二次元の推しが解雇されそうな話

(2020/02/04にぷらいべったーにあげていたものに加筆・修正をしてこちらへ持ってきました)

 バーチャル故郷を概念的村焼き(※ https://note.com/oouki_mo/n/na5be11842aaa )され、「村を焼かれたエルフってこんな気持ちになるんだなあ」と一生知りたくなかった気持ちを味わった数ヵ月後。
 もう二度と二次元の男には手を出すまいと固く誓った数ヵ月後。

 私は【ブラックスター ーTheater Starlessー 】に手を出していた。
 堅い覚悟も何のその、二次元の男から離れられなかったわけである。何しろReadyyy!がサ終した穴が大きすぎた。これは早急に心の穴を埋めないとマジで空っぽになるぞと本能がわたしに囁いていた。取り敢えず概念的な“推し”を他に作れと。

 そんなわけでブラックスター(※以下ブラスタと表記する)を私はいそいそとインストールした。公式サイト【 https://blackstar-ts.jp/ 】をみてみればお分かりいただけると思うが、これ、バリバリのゴリッゴリにその……治安が悪そうなゲームである。出来るだけ穏便な言葉を選ぼうと思ったがこれが限界だ。とにかく治安が悪そうだ。

 何しろ公式キャッチコピーが“登場人物、全員ワルメン。”とのこと。キャラのビジュアルも見て分かるとおり、オラつきっぷりが半端ない。女性向けゲームをプレイしてきたことは片手で数える程度しかないが、多分こんなにアンダーグラウンドで治安の悪そうなオラついたメンツが揃うゲームはこれしかないんじゃないか、と思う。

 何しろキャッチコピーが“登場人物、全員ワルメン。”だ。今なら十連ガチャで★4一体確定!とかそんなチャチなもんじゃない。確定で登場人物全員がワルメン。インストールで登場人物全員ワルメン確定。ワルメン恒常ガチャ。ピックアップどころの話じゃない。ワルメンに飢えた人間にはこの上ないワルメンパラダイスなのは明白。

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 スタート画面からしてこれ。これですよ。
 有刺鉄線が張り巡らされる時点で治安については言わずもがなだ。良いわけがない。だって有刺鉄線だもの。

 今まではキラキラした男子高校生をアイドルに育てるという青春真っ只中の爽やかなゲームをしていたというのに、何をトチ狂ったのか──。私はギラギラしたワルメンが跳梁跋扈するオラついたリズムゲームに手を出してしまったのだ。青春とは真逆だ。不味い方向に突っ走ってしまった。どう見てもタバコと酒の匂いがする。キラキラした高校生アイドルで空いた穴をギラギラしたワルメンで埋めることになろうとは。

 いや、でも。でもね。こんな人物紹介があったら気になっちゃうでしょうが……!!

https://youtu.be/wJ6RXhW00bU

 “実家は京都”のこんなかわいい成人男性も!!!

https://youtu.be/9X-n6v8r4E8

 “カラスが挨拶をしてくれる”おじさんも!!!!

https://youtu.be/oUrd90oW2NE

 “普段はメガネ”の堕ちたアイドルも!!!!!

 皆ワルメンなんですよ!?!?実家は京都でも!!!カラスに挨拶されてても!!!普段はメガネでも!!!みんなワルメン!!!!!
 冷静になるとカラスに挨拶されるワルメンて何?ゴミ出しの前日にゴミだしちゃうとかそういう系のワルさ?わからん。

 もう何のこっちゃ。もう何もわからねえ。カッコいいセリフとか趣味とかそういうんでもなくこういうトンチキな情報を繰り出されて何が分かるというんだ。これが公式で出てるのがもうわからん。な~~んもわからん。オモシロなことしかわからん。

 人物紹介にひとしきり笑ったあと、私は躊躇いなくいそいそブラスタをインストールし、その治安の悪さと概念的な新宿歌舞伎町っぷりにまた笑ってしまった。いやもう、なんだこれ?バーチャルホストクラブ?リズムゲームなのに?そこかしこに突っ込みどころがあってキラキラしてんの。リズムゲームってこういう感じなの?(リズムゲームをプレイしたのはブラスタが二回目のド初心者です)

