山にもらったこと 「標高2,864mの登山口から見えた、日常という風景」 〜ヒマラヤ山行篇③カトマンズ→ルクラ→モンジョ→ナムチェバザール〜
カトマンズを後にすると、まずは、世界で最も危険な空港と言われる「テンジン・ヒラリー」空港への飛行。エベレスト街道の入り口である街「ルクラ」に入るためです。この空港、なんと標高2864m(八ヶ岳最高峰の赤岳とほぼ同じ!)、滑走路わずか527m(プロペラ機でも最低1000m必要なのに!且つ斜度付き!)という、世界一事故が多いとも言われる恐ろしい名所。
アドベンチャーガイズの山行メンバーは、エベレスト隊・ロブチェピーク隊・カラパタール隊とガイドを含む全30名。(後から合流する人も合わせて)。3班に分かれて搭乗、私は最後の班5名でヘリに乗ることになり、ヘリなら滑走路は使わないわ、と安心していたのですが・・それにも匹敵する恐ろしいことが。前の2便で荷物が積み切れておらず、我々のヘリに残りの荷物がぎゅうぎゅうに押し込まれ、人間はわずかな隙間に入り込む、という!
やっとの思いで着陸すると、カトマンズとは打って変わった気温の低さにびっくり。本当に3000m近い所にあるんだ、と実感。
ルクラの街は、この空港の存在のためだけに拓かれた、ささやかな佇まい。小さなホテルやカフェ、ATMもあるけれど、メインストリートはおそらく全長200mにも満たない。そしてこの街が、ヒマラヤの多くの山々への登山口となリます。この日は早々にここを後にし、一泊目の村モンジョへ。
歩き始めは、登山というより長いウォーキング。徐々に高度順応していくために、緩斜面をゆっくりと登り降りしていきます。
昼食のためカフェで休憩していると、傍を我々の荷物を背負ったゾッキョの群れが過ぎて行き・・
荷物は動物かポーターさんが運んでくれるからルンルン山行だよ、と近藤さんから聞いてはいたけれど、健気なゾッキョくんの姿を初めて目の当たりにして、なんだかうるうるしてしまった私。
途中、鮮やかな色の花をつける大木をいくつも見かけて、聞くと石楠花なんだとか。日本の石楠花とはぜんぜん違ってとてもダイナミック。
出発から約7時間、モンジョ村のゲートに。この日はここのロッジに宿泊です。
翌朝は7時頃出発。すると、昨日着いた時には見えなかった、巨大な岩山が目前に!皆「エベレスト?」「エベレスト?!」と口々に。まだまだ見えるわけないのに、聳える山を見るとどれもエべレストかと思っちゃう。苦笑。
ここから先はいくつもの吊り橋を渡って、高度を上げていき・・
やがて、エベレスト街道最大の街、ナムチェバザール(3440m)へ。目を見張りました。山の斜面を利用して切り開かれた、広大な街並み。立ち並ぶリゾートホテルの一角はヨーロッパの避暑地を思わせるような風情。カフェやショップが立ちならぶ路地が四方に伸びる、まさに一大バザール。
けれど、そのゲートのすぐ横で、街の演出として流れる水が落ちる場所?を利用して洗濯に勤しむ人々。
興醒め?いえいえ。ここが、エベレストを観たい人たち、エベレストに登りたい人たちがいるからできた街ではあるのは確かだけれど、決して旅行者たちのモノではなくて、それを迎えることを含め、ここで生きる人たちの生活の場であることを、しっかりと見せてもらい、その逞しさに触れて、なんだか楽しい気持ちにさえなったのでした。
街びとたちの生の姿を見たことで満ち足りた私は、街の散策はせずに、美容院で髪を洗ってもらって、スッキリ。
まだまだ序盤、この先の山行に思いを馳せて。(続く)
2024 /04/12-13
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?