「リフォーム」　笑話　その３１

ある冬晴れの日

業者：どうです、ご家族の皆さん、さ、さ、中に入って、あ、いけない、ここは皆さんのお家でしたな、ハハハ

嫁：わ～、見違えるほどですね、パパ、凄いわね

夫：あ～、スゴいスタイリッシュだな、大幅に変えましたね？

業者：いえいえ、ご家族の住みやすさ、そして、旧家屋の名残も、考慮しております

息子：あ～パパ！この柱！僕の身長が刻んである！

業者：坊っちゃん、よく気がつきましたね

夫：この柱を家屋の真ん中にもってきてくれるなんて…この柱は、思い出がつまった柱、残していただいて、本当にありがとうございました…匠…本当にいるんですね

息子：匠～！匠～！

業者：いえいえ、私どもはお客様ご家族の住みやすさだけでなく、心の通ったサービスを心がけておりますので、この柱は大黒柱、これからもこの家に必要ですもんね

嫁：感動…ありがたいわぁ…あと平屋ですきま風が入って寒かったのに、窓のサッシも密閉式、結露が出ないように窓が二層式で真空になってる！…建築界の猛者…

息子：猛者～！猛者～！

業者：へぇ、窓も天窓で採光しやすいので昼間でも明るいですよ、

夫：本当に、冬はいつも寒くて暖房が大変だったんですよ…ありがとうございます

業者：そう言っていただきますと、リフォーム冥利につきますね、お値段もお客様ご家族のご予算内に収めておりますので、そこも大丈夫です

息子：ママ、これスゴいよ！ここを押すと！ほら！

嫁：わ～、スゴい…ケンタの勉強机が壁に埋め込みですか…スゴい発想、毎日、このボタン押すのが楽しみね、ケンタ？…本当にいるんですね…もう翁と呼ばせてください

息子：パパ！ママ！勉強が楽しくできそうだよ
翁～！翁～！

夫：業者さん、さっきから気になっているんですけど、部屋の暖房はきっていますよね？なんでこんなに暖かいんですか？

嫁：外は真冬日なのに、さっきからポカポカ、足元から、あ、床暖房！ですか？

業者：うちは、床暖房に定評がありますので、ですがご予算内に収めないといけないのでひとくふうをさせていただきました

夫：ママ、そうなんだよ。床暖房の改装工事すると300万上乗せしちゃうんだよでも、こんなに暖かい
…そそりたつデカチンポ…もうそう呼ばせてください

息子：デカチンポ～！デカチンポ～！

業者：ま、否定はしませんけど、先日もソープで泡姫の華恋ちゃんに、、あ！ゴホン…え～では！床暖房の立て役者をお見せしますね？はい

バタン(床板をめくる音)

嫁：な、なに？…なんなの…ツンッとくる…匂い

夫：これは、いったい、

息子：おじさんたちがいっぱい…

業者：床下に路上生活されてるかたに、家賃タダで貸すことで路上生活されてるかたの体温で床暖房をまかなっておるんです、はい。あ、匂いですか？それはもちろん、上にあがってこないようにしてございますのでご安心を、出来るだけ低予算ということでしたので、ただ、夏場については、、、ゴホン、、

夫：大丈夫ですか？月々の暖房費かからないんですか

業者：は～い、タダです
彼らも私どももご家族もみんなハッピー、win-winですな、ハハハ

ホームレス：ムブォ～

業者：音も漏れないのでそこもご安心ください。

嫁：いいのかしら、何人いるんですか？うごめいててよくわからないわ

業者：えっと、現在は～、はい、８名ほど在籍されてますね、

嫁：そ、そんなに…

息子：1、2、3、4、5、6、7、8、9、あれ？9人だよ！ねぇ8人じゃないよ、おじさん！

業者：あれ？おかしいなぁ、田野倉さん、シゲ、浅原氏、ヤッチン、ヒカル、道成寺さん、カニ星人、あれこの人？誰？

うごめいている老人：むにゃむにゃ

家族全員：あ！おじいちゃん！

息子：じいじ！

業者：えぇ？

夫：うちの父です、元刑事やってた、元デカ父です

息子：デカチチ～！デカチチ～！

業者：…どっから、入っちゃったんだろう、すみません。

夫：おじいちゃん！起きて！早く、上にあがってきて！

おじいちゃん：うん、、むにゃむにゃ…は！わ～！婆さんは何処じゃ！？わしは地獄に堕ちてしもうた！ひゃ～助けてくれ～！

業者：ロープ垂らして、釣り上げましょう、あ、あそこのガムテープをロープにして！

家族全員：おじいちゃん！垂らすよ、とってね？

おじいちゃん：天国の神様かい？どうか、よろしゅうおたのもうします～

嫁：完全にボケてる…

パランッ

床下のホームレスたち、：わ～！食いもんじゃ！

夫：おじいちゃん！早くつかまって！

おじいちゃん：はい！イエス様！ありがたやぁ、なにする！邪魔だ！は！はなせ！はなさんか！

ホームレス：ムブォ～

家族と業者：掴んだぁ？引っ張るよぉ～せ～の！わっせ！わっせ！わっせ！

通りから、新築家屋から音が聞こえ近づいて窓から部屋を覗く
芥川龍之介を知らない、小説家志望の大学生：む…なんだ、…これは！これは！いい題材になるぞ！うんうん、大ヒット間違いなし！題名は、う～ん、そうだなぁ、「天国から垂らすよ、ロープ」…違うな…えっと、えっと！あ！これしかない！「蜘蛛の糸」！わ！興奮して立ってきちゃった！、早く帰って執筆じゃ～～～！フォー！ロックンロール！ひゃっは～！

家族と業者：こんどは、カーテン投げますよぉ？イッチニのサーン！ほ～れ

せ～の！わっせ！わっせ！わっせ！…

OH神様仏様壇蜜様～お恵みを～

むぶぉぉぁあぉお～

――完ーー