 どことなくトンチキな雰囲気の漂うワルメンオラつきリズムゲーム。リズムゲーム初心者ということもあり、正直続けられるか分からなかった。元々リズム感もなく、体育の授業のダンスでは体育教師直々に「無理しなくて……!いいよ……!」と言われたほどの私だ。自分にリズム感がないのなんてよくよく知っていたので、難しかったらやめよ~っと、などと軽い気持ちで手を出したわけだ。

 そうしたらですよ。

 このゲーム、メチャクチャ親切だった……。

 このゲームには“熟練度”なるステータスがある。これはキャラ別に、そして曲ごとに用意されたものだ。
 プレイヤーは“リハーサル”をして熟練度をあげ(※要するに育成)、そして“公演”でリズムゲームを遊ぶ。

 他のリズムゲームのことを全く知らないので想像で語るが、恐らくはガチャで高レアカードを引いたらあとはプレイヤースキルでぶん殴る、が基本的なリズムゲームなのではないだろうか。つまりプレイヤーが下手くそだとカードがいくら強くてもあんまり意味がない──と、私はそういう認識をしている。

 私はどう考えてもド下手くそな上、スマホ端末そのものがもうポンコツなので画面の右端とかがたまに反応しないんだよな。だからまあ、リズムゲームはやってこなかったわけです。指死ぬし。たまに「これ指20本あるの前提にしてね?」みたいなゲームないですか?

 そんな“リズムゲームが苦手な人”でも楽しめるように設計されていたのがこのブラスタである。
 なんとこのゲーム、オートプレイが可能なんですよ(リズムゲーム部分では自分でプレイする【リズムモード】とオートプレイの【応援モード】があります)!!!!

 もちろん、オートだからといって甘々な判定をしてくれるわけではなく、前述の“熟練度”を高めることでミスが減り、ノーツごとの判定が高くなる。という仕様。
 これはもうド親切では?ワルメンが跳梁跋扈してるゲームとは思えない優しさでは?
 スタート画面からは想像できないほど親切なゲームじゃん……と思いつつ私は【リズムモード】でゲームをプレイした。いや、だって下手くそだけど最初は……最初は自分の手で叩きたいじゃん……?

 下手くそなりにえっちらおっちらとノーツを叩き続け、私はここでも「親切じゃん……」と感服することになった。何しろ“叩く”以外の動作をしなくて良いのだ。
 リズムゲームをプレイしたことはそうなくとも、何となくリズムゲームについての知識はうっすらある。何しろ友人の大半はアイマスかラブライブかバンドリをやっている。だから大抵のリズムゲームでは“叩く”以外に“フリック”的な動きも必要だと私は知っていた。そしてそれこそが私をリズムゲームから遠ざける一番の要因である。

 リズム感ゼロの人間が必死こいて画面をつつき倒してるときにフリックする余裕があると思うか?

 ──当然、ない。

 つつき倒すので精一杯だ。友人のスマホでたしかアイマスをやらせてもらったことがあるが、案の定ボロクソだった。友人は私の慌てぶりと指のもつれぶりを見て大爆笑していたし、「ゲームより慌ててるあんた見てた方が面白いな」と倫理観の欠如した発言を残した。

 そんなこともありリズムゲームには苦手意識があったものの、叩くだけでオッケーなら話は別だ。難易度も三つに別れているのに、スコアには大きく差がつかないところも、プレイヤーの心を折ることなくとても親切だなと思った(イベント走るときってやっぱりスコアが大事じゃん……?でも難易度高い方がスコアをいっぱい取れる仕様だと心が死ぬじゃん?)(とはいえ難易度高い方が比較的いいスコアを出しやすいので、そこも親切ポイントなんですけど)。

 オラついたワルメンが跳梁跋扈するとは思えないほど、本当にプレイヤーに親切なシステムなのだ。リズムゲームが苦手だけどワルメンには興味あるな!とか、なんかとにかく悪い男がみたい!とか、治安の悪さをバーチャルで感じたいな!みたいな人がいたらインストールしてもらいたい。色んな意味で面白いゲームなので。

 リズムゲーム部分の親切さにひとしきり感動し、わたしは次にシナリオに手を出すことにした。
 自分でいうのもアレだが、わたしはシナリオにうるさいんだぞ!と思いながらシナリオを読み進め──「すっごいじゃん……」と感嘆することとなった。

 リズムゲームの時点で(※応援モードというオートがある時点で)、すごく攻めてるというか、革新的だな~と思っていた。その「革新的」はシナリオにも遺憾なく発揮されていた。

 何がすごいかって?

