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20240427

 諸般の諸々から、自宅に戻る途中。駅まで歩いていると、細い道の際に設けられた、無人の野菜売り場。その横の竹林の中で筍が売られていたので、買って帰る事にした。以前は道の際の、無人の野菜売り場に並べられて売っていたのだけれど、いつの間にか、朝堀りの筍を軽トラに乗せて、人の手を介して売られる様になって、それから機会をずっと待っていたのだけれど、今シーズンはこれが初めて。
 鞄からレジ袋を取り出して、1000円分の採れたてで土の付いた筍をその中に入れてもらって、それから電車に乗る。

採れたての筍。

 泥に塗れた筍を持って、電車に乗る。座席や床面を汚してはいけないと思いながら、幾許かの気を遣いながら。こんな風な事、若い頃なら凄く抵抗があった筈なのだけれど、今では、新鮮な筍を手に入れる事が出来た優越感で電車に揺られる。優越感はこれ位で良いと思いながら。

 帰宅して、部屋で、ごろんと横になって、天井を見詰めて、黄金週間とは何だろうかと。今年は何連休だとか、新幹線の混雑のピークはいつだとか、高速道路は何十キロの渋滞だとか、そんな情報や周囲の浮かれ気分を横目に、諸般の諸々を経て、する事と言えば体力の温存より他見当たらず。

 深くは無いけれど、他愛の無い訳などあって、今日のソウル・フラワー・ユニオンの中川さんを拝見するに当たって、体調を整えておかねばならないと思い、昼食を済ませた後に、押し入れから掛け布団だけを出して、少しでも長く睡眠時間が取れる様に、カーテンも閉めた。

 昼寝、それは甘い響き。

 昼寝の時には、よく夢を見る。

 夢の中。ライブを拝見に向かう日に、寝て、起きて、いつの間にかライブ会場に向かっていて、それが全く見覚えの無い場所なのに、夢の中ではそこで生活している様な場所が出て来て、起きた時にあの場所はどこだったのだろう、そんな光景が出て来たのだろうかと、考える時がある。
 また、その夢の事を思い出したりすると、またあの場所が夢に出て来ないかと思ったりする。

 そして、そんな夢の中でも、今日は、夢の中でも中川さんのライブを拝見に向かう事になっていて、先を急いでいた。何やら見覚えの無い商店街でも、自分がそこで平然と過ごしている様に振る舞っていて、不思議な感じがした。
 自転車を押して通る、商店街の一角に出店されたフリーマーケットにて希少価値のある様なTシャツが出品されていて、買おうかどうか迷う。夢の中なので買っておけば良いのだけれど、夢の中では、まさか自分が夢の中に居るとは夢にも思わず。
 購入したのかどうかは忘れてしまったけれど、次の場面では商店街から離れて、ここも、やはり知らない場所ではあるのだけれど、少し狭くなった車道の上を、自分の自転車ではあるのだけれど、全く見覚えの無い、自転車を漕いで目的地(目的地がどこだかも判らず)まで向かっている。
 夢の中でも、毎日の暮らしがある様に、平然と振る舞っているのだけれど、どうもライブが終わってしまったとか、日にちを間違えたとか気が付いて「うわーっ、どうすんねや」とう場面で目を覚ます。目を覚ました時に、そんなに怖い話でも無いのに、凄く怖いものに遭遇した様に震えていて、夢であったと判った時に冷静になるのだけれど、それでも怖いものは怖い。

 寝惚けて、夢と現実が混ざっている時に、今日はこれからライブを拝見に向かうという事も判って、ひと安心。

 先日、ムジカジャポニカからメールが届いて、何だろうかと開封してみると、今日の開場時間が30分遅くなるとの事だった。
 入場して、お酒を嗜む時間が短くなってしまうけれど、幕間で取り戻そうという気持ちもあって、今日の体力の温存には念を入れた。
 そうしたら、そんな夢を見たので、ひょっとすると、これは昼寝を取りながらもライブを楽しんでいて、一日を満喫出来ているのでは無いかと考える事にすると、凄く儲かった様な気分になった。
 そんな風に何と無く過ごしていると、自宅を出発する時間になって、支度を済ませて自転車に乗って駅まで向かう。春のど真ん中、というのがどの辺りなのかは判らないけれど、そんな頃の様な気候を味わいながら。

