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ドレスデンのアルテマイスター
ドイツはザクセン州の州都、ドレスデン。
ザクセン州はかつてあったザクセン王国と一致しており、旧市街には、宮殿や王宮が残されている。
とはいっても、ドレスデンは、ドレスデン爆撃という類を見ないほどの大空襲を経験しており、一度は焦土となった。捕虜として空襲を経験したSF作家のカート・ヴォネガット・ジュニアは、その体験を『スローターハウス5』で記している。
当然、宮殿や王宮も無事では済まされなかったわけだけど、戦後、爆撃前の資料を参考に、残された瓦礫を用いながら再建され今に伝わる。
だから、建物は焼けこげた跡の黒が目立ち、異様な雰囲気を醸し出している。正直にいって、ものすごくかっこいい。
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宮殿は、今はいくつかの美術館として利用されてある。その中の目玉ともいえるのが、アルテマイスター(Alte Meister)。今回の訪問の目的もまさしくこいつだ。ザクセン王国の集めた、古典絵画の傑作が収蔵されている。
ラファエロの最高傑作の一つにも数えられる『システィーナの聖母』が目玉とされている。
美術館は、地下、0階、1階、2階の4フロアで構成されており、メインの絵画は1階で主に展示されている。
『システィーナの聖母』は、正直はめられたガラスに照明が反射して見づらい。また、想像以上に大きく、そもそも高めの位置に置いてあるため、上の方はどうにも見えづらい。
ただ、細部から全体まで隙がないのは伝わってくる。全体の調和の取れた構図、人体のプロポーション、ポーズ、そして細部の質感、塗りに至るまで、非の打ち所がない。それは、他の同時期の絵画と見比べると、私のような素人にも一目瞭然だった。
ここまで完璧だと、あっぱれというか、流石に感動せざるを得ない。
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他には、ルーカス・クラーナハのコレクション。ザクセン王国の宮廷画家だったクラーナハは、デューラーと並ぶ、ドイツのルネサンスを代表する画家の一人。
世界史の教科書に必ず載っている、ルターの肖像画や、西洋絵画には珍しい、ロリ系の少女の絵画などが有名。
個人的に面白かったのが、この楽園追放を描いた絵画。
一つの画面に、複数の場面を描くことで、物語を伝えているが、そんなことよりも、下半分の動物たちがすごく気になる。解説を見ると、動物はそれぞれ罪のアトリビュートになっているらしい。それにしても、色々と強引すぎないかと、現代人の視点から見ると思うけど。
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他にも、ヴェネツィアのティツィアーノやティントレット、ジョルジョーネやオランダのレンブラントやフェルメールなど、名画が盛りだくさんだった。
話によると、カントやヘーゲルなど、ドイツ観念論の哲学者は、この美術館を参照して、美学を構築したらしい。当然、一つの美術館には作品の偏りがあり、その偏りが反映されているだとか。
アルテマイスターは、Alte、英語でいうoldとつくように、古典絵画が中心で、19世紀のロマン主義からそれ以降については、歩いて10分ほどのアルベルティウムで展示されている。そちらも訪れたので、気が向いたら訪問記を書きたい。
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