットを破壊する。相変わらず状況によっては負傷することもあったがそのやり方の方がスコアは格段に上がった。それからマリクのフォローがダルいと思っていたところ、タイミングよくメンテナンスの手伝い要因としてアヤセが研究室にやってきた。賢いとは聞いていたものの、アヤセはずっと並の研究員と同じような作業をしていたので意外に思った。というか、だいたいの研究員はハンキチがやっている複雑な作業について理解すらできないから人を寄越されるの自体本当は反対だった。「ミチから頼まれてる作業があるでしょ。それを進めて......」アヤセはハンキチにそれだけ言うと、マリクのメンテナンス作業に入った。ハンキチはアヤセに対してまだなんの説明もしていないというのに、ファイルにあるデータを見て上手く作業を進めているらしい。パーツ交換や不具合の調査も順調に終了した。それからハンキチが診てやってる時はぎゃあぎゃあ騒ぐマリクが大人しくしている。子守を誰かに押し付けられてラッキーと思うと同時に、人に預けられた途端手がかからなくなってるのをみてなんとなくムカついてるハンキチ。
メンテナンスが終わってから寄宿舎に戻り、ハンキチは「助かった。ていうかさ、僕はけっこう難しいことやってるつもりなんだけど普通に引き継ぎなしでメンテしてたじゃん?なんでもっと重要なことやらせないのか普通に疑問なんだけど」と遠回しに褒めるけど、アヤセは「ハンキチみたいに自分で考えたりとか......できないからかな。スキルも大したことない、し......。今日のはたまたま上手くいっただけかも」とか言ってベッドの上で体育座りして縮こまってる。身体の一部は影と一体化してシーツに沈み込んでるようだった。ハンキチは厄介なのが多いなと思いつつ「あっそ」と呟いてベッドの上で大の字に寝転ぶ。それからまもなく実行する脱出計画のことを考える。こんなに変な人間たち(ハンキチ自身は自分のことを比較的まともだと思ってるけど別にそんなことはない)をよくミチは全員連れて脱出しようとしてるなぁと思いはするものの、ただ逃げるんじゃなくて全部壊して奪っていくという計画は素直に楽しみだった。

・研究施設からの脱出

脱出計画はミチが考えていたよりもずっと上手くいった。そもそも超東京の研究施設に比べてこちらの施設は規模が小さい。超東京の方が頓挫したもののこちらでの違法な研究は継続された。たったそれだけのことだった。ハンキチが済ませていた下準備によって、施設外の人間と連絡を取る手段は断たれていた。あとはマリクがだいたいの敵を破壊して、残りはそれぞれ遭遇することがあったらスキルを使って殺す。そうして難なく組織の外に出た。「ほい。このちっちゃいデバイス一個でとりあえず全部の確認ができるよ。まぁこれが壊れちゃっても別のとこから入って持ち帰ればいいんだけど。武器開発のデータでしょ、こっちが「ゼロ」のデータ、これがマリクの、そんでこっちは僕たちのスキルのことだね」「ありがとうございます。やはり待った甲斐がありましたね」ミチがハンキチの集めてきたデータを確認していると、マリクが声をかける。「なぁ、まだ生体反応あんだけどどうするよ?閉じ込めてはいるけど放っとくのか?」ミチは笑って首を横に振った。「いいえ。言ったでしょう、全員殺して全て奪うって。......こうするんです」ミチはカッターナイフを取り出すとスキルを発動させ、巨大な炎の刃を躊躇なく研究施設めがけて振り下ろした。施設は炎の渦に呑まれて崩壊する。「ぎゃははっ!!躊躇ねぇなぁ、おい!マジで一瞬!もう今ので全員死んだぞ」マリクは施設のあった場所、もはや更地となった空間に向かって笑いながら手を振ってみせた。ハルトは変わらず穏やかな表情で「良かったよね。自業自得だもん」と言っている。アヤセは今日も虚ろな表情であたりに煙がたちこめるのを黙って眺めていた。「ん、時間通りやな。そんで派手にやったな」事前に取り決めていた通り、フォースが姿を現す。「けれどわたくしたちがやったという証拠は何一つありませんから、良いんです。取り返したいものは全部揃いましたし。施設だけは再利用しようかとも思いましたが、今どき一から作っても大した負担にはなりませんからね」「まぁ、好きにしい。......そんで、こっちはお前が言うとった仲間やな?俺はフォース。よろしゅう頼むわ」フォースの挨拶に対してハルトは笑顔で「僕はハルト。感情をマージするスキル使い......。よろしくお願いします」と答えた。マリクは「よぉ、よろしくな!新入り!わかんねぇことあったらマリク様が教えてやんよ!」などと言うので、ハンキチから「初対面の態度じゃないって。怖すぎるんだけど」とか言われてる。「僕はハンキチ。スキルは、ネットワークと肉体のマージ。お兄さんは、位置情報のマージだから、移動が便利なのは似てるかもねー」と、ハンキチもまあまあなれなれしい挨拶。アヤセは、「アヤセです。スキルは影とのマージ......です」と呟くように言ってぎこちなくお辞儀のような仕草をした。
そんな風にして始まったけれど一緒に過ごすうちにだんだんとまとまりが出てくるやつ。