 開場の時間が30分程遅くなって、それでも17:00開場の段取りで、ソウルフラワー中川敬の弾き語りワンマン‧ライヴ!『中川敬‧58回目の降臨祭』を拝見に。今日は、大熊ワタルさんとこぐれみわぞうさんもゲストに来られるとの事で、果たしてアコースティックでどんなライブが拝見出来るのだろうかと、期待に胸を膨らませて、自宅を出発した。

 自転車を漕いで。近くの団地を通り抜ける時に、つい先日まで咲き誇っていた桜の木を見てみると、桜の花は「がく」という部分と「花梗」という部分だけ残して、これから若い濃い緑の葉っぱの眩しい季節がやって来る事を思わせる佇まいだった。
 また来年と思いながら、自転車を駐輪場に預けて、徒歩で駅まで向かう。
 途中で時計を見てみると、17:00が開場の時間であったなら、また阪急東通り商店街の中を駆け抜けねばならない時間となっていて、少々焦るも、30分延びた開場時間を思い出して安心する。

 家の近くの小さな駅の佇まいも黄金週間。人出、人出。

 黄金週間に全くと言って良い程、今年は特に、
縁が無さそうなので、黙って紛れて、自分も10連休位の雰囲気を醸し出したつもりで、やってきた電車に乗った。

 特急電車に乗換える駅でも同じく。

 やって来た特急電車も、人、人、人。

 あぁ、黄金週間。

 阪急電車、大阪梅田駅は3階の改札口から街に飛び出そうと思っていたので、電車の一番前に乗って揺られる。
 一番前に乗ると、電車の先頭からの眺めが楽しい。
 最近の注目スポットは、高架化されるとの噂の摂津市駅周辺。果たしてどの様に高架化されるのだろうかと。
 自宅の近くの駅も高架化されたのだけれど、高架化された後、最初は新鮮だったけれど、暫く経つと、日常の光景に溶け込んでしまって、見慣れてしまって、高架化される前の駅の光景がどんな風だったかという事を思い出すまで、少し時間が掛かってしまう。
 摂津市駅もそうなるのか。とか、線路に沿った長い空き地に、下り線を移して、元あった下り線の場所に上り線を移して、上り線を先ず高架化させて、とか。かなり幼い頃に上新庄駅がそんな風に高架化された事を、朧気ながらに覚えていて、どんな風になるのか、等々、走る電車の中で思いに耽る。
 そして、安威川、淀川から分岐した神崎川を越えて、淡路駅手前で乗っていた電車が、何か起こってしまったのでは無いかと思える位の減速をして、少し不安になるのだけれど、結局、信号待ちの様子で安心して、淡路駅。
 それから高架化工事中のトンネルを崇禅寺駅まで味わって、南方駅を通過して十三駅。淀川を越えて、中津駅を横目に大阪梅田駅に到着。

大阪梅田駅にて。

 大阪梅田駅に到着して、電車から降りると、人しか目に入って来ないという位の人の多さだった。人によっては今日から長い休みが続くのだろうと思うと、羨ましいとも思うし、他人は他人、自分は自分とも思いながら。

 そうして、人混みを避ける様に裏通りに入って、目指すはムジカ‧ジャポニカ。開場の時間が30分遅くなった恩恵を受けながら、裏通りに入っても人の数が普段より多いなと、街の賑やかさにゲンナリしながら。角のタバコ屋さんに設置された灰皿の所でタバコを吸って、ムジカ‧ジャポニカの前に到着すると、開場の時間が更に遅くなる情報をキャッチして、仕方無いので、また灰皿の所に戻って、煙草をもう一本吸うと、少し気分が悪くなった。

梅田の外れ。

 辺りをウロウロするにも人だらけ、だったのでお店の前で待たせてもらう事として、賑やかな商店街の入り口から階段を登って、建物の中の入り口の前に到着すると、開場を待つ人で溢れかえっていた。
 入場した時にドリンクのオーダーなどに、忙しなくなりそうなのが懸念事項だったけれど、それは何とかなるだろうと。
 遅れた開場時間になって、自分の番号。メールに書かれた謎の数字は何だと思っていたら、整理番号との事だった。

