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実は長野県移住は簡単だった!

6月某日。
スズメたちのさえずりで目を覚ます。
まばゆい朝の陽光。

朝のコーヒーを淹れて、静かな山々を眺める。
大俵一平、平和な朝・・・、どころではない!

早朝5時には「ツキノワグマが出没しました!」という村内放送が連呼されている。

「ちょっ、まてよ!」

そう私はつぶやいてしまう。

これが5日続いている。
長野県全域にも、ツキノワグマ出没注意報が発令されている。

集落は、にわかに騒ぎたっている状況である。
熊もそうだし、草木もそうだし、そうなると年寄りも芽生えるようにして元気になってきた。

2日前には。
93歳が軽トラックで畑に向かったまま行方不明に。

「みなさん!周りを注意して見てください!」と村内放送が連呼された。

アルツハイマーパターンだ。
出かけたはいいが、途中でわけがわからなくなっているのだろう。

するとだ。
93歳は中央高速に乗って、隣県の山梨まで走って、そこでガス欠になって無事保護された。

「ちょっ、まてよ!」

また私はつぶやいてしまう。
熊よりも、93歳のほうが危ないではないか。

そしてまた。
乞われて草刈り。

公民館の周りすべて。
なんだって長野県は公民館が多いのか。
館数は、断トツで全国1位である。

つくづく長野県が嫌になって、横になってテレビのニュースを見ていると、移住の特集をしている。

東京の有楽町駅前の交通会館の5階には『ふるさと回帰支援センター』なるNPOがあって、移住の無料相談をしているという。

どうせまた。
長野県は移住先ランキング1位ですと煽るのだろう。
長野県など大嫌いな私としては、ため息しかない。

するとだ!
いつの間にか!
長野県は1位ではない!

「ちょっ、まてよ!」

私は驚きでひっくり返りそうになった。

2023年の『ふるさと回帰支援センター』での無料の移住相談件数では2位。
ここ3年ほどは、隣の静岡に抜かされている。

しかも、移住へ向けての段階となるセミナー件数では、4位に下がっている。
ここでも隣の新潟に抜かされている。

なんだか。
このまま10位以下にまで陥落しそうな勢いすらある。

このことからは、多くの移住希望者は、長野県の真実に気がついたといえるのではないのか。

山国の生活は厳しい。
そこに気がつくのは、私の望むところではある。

安易な長野県への移住を考えていただきたいという、私のレポートの趣旨とも一致する。

しかしなんだろう・・・
このモヤモヤ感・・・

正直に明かさなければならない。
真実のレポートを約束している私は、それを履行する。

まず第一に、静岡と新潟に抜かれたのが、なんかどうか腹立たしい。
たかが海があるだけの、なんてことはない両県ではないか。

海がなんだ。
海なんて。

いかん。
移住ジャーナリスト(自称)として感情的な考察だった。
以後、気をつけたい。

私は静かな山を眺めた。

こうなってしまうのもひょっとして。
実は、私は長野県が好きなのだろうか。

そんなはずはない。
長野県など心の底から大嫌いなはず。

理屈っぽく、偏屈で偏狭で、冗談が通じなくて、同調圧力がひどくて、ムッツリスケベの長野県人だって大嫌いなはず。

しかしまさか。
まさかとは思うが。

私は、1位に輝く長野県に嫉妬していたのだろうか。

嫉妬しているとすれば恐ろしい。
嫉妬の反対は愛だという。
キリストだって、愛は嫉妬だといっていた。

いや、いい年ぶっこいた小太りの仏教徒のくせに、詩人のマネ事をしている場合ではない。

そもそもが。
長野県が1位でなければ、真実の移住ジャーナリスト(自称)としての私の存在意義がなくなるではないか。

私は自身の証明のためにも、長野県の移住当局に、草の根の根の根レベルで協力しなければかもしれない。

もしそうだとすれば、私も93歳を見習って軽トラで中央高速に乗り、有楽町駅前の交通会館まで走り、以下のビラ配りからはじめるのもやぶさかではない。


実は長野県移住は簡単だった!

今年こそ長野県に移住するぞと、あなたは毎年思っていることでしょう。

しかし、現状が全てを物語っています。
 
あなたは、まだ東京に住んでいるではありませんか?
満員電車に揺られているではありませんか?

もう、そんな彷徨から抜け出さなければなりません。
あなたは、どこかで長野県移住を決断しなければならないのです。

そして今、あなたの前に、決断のタイミングがチャンスとして到来しました。

それが『長野県移住の真実・大俵一平レポート』。
実は、簡単に長野県に移住する方法があったのです。

住むだけではありません。
あなたは、心身ともに幸せになるのです。
もう、東京での生活が嘘に感じることでしょう。 

実際に、長野県へ移住をしてから、草刈りが楽しみになった、冬の寒さも気持ちよくなった、理屈っぽい長野県人も平気になった、と実感している方の声も多く聞かれるのです。

さらに、長野県に移住した91.5%が昆虫食に成功。
95.7%がしかめっ面で軽トラックを運転してます。

この長野県への移住を詳しく解説した『長野県移住の真実・大俵一平レポート』は、合計100ページに及ぶ超特大ボリュームで構成されております。

余計な先入観は全てカットしました。 

これさえ読めば、長野県移住に不安な部分はないというクオリティに仕上がってます。

さらに今回限りの特典として、大俵一平の指導のもとに魅惑の草刈り体験がもれなく実施されます。

これはまさに、あなたが待ち望んでいたチャンスです。

もう帰宅の電車の中で、ため息をつくだけの自分が嫌になる必要はありません。

今すぐに『長野県移住の真実・大俵一平レポート』を手に入れてください。

人生を変える一歩を踏み出しましょう。
 


 
というわけで、ここは長野県の移住当局に。
本編となるレポートの制作費用をお願いする次第である。

4位のうちに早めに対処しておかないと、さらなるランキング下位陥落は必至の状況。
早急に、予算を大幅に割いて頂きたい。

でもどうせ。
長野県の移住当局などは「山がキレイだから大丈夫」などと呑気に鼻クソでもほじっているのだろう。

なんだったら『移住緊急対策本部』を設置して、私を本部長付参与に任命していただいてもかまわない。
喜んで草刈機を放り投げて、すぐに参じる覚悟がある。

お互いに移住利権の甘い汁をすすろう 私は長野県の発展に尽くす所存である。

さし当たって移住希望者には、『あとは野となれ山となれ』『住めば都』という昔の人がいった含蓄ある言葉を贈りたい。

1位陥落が衝撃すぎて混乱しているが、なんにしてもだ。
長野県に移住するのは、私の独自調査が終了してからでも遅くはない。

レポートの続きを待たれよ。

大俵一平


レポート作成に使わせていただきます。 ありがとうござます。