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海路にかすむ御蔵島

こういう本があって、他区貸出で借りてきた。もとは高円寺図書館の所蔵だから、実家にいた時分読んでいてもよさそうなものだが。

『ガラスのうさぎ』の橘祐典による映像もあるらしい。が、現在9どうやってみられるのか不明

新島の射爆場問題は有吉佐和子の『海暗』で読んでいた。三宅にも似たような問題があったとは。

『NHKニュースでパンダの話題はでるのに、三宅の話がでない』と嘆く島民。しかしてこの本の出版はそこから1年後の88年9月。パンダどころか「歌舞音曲の自粛」、真夜中のテレビを点けると二重橋の固定カメラに低いBGMがひたすら流れるという半年に突入していったのである。皇居近隣の学校に一応通学していた自分、登校するのがめんどいときは近所の公園のベンチや図書館でうだうだしていたのだが(夕方から始まる塾は西荻なのだから、そっちにたむろっていてもよさそうなものをひとまず千代田区までいくことで通学したつもりになっていたものか)、100mおきに編上靴の「警官」が歩哨しておりうかつに声をかけられないよう気を遣ったものである。

同書の大筋からは離れているが、証言者の58歳の女性が学校で先生から教わったという歌がこれ。
海路にかすむ御蔵島……か。
海抜100m以上からはじまる御蔵の「里」は常に三宅がみえる。毎日毎日毎日三宅を眺めて暮らす生活。ざっくり10倍くらいサイズが違うものの、かすみはしない。新島、神津は空気が澄んでないとみえないが。

80年代半ばの三宅島人口が約4千人。2000年の全島避難を経て現在約2500人。港が三つ、真逆の場所にあったヘリポートは空港に集約されたがこれもまた港からは少し離れた場所。島の外周に分散しているため、集落らしい集落がない。島外資本のスーパー、コンビニがないのは伊豆諸島のほかの島といっしょであるものの。

約20年に一度のペースで噴火する火山島、分散して暮らすことによって本能的にリスクヘッジしているのだろう。
空港のある坪田から阿古くらいまでで、ある程度海抜がある場所以外からは御蔵はみえない。だからプレゼンスが違う、といってしまえばそれまでの話だ。

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