 それで、中に入って収まりの良さそうな席を選んで着席。

 先ずビールなど嗜んで、2杯目もビールだったか。開場の時間から開演の時間までアッという間に過ぎた様な気がした。

ステージ。

 客席が暗くなって、スピーカーから出囃子は「ラン‧ダイナモ‧ラン」が流れて、中川さんがステージに。チューニングを終えて「バルカンルートの星屑」、ムジカジャポニカに響くリバーブの心地良さを感じながら唄の世界に入る。
 少しMCを挟んで、次にカバー曲、ポーグスの「a pair of brown eyes」。前回、磔磔で拝見した時には、完全にオリジナル曲した演奏されなかったのに、今日は2曲目からカバーとは。これだからライブは面白いと思う理由のうちのひとつ。宵の口という時間に嵌る。
 から、徳島に行きたくなる様な話から、為になる話が伺えて、新曲「ゆりかごの街」は自分も年齢を重ねると、自然とそんな風になるのかと考えさせらせる曲でもある様な気がした。名曲。
 新曲が続いて「川から海まで」。パレスチナの惨状を頭に思い浮かべながら拝聴。胸が痛くなる。一日も早くパレスチナの人々が元の場所に戻れます様にと、出来る事は何だろうかと考えながら、祈りながらも拝聴する。から「パレスチナ」
 更に、新曲が続いて、早くバンドでレコーディングされた音が聴きたい「千の丘の足跡」。
 そして「ソウル・サバイバー」のL.P.が売れに売れているという話から、次の曲がコロナ禍以降ライブで演奏される、新しい255曲目が演奏されると言う話で、どんな曲なのだろうかと。
 それが、ビヨンセさんもカバーしているビートルズの「blackbird」で驚いた。
 ポールさんもビヨンセさんがカバーして曲に込められた意味を、やっと、公表されたらしい。中川さんが歌う「blackbird」。日本語の訳詞も秀逸で、途中で吹かれた口笛にグッと来た。
 それからニーナ‧シモンさんからのカバー「Ain't Got No, I Got Life」先日、映画「HAIR」のサウンドトラックを手に入れる事が出来て(寝屋川の中古レコード等を扱っている「キンキーズ」さんで、何気にレコードを掘っていると、ブチ当たって、迷う事無くレコードをレジに持って行きました。)それで、Ain't Got No,とI Got Lifeが別の曲として収録されていて、これはどう言う事なのだろうかと、頭の中にクエスチョンマークが溢れんばかりだったのだけれど、中川さんのMCでその理由を知る事が出来て、それもライブの有難さだと思う。またひとつ賢くなった様な気がした。
 中川さんの詩の深さを堪能。

 それで、一部の幕が降りて、向かうはドリンクカウンター。補給するのはアルコール分。阪急東通りからの雑踏から、遠く離れている様な錯覚に陥るムジカ‧ジャポニカのお店の前で、煙草など頂いて、幕間の時間を過ごした。

お店の中の傘。

 二部の頭に、阪神淡路大震災から時間が経ってから、出来た曲「生きる」で、今の神戸の街を思い浮かべて、時間の経つ事とはどういう事だろうかと考えた。
 そして、待ってました。中川さんに、大熊ワタルさんとこぐれみわぞうさんが呼び込まれて、みわぞうさんはチンドン太鼓を叩きながらステージに。ステージの上が俄かに賑やかになって、これから、どんなライブになるのだろうかと思うと、期待に胸が膨らんだ。
 大熊さんとこぐれさんが大阪に来る事になった話から、シーサーズのライブで知り合って、モノノケサミットの話等々、中川さんから興味深い話が聴けて、これもライブの醍醐味。
 そして「満月の夕」がアコースティック‧ギター、クラリネット、チンドン太鼓で演奏される。ステージの上も賑やかに。
 いつも中川さんのソロで拝聴する時に頭の中で鳴っている、クラリネットやチンドン太鼓が、今日は本当に耳から聴こえて、グッと来るものがある。クラリネットの音色の切なさに心が共鳴したりも。

