「いろんな風-ローカル鉄道演劇のうた-」

今まで僕が作ってきた作品を紹介してみたいと思います。
買ってください、というか知ってほしい!って思いで書いてみます。

* * *

「実際に走るローカル線の車内で演劇を行う」
・・それって楽しそう。だけどできるのか!?

できました。しかもとても素晴らしい作品でした。
僕の役割は列車の中で生演奏、しかもマイクとかアンプ一切なしの生声生音で歌ったり演奏したりするというもの。僕は個人的に、そのものづくりのプロセスに見入っていました。

どこまで語ってよいものか迷いましたが、なかなか刺激的な経験でしたので、ここで書かせてもらおうと思います(劇団のみなさま、まずかったらご指摘ください)。

演劇のチームでのものづくりは面白くて、まず完璧に仕組まれた脚本を軸に、役者さんそれぞれの特性を活かした協業で成り立っています。読み合わせで全体設計を把握したあと、分割されたセクションごとにチェックを行っていきます。

会話というか、動きや表情、無音を含めた感情のキャッチボールです。バンドのアンサンブルにも近いですね。なのでスタジオ、というか稽古場に入るとウォーミングアップとして実際のボールを使った「キャッチボール」が行われます。

同じ空間なのに、時が戻ったり進んだりします。いない人がいることになっていたり。そういう設定を(僕みたいに一人でなく)共有しながら、数十回という稽古を経て、餅をこねるように1つのかたまりにしていくのです。

走る列車は客席であり、舞台装置であり、照明であり、音響であり小道具でもありました。本当におもしろい。
となりの座席に役者さんが座ったり、向かい合わせで喋ったり、駅で降りたり乗ったり、置いていったり。トンネルに入って真っ暗になったり、開いたドアから聞こえる音が良き環境音(そのままですが)になっていたり。そして、列車ならではのイレギュラーもよきスパイスに。時間通りにいかなかったり。風雨の影響があったり。それはそれで1回きりの「演出」なんですよね。往路で到着した街を実際に歩いてヒントを集め、復路につなげる。街歩きもお店や史跡をたどる沢山の趣向が凝らされ、気づけば街を身近に感じている。
この辺も計算されつくした脚本の緑川さんの天才っぷり。優しそうに見えてダメなものはダメと押し切る鬼っぷり。そして全部を包む愛。

僕の役名は「いろんな風」と脚本に記されていました。
確かにな・・色んな思いを乗せた、空気というか風みたいな存在です。

列車内ではセリフに合わせてBGMを奏でたり、役者さんの思いを代弁して歌ったり、役者さんと一緒に歌ったり、オープニングで一気に作品の世界に引き込んだり、場面の区切りですっきりと元の世界に戻したりしました。

惜しむらくは、演劇はアーカイブが難しい「体験」であること。その時その場にいないと世界を共有できない。少しでも思い出すことができるように形にしたのが今回の作品。2018年につくりました。

過去に経験した3つのローカル鉄道演劇
どれもこの作品のために書き下ろした楽曲です。

劇団シアターキューブリック主宰
「樽見鉄道スリーナイン」2014年
https://qublic.net/tarumi999/
M1 水色 空の色
M2 イラストマップ
M3 私の街

「ことでんスリーナイン」2015年
https://qublic.net/kotoden999/
M4 トンボの瞳
M5 秘密の庭
M6 旅するように時は巡る

「ひたちなか海浜鉄道スリーナイン」2015・2016年
https://qublic.net/hitachinaka999/
M7 潮騒
M8 海のかけら
M9 旅するように時は巡る(春)

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「いろんな風 -ローカル鉄道演劇のうた-」
TAKUworks/FLY HIGH RECORDS

全作詞・作曲:オオゼキタク
編曲:M1~3 ジミー岩崎, M4~8 岩瀬聡志,
M9 オオゼキタク(ひたちなか海浜鉄道・キハ205車内にて収録)

【劇団シアターキューブリックHP】
http://www.qublic.net/

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