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山にもらったこと 「それぞれの生きる場所」〜高山の動・植物編〜

もう何年前だろう。
北アルプスのある山小屋で見た古いポスターに、ドキっとしたことがある。コマクサの花の写真に「ここでしか生きられない命です。」というキャッチコピー。可憐な様相なのに、環境の厳しい高山帯の、中でも他の植物が生えることができない砂礫地に咲く花、コマクサ。その孤高な姿から「高山植物の女王」と称されている。

岩手山のコマクサ

地上に出ている姿は10cmほどだけど、地下では茎や根を1m以上伸ばして、環境に耐えられる力を蓄えているらしい。山の植物に無闇に手をかける人はいないと思うけど、そのポスターは「やめてください」と訴えている。手折る以前に、そもそも我々登山者が花たちの周りの土を踏みしめること自体が、花の生きる環境を荒らしているんだと、改めて自覚した「ドキっ」だった。

それでも、山に登る楽しみは、そこでしか見られない植物や動物たちと出会いにもあるから・・と言いつつクマの存在には怯えて、チリンチリンと耳障りな鈴を鳴らしまくるのだから、人間ってほんと勝手極まりないなあ・・。

身勝手な行動で山を傷つけてはいけない。注意を払いながら歩いていると、山の守り神たちは、時々その姿を見せてくれる。クマには申し訳ないけど、山で出会うと歓喜の声が上がる動物その1が「雷鳥」。氷河期からの貴重な生き残りらしくて、日本では日本アルプスの一部、森林限界を超えた高山のハイマツ林にしか棲んでいない、特別天然記念物。

白馬岳で出会った親子。

初夏の頃には、母鳥と一緒に雛鳥たちと出会えることもあって、そりゃもう感動感激。驚かさないよう必死に声を潜めて、シャッターを押しまくる。
羽が保護色で、夏は褐色、冬は白にと変化する彼ら。全身純白の姿に会うには、厳冬期に山に入らなきゃならないので無理だけど、残雪の頃に立山などに行くと、まだ白羽が残る姿を見せてくれることも。

@立山・雄山

曇り空の時に出てくることが多いから、天気がイマイチでもワクワクさせてくれるありがたい存在。

歓声動物その2は、オコジョ。イタチ科で尻尾を除くと全長20センチ足らずの小動物で、なんとも可愛らしくなんともすばしっこい。いた!と思った瞬間もういない。奇跡の1枚を撮るのために、見つけると連写しまくりっ。

薬師岳で見つけた!

彼らも雷鳥同様に保護色を持っていて、冬は純白の毛に。

悶絶級の可愛らしさ!@恵那山

こんなにも愛くるしいのに、実は彼ら獰猛且つ肉食らしく、なんとあの雷鳥の雛鳥たちをガツガツと・・!前出の雷鳥親子の写真、本当は雛たち、もっとたくさんいるはずなんだけど2羽である理由は、そういうことなのです。

高山植物でいうと、コマクサも愛おしいけれど、私はチングルマの花が一番好きで。この花、一見草花系のようだけど、実はバラ科の低木らしい。

秋田駒ケ岳、通称ムーミン谷。

チングルマという名は「稚児の風車」という意味らしく、その由来は花が終わった後の、この姿から来ているかと・・。

@五色ヶ原

花の時と全く様相が違う!一体あの白い花のどこから、この綿毛が出てくるのか??変化する過程を見てみたいくらい。花の時のチングルマも好きだけど、綿毛になってからも、ゆらゆらと優しくて愛らしい。登山で苦しい時、この花にはいつも勇気づけられるのです。

つい最近出会った高山植物で感動したのが、サンカヨウ。雨に濡れるとガラス細工のような透明になる、という不思議な花で、生でその姿をみたのは初めて!(これはまだ途中ですが・・ )

@八幡平

雨を待ちたくなるような、魅惑の花です。

それぞれの場所で、それぞれ懸命に生きる、山の動物、植物たち。
その領域にお邪魔し、たくさんの勇気や感動をもらっている私は、自分の場所で、ちゃんと生きられているのかな・・・ドキっとさせらてしまう。

そういえば去年の初冬、立山を下山して、ふもと集落の温泉に行った時のこと。露天に出たら、先に入っていた皆が固唾を飲んで何かをみている。目をやるとそこに・・

なんと、特別天然記念物の日本カモシカが!岩の上に優雅に横座りして、女性風呂をじいっっと、ガン見。作りもの?仕込み??と思うくらい、微動だにせず、いつまでもいつまでも見ている。絶対オスだよね、おばちゃんばっかでごめんね。と皆で苦笑。

人里に降りてきて暮らしを脅かす動物もいるようだけど(それも先に人間が動物の環境に侵入してしまった結果かと)いいよね、こういう珍客なら!

@2020ー2023初夏 色々な山
※温泉内からの写真は、入浴している人全員に許可をもらって撮りました。







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