 プレイヤー次第でシナリオが変わる。

 普通はシナリオってもう書き上がってて、それをその都度配信していくスタイルだと思うんですけど。ブラスタは違った。

 ブラスタにもやっぱりゲーム内イベントがバッチリ存在していて、そこでワルメン同士が対決したりする。チーム内でのナンバーワンを争ったりとか(全く説明してなかったけど、ブラスタの設定としては“ショーレストラン【スターレス】”で働くワルメンたちを応援するっていうゲーム)(各キャラで所属するチームがあって、チームごとに【ダンスのある演劇を公演】している=それが【リズムゲーム部分】、という設定)。チームのトップ同士でバチバチにやりあったりとか。

 これ【対決イベント】っていうんですけど、本当に容赦がない。

 対決イベントって二人のキャラで争って勝ち負けが決まるんですよ。で、それに応じて今後のシナリオが変わっていく……という、リアルタイムで楽しめる良さがあるわけです。

 もちろん過去のイベントをプレイすることで“今までの【スターレス】”を知ることはできるんですけど、キャラと一緒に“これからの【スターレス】”を知っていけるのはなかなかないと思うんですね。何しろ、対決イベントでどっちのキャラが勝つかは運営側にも分からないわけで。現実だって誰にも“次はこうなる”はわからない。ブラスタもシナリオの転がりかたがわからない。色んな意味でリアルですよ。

 リアルタイムでシナリオが変わる、予測ができない──というのはメチャクチャ新しいな~と思っていて、それを可能にしてしまうライターさんの筆力もそれを企画しちゃった運営の豪胆さも、全部引っくるめて恐ろしいなと思いました。どっちに転がるかさっぱりわからん状況を自分で作り出していく運営、やっぱりトンチキだよ……。プレイヤーとしては予想がつかなくてメチャクチャ面白いけど、私が運営だったらイベントの度に胃を痛めてると思います。報われてほしい。

 シナリオの中身に少し言及すると、「これ普通のゲームじゃ絶対みない展開だな!」と笑い転げたくなるような手心、容赦のなさ。チーム内の不仲が原因でチームが分裂、昔いたチームの公演をぶっ潰す──みたいな展開もあるし(いや本当に)、今なら「キャスト(キャラ)を全員解雇するから、解雇されたくなかったらポイント稼いでボーダーライン越えてきて」みたいな展開もやってます(この記事のタイトルはそういうことです)(メチャクチャ胃がいたいです)。

 運営には人の心がないんですか?ワルメンが跳梁跋扈するだけありますねえ!!!と手のひらをクルクル返しちゃいそうになったよね。マジで。リズムゲームが優しくてもゆるせねえよ……!!!

 普通のゲームなら絶対にやらない。それを平然とやってのけるのがブラスタの魅力だな、とプレイしていて思います。チーム分裂からの公演ぶっ潰しに関しては本当に肝が冷えました。
 しかも「ここまでやっちゃうか~!!!オッケーオッケー!覚悟できたわ!」と覚悟したところに“解雇イベント”ですからね。普通の運営はやらねえよ……。まだそこまでの覚悟はできてねえよ……。もうちょっとゆっくり来てくれよ……。お前が一番のワルメンだよ、運営……。


 公式をほどよくディスりつつ(ディスるな)、もうひとつブラスタの良いところについて話したいと思う。
 これは本当に画期的というか、プレイヤーにとって真摯だなと思ったところなんですけど、【課金者に対してのリターンが的確かつ誠実】なんですよ。

 舞台がショーレストランで、登場人物が全員ワルメンかつキャストなので、公演後(ゲームリザルト画面)でチップを投げたり出来る(※各公演30枚まで/スコアにボーナスをつけられる)んですけど、チップをキャストに投げると特別なボイスが聞けるんですよ。応援ありがとう的な。
 で、このチップは課金すると買えるものなんです(無課金でもチマチマためられるけどあまり現実的ではないかも)。
 あとはフラスタ(フラワースタンド)を贈って公演(ゲームプレイ)時に特殊な効果を得られたりとか、リングを渡してリハーサル(育成)時にキャラを育てやすくなったりとか。

