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飢餓海峡巡礼、天売、焼尻。2023/6/20

大阪の、旧知の団体職員さんがとうとうご退任のこと、知ったのが6月中旬。お辞めになる前にご挨拶をばと思い立つ。
幸いにして在職していた会社は6月11日付で無事退職できていた。「来阪するならぜひこちらへも」とお声がけくださった会社社長さんとの三者面談、21日となった。
昼職の会社があったころはなかなか進まなかった機巧猫《からくりねこ》関係のこまごまとした仕事もひととおり片づいたいま、7月からの別の昼職に就く前にやっておきたいことといえば、そう、恒例の島旅だ。
西へ赴くからには舞鶴の友人の顔がみたい。
恵迪寮に住み着いている下の息子の顔も。
舞鶴…北海道…『飢餓海峡』じゃないか。

毎度、島旅の際は声かけする老母、今回は抜歯後の体調が不安だと辞退を申し出る。ひとりでの移動ならばどこで倒れようとも気兼ねない。
自由度があがるとなるとしかし、却って行程定まらぬものだ。
「三者面談」が21日とFIXしているから、20日晩の東京―梅田の夜行バス、21日のなんばOCAT―東舞鶴の高速バス、舞鶴―小樽の新日本海フェリーは数日前に押さえたものの、そこから先が迷う。
北海道で唯一乗り損ねていた函館本線山線と『飢餓海峡』岩幌のモデルとなっている岩内を絡める。週末ならば息子も動けるからここはふたり旅にしよう。
そこから恒例の島だ。北海道の有人離島といえば利尻礼文、奥尻あたりが思い当たるが息子とのふたり旅の終わりが札幌になるから、そこを起点とすると丘珠空港。
奥尻は丘珠から直行便あったように記憶していたのだが、調べると函館からしかない。それに道南をうろうろしてから札幌に戻って空路というのもなんだか冴えない。
天売焼尻は空路がなく羽幌からの海路のみ。羽幌へのバス、いまは高速バスとなったがそれでも3時間余りあるから、老母連れの旅だったらここがネックになろう。ということはその制約がない今回、ここを訪れるのがいいんじゃないのか。

昼から練っていたプランが結晶化した。あとは押さえるべき宿と足とをひとつづつ予約していくのみ。
夜行バスに乗る時間から逆算して準備を進める。もともとが機巧猫《からくりねこ》の仕事がらみの大阪行きであるし、1週間あまりの行程となるから機巧猫《からくりねこ》で販売している書籍、発送できる体制にしておかねばならない。
既に1件、愛知県の企業様へ入金確認次第の発送という案件があってこれが23日の予定であるからこの1冊はマストとして、もう1、2冊売れるかもしれん。
『DesignSparkMechanical 使いこなし大全』はPDFのみの販売だからよいが、『機械工学の要点』は紙冊子も販売しているのでどうしても現物が必要。封筒やらなにやらの発送資材も然り。フルキーボードのこのノートPC、広いディスプレイがふだんは快適なのだが持ち歩くにはわたしのキャリーバッグにギリギリ収まるサイズである。
電源コードも含めとんでもない大荷物となるのはいたしかたなく。大東行きで、しかしこれは経験済だ。

23時30分発vipライナー梅田・なんば行き。八重洲口からとだけ認識していて鍛冶橋に向かい、待合所でよくよくみたらバスターミナル東京八重洲と。
こういうことがあるから小1時間前にターミナルにつくようにしているのだ。キャリーを引き引き、6月のじっとりした空気のなかを北上する。

バスターミナル東京八重洲は初の利用だ。そもそもこれからさらに拡張されるらしい。地下だからであろう、北国にあるようなガラス戸でバス停が仕切られているタイプ。
利用者目線では排ガス直撃されなくてよいが(あれを浴びる仕事をしていると身体中煤がまとわりつく。羽田ポーター時代、詰所の壁がよりかかって休憩するポーター達のそれで薄黒く染まっていたのを思い出す)、荷積みする人間からしたら取り回しが不便とも。しかし、リムジンと違い夜行バスは発車を5分置きにまで詰めないし、搭乗名簿と照らし合わせながらの乗車であれば荷積みにスピード要求されないからそれでも回るのだろう。

VIPライナーの平成エンタープライズ社、昔内定辞退をしたことがあった。菓子折をもってお詫びにあがった日のことをいまでも忘れない。その印象的なボディカラーをみるたび、こころのなかでゴメンナサイとつぶやいている。

同社の夜行バスは徹底的な遮光カーテンと、消灯一斉シートリクライニングが特徴だ。バスに乗れば外を眺めたくてしかたないのだが、VIPライナーのときはガマンしている。一斉リクライニングは本当によい習慣で他社に波及しないのがふしぎなくらいだ。全員一緒に倒せば気兼ねがない。消灯後は基本みな寝るのだから。

旅のはじまりに軽い興奮を覚えつつも、明日は客先訪問であるからあまりひどい寝不足の顔でもまずい。いつもならSAでの休憩、必ず降りてほっつくところじっとシートにうずくまって過ごす。いい感じに空調がかかりうとうと西へ。

〈続〉


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