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20231008

 京都音楽博覧会が二日間の開催となって、1日目。何がどう変わっているのか楽しみだった。

 諸般の諸々が終わったら、直接、会場である京都は梅小路公園に赴くつもりだったので、段取りは前々日に済ませなければならない。
 信じたくはないけれど、当日は何やら雨の予報で、去年の音博も同じ様な天気だったと覚えている。京都の街中といえども、雨が降って身体が濡れると冷える。そんな季節。なので、持っていく予定のリュックサックや履き物には防水スプレーを施して、万が一、雨が降った時に備えて、雨具だけは過剰かと思われる位用意をする。山の中や海の際で開催される音楽フェスティバルに足繁く通っていたりすると、その辺りの段取りは全く抜かりが無く用意が出来るのだろうけれど、そんな野外で開催される音楽フェスティバルには無縁で、どちらかと言うとインドア派。高性能の雨合羽など持っておらず。ここは工夫を凝らさねばと思って、用意したのは、まずコンビニで売られている様な白いビニール製の雨合羽。きっとこれだけでは防寒にはならないだろうと思って、かなり前に某ファスト‧ファッション‧チェーンで買った覚えのあるポンチョを用意した。
 いざとなったら二枚のレイヤード‧雨対策。防水対を施したリュックサック。防水対策だけでは追い付かないだろうと、それ用のレインカバーがあれば完璧だろう。
 レインカバーと装着しても、何らかの形で雨水がリュックサックの中に侵入して、中の物が濡れてしまうといけないので、フリージングする時に大活躍しているバッグを用意して、持って行くものは小分けしてリュックサックの中に収めた。
 段取りを行なっている間に、どこか遠くに行く様な感覚になっていて、よくよく考えてみれば、自宅からだと一時間掛かるか、掛からないかの場所なのに。大袈裟な段取りをするという事は、そんな、どこか遠くに向かう気分にもなれるのかと思った。

 諸般の諸々には、諸々用の鞄と京都音楽博覧会を鑑賞する時用のリュックサックを用意して出掛けた。
 一日が過ぎて、諸般の諸々を終えて、駅まで急いだ。あと少しで開場の時間という事で、気を焦らせながら。

 どの道程で向かおうかと、最速で到着する道程を考えてみると、阪急電車で桂駅まで向かって、そこからバスで梅小路公園までという、道程が良さそうだという事で、阪急電車に乗って桂駅まで急いだ。
 諸々の荷物を駅構内のコインロッカーに預けて、エスカレーターに乗って降りて、東口。
 バスの時間を調べていて、一時間に二本程しか無かったバスが止まっていて、どうしてだろうかと考えてみると、調べていたのは京都市営バスの時刻表で、停まっていたのは京都京阪バスだった。兎に角向かって貰えれば何でも良かったので、乗り込んだ。音博に向かう様に見えるお客さんもチラホラ乗っている様に思えた。

バスの運賃表、バスは亀岡から走って来たのでしょうか。

 乗ったバスはすぐに動き出して、東へと向かった。桂川に架かる桂大橋を渡って、天神川に架かる桂小橋を渡ると、そこに学生時代に通っていた自動車の教習所がある。その頃の事が頭に過って、自動車を持たない家に育って、自分が車を運転するなんて思っても無かった事を思い出した。

向こうに見えるは阪急電車。桂大橋にて。

 バスは京都市内を走る。目に入る、どんな些細な事も京都と思えるのはどうしてだろうと、考えている間にバスは梅小路公園前に到着。過去に阪急桂駅からバスに乗って、ここまでやって来た事はあっただろうか、思い出してみても思い出せないので、バスで来たのは初めてだと思う。

 そうして、到着した梅小路公園。京都音楽博覧会2023の一日目。

梅小路公園の七条通からの入口。

 チケットをリストバンドに交換。リストバンドは二日間用の緑色で、同時に音博専用のレジャーシートも貰った。会場内ではこのシートしか使用が出来ないとの事で、無意味に大きなレジャーシートで場所を陣取られる事を考えれば、こうして広さが限定されたシートしか使用出来くするのは良いアイデアだと思った。

 そうして、物販類は明日買う事にして、あちらこちらを散策。七条入口広場から芝生広場へと向かう往来は人が行き交っていて、去年も来ているのに、この光景も久しぶりと思ったのはどうしてだろう。

 会場である芝生広場に行ってみると、入口のレイアウトが変わっていた気がして、それが少し新鮮だった。ゲートでリストバンドを提示して、中に入ってみると、辺りに敷かれるシートやスタンディング・エリアに自由に(人数制限はあるとの事でしたが)出入り出来て、コロナ禍前の音博の会場が戻って来ている感じがして、それで懐かしい気分になった。

 ひと通り会場をウロウロすると、空腹を覚えたので、飲食エリアで何かとも思ったのだけれど、ここはひとつ、梅小路にもお店があった、OLE BURGER KYOTOで昼食をと思い、一旦、梅小路公園を出て七条通りまで出てお店を探す事に。
 通りに出て、電話の地図アプリに導かれて向かうと、直ぐに見つかった。お店の前に到着すると、既に待っている人が居て並んでいる様子だった。
 開店の時間が11:00、時計を見てみると、少し時間があったので、一旦、梅小路公園の七条入口広場に戻って、喫煙コーナーで煙草を嗜んだ。
 空はどんよりとしているけれど、これから音博が行われる期待感には敵わない。どんな二日間になるのだろうかと、期待に胸を膨らませた。