・ヴィーの合流

ヴィーはスキルを得て以降、独自にスキル使いの噂を収集しており、超東京で複数のスキル使いらしき人間が観測されたことを受けて超バンコクにも自分と同じようなスキル使いがいるのではないかと考えるようになる。それから超バンコクのあちこちに出かけていって観察を続けていたところ、とある若者たちのグループの中にスキル使いらしき人物を発見する。黒髪で色の白い肌をしたその青年はグループの最後方におり、足元の影が奇妙に揺れている。というか蠢いているようで、その中に青年の足がたびたび沈み込んでいるように見えた。
それから彼らのことをしばらく調査して、DBPの拠点に赴くヴィー。自分のスキルを明かし、やってみせたうえでみんなのスキルのことを聞かせてほしいと申し出る。
「私はヴィンス・P。意識合成のスキル使いだ。私は独自にこのスキルというものについて調べていてね。実に興味深い。初めはそこの彼だけがスキル使いなのかと思っていたが......まさか全員とはね。素晴らしい」「それで、わたくしたちのことを知ってどうしようと言うのです?戦いたい、という風には見えませんが」「もちろんそんな気はないさ。ただこの力のことを知れば、私自身の能力を高められるかもしれない。今以上に操れる対象が増えるか、あるいは精度を高めることができるか......。純粋に興味があるのさ」「なるほどね。わたくしたちのスキルはビジネスのための武器です。あなたにお話しすることで何かメリットがあるというのなら考えましょう」「......私の力を君たちのビジネスに役立ててもらう、というのではどうだろう?」ヴィーはDBPの仲間になるかどうかは正直どちらでも良かったけれど、DBPがスキルでやっていること自体には興味があった。スキル使いの動向やら、新しい武器の需要についていくつかの提案をし、ビジネスパートナーとしてDBPに受け入れられる。

・ヴィーとアヤセ

DBPに入ってまもなく、ヴィーは廊下の隅っこで影の中に沈んでいるアヤセに声をかける。
「やぁ。......この間はすまなかった」「なんのこと?」ずるりと影から抜け出てアヤセが問いかける。「君を街で見かけてスキル使いだと気づいたと言ったことさ。君の立場を危うくするかもしれないことを軽率に言ってしまったからね。謝っておこうと思って」「別に......。そもそも僕は何も期待されてないから。みんなに連れ出してもらっただけ。......ミチがあなたのこと、気に入ったみたい。良かったね」アヤセが再び影に沈もうとするのをヴィーは腕を掴んで止めた。「まだ何か......」「あぁ。君はそのように言うけれどね。君自身も、そのスキルも、とても素晴らしい。姿を消すことができ、機動性にも優れている。君が触れさえすれば影に沈み込ませることも床に叩きつけることもできる。さらに君は賢く、様々な武器を扱える。絶対に戦いたくない相手だ」「けど......本当に役に立たないんだ。攻撃ならマリク一人で足りるくらいだし」「ならば、そのスキルで私のことを助けてほしい。操る駒に限りはないが、駒を退けて私自身に接近された時にはもうなす術がないからね。どうだろうか?」アヤセは闇夜のような瞳でヴィーを見つめる。「......分かった。あなたのことを......守る、よ」「ありがとう、アヤセ」「......僕の方こそ......見つけてくれてありがとう」それからぎこちなく笑うと、今度は影の中に消えていかずにヴィーの隣に立った。

こんな流れでチームができて、それからしばらくしてヴィーがイヌイとの案件をまとめてきて本編5巻へ続くみたいなイメージ。様々に辛い過去があって集まっただとジギボとちょっと似過ぎてるかなみたいなところがあったので、同じトラウマ抱え系のメンバーもいてもいいのかなと。