 大抵のゲームって課金したときに得られるものが【プレイ回数の増加(スタミナ回復)】とか【高レアゲットのチャンス(ガチャをいっぱい回せば理論上は当たる確率が高くなる)】とかかなと思っていて、「課金したこと」そのものには明確なリターンはないな~というのがあって。
 スタミナ回復とかは待てばいいし(待ちたくない人のために回復アイテムがある)、ガチャに関しては無課金でもうっかり高レア出せちゃうときもあるし。そういう意味では課金するメリットって何?というものが常に転がってるのがアプリゲーなんですけど。

 ブラスタはその辺りの「課金するメリットって何?」に対してちゃんと応えてるな、と思いました。
 フラスタもリングも贈ることで専用ボイスが聞けるし、それも「応援ありがとう」という趣旨のコメントなので「応援している」っていう欲が満たせて、実感も得られると。
 二次元コンテンツって【推し】を応援できても、その“応援”に対する明確な反応みたいなのは得られにくいかなと思うので(応援してくれる“みんな”に対してのメッセージはあるけど、応援した“私”へのメッセージはなかなかみない気がする)、そういう意味では“ワルメンを応援する”というコンセプトに乗っ取った秀逸なリターンだな~、と。もっと応援したくなっちゃう。

 推しに捧げる愛ってほぼ無償の愛だけど、それでもやっぱりどこかリターンがほしくなっちゃうのが人間だし、そういうちょっとした“欲”を満たすのが上手いんだな……。

 課金そのものにメリットがあれば(応援したという行為にリターンがあれば)、面白いゲームがさらに楽しめるわけで、そういう意味では物凄く“大人向け”なゲームだとも思う。お金を出すことによって得られるリターンとその意味を知っている人向け、というか。

 アプリゲーってどうしても無課金/有課金のプレイスタイルが違ってしまうし(だから無課金と課金者で色々意見の対立があったりもしますけど……)、ゲームの難易度も含めて調整が難しいと思うけれど、うまく落としどころを作ったな~、と。ゆるくプレイしたかったら無課金でもやっていけるし、もっともっと推しについて知りたいとか応援したいとかだったら課金すればいいし。そのへんのバランスも秀逸。

 キャラの言動もなかなか秀逸かつシビアで、綺麗事とか一切抜きの大人の会話が繰り出されるので、ご都合主義にはちょっと飽きちゃったとか、今は綺麗事よりバッチバチのぶつかり合いがみたいんじゃ~~~い!!!とか、そういう大人には自信をもっておすすめしたい。いやほんと、ショーレストランでのトップ争いだから……何だろうな、気持ち的にはホストクラブのキャスト同士の食い合いを眺めている気持ちになれるというか……。

 散々「バチバチしてる」「シビア」とかいってますけど、ちゃんと救いも優しさもほんのり漂っているのでそのへんもいい感じです。さすがに全編とおしてワルメン全開だとこっちの気持ちがもたないもんな。そのへんのさじ加減もステキ。

 ブラスタの強烈なポイントとしてはキャラクターが“全員ワルメン”というところだけれど、あともうひとつ度肝を抜かれたのが“キャラクターの胸元がメチャクチャゆるい”ところ。本当に体感八割くらいが胸元ゆるっゆるのボタンの概念をかなぐり捨てたような服を着ているので、是非見てほしいなと思います。始めた頃は「服を着ろ!!!!!!」って律儀に突っ込みまくってたんですけど、最近慣れてきて「服羽織ってればオッケー!」くらいになりました。でも別のソシャゲやって戻ってくると胸元のゆるさにびびる。これじゃ“登場人物、八割半裸”だよ……。

 時代劇みたいな口調で話す高圧的男子が何故かメチャクチャにやさしかったりとか(※自分に使わせたいシャンプーの香りを聞いてくる俺様男子、ブラスタでしか見たことないよ……)、吐血しつつもバリバリにヒップホップしてる病弱男子とか、ごませんべいの歌って知ってる?とか聞いてくるウェイ系パリピシンガーとか、元新体操選手でプロレスラーだった料理人とか、しこたま酔ってなきゃ作れんよな……みたいな属性もりもりの本当に多種多彩すぎるワルメンがわらわら出てくるので(言い方)、ぜひ推しを見つけて一緒にワルメンたちの行く末を色んな人と楽しみたいな~。


 最後に一番お気に入りのイベントタイトルを張っておきます。

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