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最近 ぽつぽつ

夏が嫌い。燃えるように熱いからだの中の温度と、太陽にあたためられた湯気のような外気がふれ合って、混じり合い、その瞬間、からだの内側と外側の境目がなくなって、ドロっと溶けだしてしまいそうな感覚になる。炎天下の中歩きながら食べるセブンティーンアイスが突然ドロっと溶けだすように、わたしがわたしの形を保てなくなって、スライムのように溶けて、長い時をかけて蒸発していく。

冬は良い。外のパキッとした空気と体内の血のあたたかさが混じり合うことはない。その分、自分の輪郭をはっきりと感じることができる。肌が痛いほど冷たい空気に不思議と嫌悪感が無いのは、身体の内側に侵入される心配が無い安心からかもしれない。身体が芯まで冷えてしまったら、ずっしりとしたアウターを着てふわふわのマフラーを巻いて、そうやって自分を包めばどうにかなる。冬が恋しい。私が夏の空気に溶けだしてしまう前に、冬に逃避行させて。



漢検準一級に合格してから、自分が漢字を間違うことが許せなくなった。文章を読み上げる時に、読み方が間違っていないかやけに緊張する。日記をつける時、漢字を間違えて修正テープを引く一瞬の作業に自己嫌悪する。
資格って、「ある一定の能力があることを他者に提示するもの」であると同時に、「ある一定の能力を常に、最低限身に付けていなければならない」っていう呪いでもあるんだな、と思った。資格を取ることをゴールにすることの危うさと、継続的な知の探求の大切さが身に染みた。

漢検準一級に挑戦して良かったことは、「私って、やればできるじゃん」という気持ちを取り戻せたこと。自己肯定感の回復。治療。これからも自分で自分を治療していけたら。



昨日カフェに入って、あまりにお腹が空いてたから普段めったに頼まないご飯ものを食べることにした。3つのラインナップからわたしはドリアを頼んで、店員さんに促されるままスープセットにした。お値段は1450円。たか.........と口から漏れそうになる声を必死に抑えてお会計を済ませる。

暫く経っても、高いなあ.........という思考が頭から離れない。昔からそうだった。浪費をしたくなくて、常に節制を強いた。自分にも、母親にさえ。小学校高学年からあまり本を買わなくなったのは、お小遣いが勿体ないからだったっけ。あの頃わたしは何にお金を使っていたんだろう。もっと本を読んでいれば、お金以上の出会いや喜びを経験していたかもしれないのに。あの頃とちっとも変わってない、せかせかしているわたし。ケチであることは、心の貧しさと地続きなのかもしれない。
カフェで食べたドリアとスープはうっとりしてしまうほど美味しくて、21時までバイト中の私の胃袋をあたため続けた。

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