 泣かせるなぁと思いながら。

 そして、阪神淡路大震災のみならず、東日本大震災の仮設避難所でも、評判が良かったという「アリラン」。またもや、アコースティック‧ギターとクラリネット、チンドン太鼓の音が至極のアンサンブル。本当に音源化されないかと思う。
 MCで大熊さんが関西地方に住んでいた事など。大熊さんのMCも新鮮だった。
 それで今年の一月の能登半島大震災の話から、北陸の曲、富山民謡、中世の頃からあったらしい「こきりこ節」。堤防に雪の積もった神通川の光景を頭の中に浮かべながら拝聴する。
 こぐれさんの叩くチンドン太鼓、大太鼓が絶妙のタイミングで鳴らされる「砂山」が日本海の荒波を想像させた。
 モノノケサミットが外で演奏していた意味や、当時の話が伺えて「カチューシャの唄」へと。モノノケサミットで演奏される「カチューシャの唄」とは、ひと味違って、構成される楽器のシンプルさで、それぞれの音が良く聴こえて、何度も唸らされた。
 チンドン太鼓を叩く、こぐれみわぞうさんがステージから「また後ほど」と云う風にステージを去って、MCでチンドン太鼓の話、からソウルシャリスト‧エスケイプのアルバム「ロスト‧ホームランド」の制作される過程の一部の話も興味深く拝聴して「短距離走者の孤独」。
 で、大熊さんの演奏するクラリネットの低音部から高音部まで、縦横無尽に行き来する音色の堪らなさよ。そんな事を思いながら。アコースティックギターとクラリネット、チンドン太鼓で奏でられた音楽を楽しんでいた時間がアッと言う間に二部の終了。楽しい時間はアッと言う間に過ぎるというやつだろう。

お店の前。

 二部と三部の幕間。開場時間が遅くなった、という事を言い訳にして急ぎ足でハイボールを頼んで、煙草を嗜んだ。

 三部の頭に告知があって、「春一番」に行ける人が羨ましいと思いながら。伺えないライブばかり、と思っていたら、モノノケサミットの磔磔でのライブの告知があって良かったと思う。
 それで大熊さんが呼び込まれる事再び。
 ミラーボールの話となった時に、今は無き、行った事のない、名前だけは知っている「キャンディー‧ホール」の名前が出て来た時は少し驚いてしまった。
 それから二部の終わりから続く様に、アルバム「ロスト・ホームランド」から「落日エレジー」で中川さんのヴォーカルと映えるクラリネットの音色。気だるい日の夕暮れ時の気分になりながら拝聴する。
 しかし、中川さんの歌声と大熊さんのクラリネットの音の絡み方の絶妙さよ、と何度も思いながら。
 そして、中川さんのソロ「夜汽車を貫通するメロディヤ」から「栄光は少年を知らない」を大熊さんのクラリネットと共に奏でられる。ギターの音色、唄の歌詞、クラリネットのメロディーが、これまた絶妙に絡み合って、唄の情景、インターネットでよく見掛ける、世界各地の戦地の様子が頭に浮かぶ。から、「石畳の下には砂浜がある」ホームレスの人達の年齢が下がったと思っていたら、自分も歳を取ってしまった事もあるのだろうとも思った。これがまた、イントロからのアコースティック‧ギターとクラリネットの絡み方がまた絶妙で、遠目に高いビルが聳え立つ、深夜のバス停の光景が。深いため息と共に。安心して眠れる居場所を。そんな断片的な思いが旋律と言葉と共に。
 そして、MCを拝聴して、生きている限り、出来るだけ伺いたいと、またチケットを手に入れる時からライブを楽しみたいと。
 そして、三部の最後「いのちの落書きで壁を包囲しよう」。これまた大熊さんのクラリネットの音が、中川さんの唄とアコースティック‧ギターに絡まって、なんかいい時間を過ごせているなと、この至福の時間は終わって欲しくないなと思いながら。よくよく考えてみると、相当貴重な時間だったのではないかと。本篇、大団円。

 これで帰るのは少し寂しいと、アンコールを求める。

 アンコールに応えて頂いて、中川さん、ギターのチューニングを済ませた後に、大熊さんをステージに呼び込んで「A-musik」での話、また懐かしい「a.m.hall」の名前が出て来て、ちょっと吃驚する。
 そして「平和に生きる権利」が。大熊さんのソロパートのメロディーが強く響いて、唄の力強さが増した。
 宴酣でこぐれさんが呼び込まれて、大熊さんとこぐれさんの明日の告知から、「ホライズンマーチ」。カウント4つ目で大熊さんのクラリネットにグッと来て、こぐれさんのチンドン太鼓が彩り。と、唄とメロディーとアコースティック.ギターの音色が絡まって放つ賑やかさで、曲が膨らんで、更にグッと来た。更に「聞け万国の労働者」で感極まってシンガロン。盛り上がって大団円。余韻が半端在らず。特別感の溢れる、最早、新しいユニットとも思える編成でのライブをまた拝見したいと、終演直後に思う。

 中川さんの唄とアコースティック‧ギター、大熊さんのクラリネットとこぐれさんのチンドン太鼓の絶妙な絡みが極上の夜をありがとうございました。

 また伺います。

良い夜をありがとうございました。

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