本編気になるところなど

5巻の中で気になるところ、掘り下げあってほしいところについて。まずはマリクとハルト、ヴィーとアヤセ、フォースとミチ、そしてハンキチという配置がめちゃくちゃ良い。わりとバトルメインだったり敵とのやり取りがメインだったりでチーム内のやり取り少なめだったけどマリクがハルトのことを戦友と思ってたり、アヤセがヴィーの守護者だったりと気になることが多すぎる。サイキック履修中なので、メンバー同士のことがもっと詳しく分かってるとより楽しいんだろうなぁ。曲は聴いてるのですが、まだまだですね......。『HABANERO』のMVだとみんな楽しくカードゲームしてたりするけど(これとジギパ好き過ぎて毎日聴いてる人)ふだんあんな感じなのかな。このMVにおいてミチさんが治安悪仕草なのとアヤセが元気いっぱいなことのファンです。ハルトの戦闘シーンとか気がついたら相打ちだったから、次は詳しく見れるといいな。読み飛ばしたかと思った。でもマリクがちゃんとハルトを拾って帰ってるところが可愛かったのでよしとします。
スキルのことももっと知りたい。特にミチさんのスキルについてはテメェで考えなさいと言われてしまったのでテメェで考えてるのですが、なんでもクソデカブレードに変えられるのか、それとも特定武器があのブレードになるのか、他の武器を他の形状に強化して使うこともできるのか(たとえばハンドガンを大砲級の威力の武器に変えたり、ピコピコハンマーを10tハンマーに変えたりできるのかみたいなこと)などが気になっています。あと武器が炎を纏ってるからスキルの発動時と解除時に強烈な閃光が走るのを目眩しに利用したのは分かるんだけどものすごい逃げ足の速さでは?どう逃げたのかがわからないからマジで全力ダッシュとかだったら面白いね。
ヴィーも駒を使って足止めして逃げてたけど、あそこまで綺麗に姿を消せるものだろうかと考えると、アヤセが自分で定めた対象も自分と一緒に影に呑み込ませることができるとかなのかもしれない。いざとなったらヴィーを連れて逃げられるスキル。
同じくフォースの弾丸ワープも、位置情報の合成は自分の分しかできないのか教えてほしい。それ次第でみんなの移動が便利になるかどうかが変わってくる。
マリクのマージ、あらかじめ武器を四次元ポケットみたいにたくさんしまっててそれを好きに取り出して好きな位置から撃ったりできるイメージでいるけどそれでいいんだろうか。コピースキルとは違うから一応弾切れ的なことはあるんじゃないかなと思ってる。ただいくらでも積めるからほぼ無限みたいなとこはあるけど。
ハンキチが拳で勝負になると激弱なの解釈一致すぎる。あんまり外出たがらなくて文句言うとかだと良いな。この先どういうバトルになるのか。ハンキチとアヤセ相手にもぐら叩きみたいになったりしないかな。
他のチームと違って一緒にお仕事してるチームだから役割分担がわりとしっかりしてて良い。イヌイとコンタクト取ってるのがマリクだったのは意外だったけどちゃんと仕事してて偉かった。(甘やかし)クライアントとのやり取りとか、商品の売り込みとかそれぞれきっちりやってるのが好きだから今後もお仕事シーンあって欲しいな。あと絶対書かれないけど事務処理とかちゃんとしてんのかと思うと微笑ましい。闇の武器商人でも交通費申請とかできんのかな?
とにかくDBPはヴィランとして非常に魅力的なので、このまましばらくヴィランしてもらいたさがありますね。マリクはゼロのとこにだけ押しかけてくるので、そのうち「また来たのか、最新型」って言われるようになってしまいそう。マッジェもちゃんと拠点の場所隠して神出鬼没の怪盗集団してるのになぜか居場所突き止めてバトル申し込んでくる感じ。ミチさんがリュカにやり返すところ見たいから強くなって帰ってきてほしいです。痛がり方が本当に痛そうで面白いミチさん......。ヴィーとアヤセもまだ連携の奥の手隠してそうって期待をしてしまう。でもアヤセがのびちゃった時にヴィーは操ったりとかしなかったからやっぱり仲良しなんだと思います。ここは固定でこの組み合わせで動くので全然アリ。
知りたいことが多すぎるから終わらないでBOT。あとDBPも入れた設定資料集ください。

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