 開演まで一時間を切って、OLE BURGER KYOTOに向かってみると、お店は営業を始めていて、お店の中に入った。
 レジにてチーズバーガーのセットをオーダーを済ませて、一階、ハンバーガーのパティを焼く鉄板が見えるカウンター席に座って、ハンバーガーの出来上がりを待った。
 セットの飲み物、アルコールを嗜もうと思ったけれど、先の事を考えると体力の温存もせねばならない。音博の途中でバテる訳には行かないと思ったのと、こんな時はジンジャー‧エール意外の選択は無い様に思えた。

OLE BURGER KYOTOにて、美味しく頂きました。

 ハンバーガーにセットのポテトフライが添えられて運ばれて来た。以前にも大阪の緑地公園で頂いた事があるのだけれど、こんなハンバーガーを待っていた、というボリュームのあるハンバーガーが何とも言えず。
 伺う機会を淡々と狙っていて、今日がその時でもあって、気持ちが満たされた。

 満たされて、さて、会場の梅小路公園芝生広場へと。

 ゲートを通過する時にリストバンドを提示して、中に入って、さて、どの辺りで拝見しようかと考える。

 シートを敷いてベースキャンプの様に構えるのも悪く無いだろうけれど、自分にとっては、何か機動力に欠ける様な気もする。等々と考えて、ステージ前方のスタンディングエリアに向かう事にした。

 スタンディングエリアの後方に構えて、その時を待った。

通路とシートエリアを区切るテープ。

 時計を見ると11:50を少し過ぎていて、ステージに、もう完全に音博のレギュラー‧メンバーとも思えるMCにラジオ‧パーソナリティーの野村雅夫さんが登場。から、くるりの岸田さん、佐藤さんの開会宣言を経て京都音楽博覧会2023の幕が開いた。

京都音楽博覧会2023。

 トップバッターは、最近あちらこちらで名前を伺う様になった「羊文学」。以前に服部緑地公園で行われた、本と音楽のイベントでボーカルとギターの塩塚モエカさんのソロでの演奏は拝見した事があったけれど、羊文学は初めて拝見する。
 その時の印象では、アコースティック‧ギターにルーパーを巧みに操られて、おひとりでも音の厚い演奏をされているという印象だったのだけれど、今日、ステージの上に揃えられた機材を拝見すると、ギターにはフェンダーのアンプ(だったように記憶しています。)ベースにはアンペッグ。
 で、出て来たメンバーの持つ楽器を見てみると、ギターがジャガーでベースがジャズベース。ルーパーのイメージから遠くなった。
 特に印象に残ったのがベースの河西ゆりかさんのフィンガーピッキング。フィンガーピッキングと言うと、ピックアップの辺りに親指を置いて、人差し指と中指を交互に動かして弦を弾くのだけれど、普通はその指の場所が、人差し指と中指の場所である様に思うのだけれど、河西さんは、人差し指と中指を交互に、同じ場所で弾いてられる様に見えて、それが凄いと思った。
 ドラムのフクダヒロアさんの冷静そうな佇まいからは想像出来ないドラミングとのリズム隊とのコンビネーションが何とも。
 それで、塩塚さん、今日はルーパーは登場しないのかと思っていたら、何やら足下に置かれたペダルを踏むと、オルガンの音が流れ出したので、今日もルーパーはステージの上に健在だなという様な事も思った
 羊文学、どんよりした空の下が異様に嵌った印象。これが晴れていると、また印象が変わってくるのだろうけれど、そんな空の下で拝聴出来て良かったかと。天候と音が見事に融けて、最高の空間だと思った。

 羊文学が一気にステージを駆け抜けた感があって、次は「ハナレグミ」。ステージの上の機材が変換される時に、お客さんが入れ替わって、少し前の方に進む事が出来た。
 同時に、雨が降りそうだったので、万全に整えて来た雨具などを鞄から取り出して体勢を整える。
 リュックサックを背中から下ろして、中から雨合羽、リュックサックのレインカバー、ポンチョを取り出して、まず雨合羽を着用。コンビニエンス‧ストアで売られている様な華奢なものだけれど、それでも頼りになる。そして、リュックサックにレインカバーを取り付けて、雨合羽の上から背負って、最後にポンチョを上から被って万全。
 万全に用意した雨具の活躍が見事だと思って、自分を褒めて、雨が降って嬉しいやら悲しいやら。

 そうしてハナレグミがステージの上に。ベースの方がどこかで拝見した事があるなと思っていたら、GREAT3の高桑さんだった。
 音博でハナレグミを拝見するのも2度目の様に記憶していて、前回を調べてみると2018年。その時は弾き語りで、今回はバンドセット。
 拝聴した事のある曲から、初めて拝聴する曲まで。中でも印象的だったのは杏里さんの「オリビアを聴きながら」のカヴァー。以前にも何かの機会で拝聴した事があったけれど、もう失恋どころでは無い力加減。カバー曲がここまでパワーアップしているとは驚いた。それから漢方の曲、薬効があって「整う」とは良い響きだと思う「Quiet Light」で拝聴している方も不思議とその効果がある様な気がしてきて、この日、永積さんが唯一ギターを持つと、客席から、何を演奏するのかが判ったらしい熱心なファンの人から声が上がって、演奏されたのが「家族の風景」。
 「キッチンにはハイライトとウイスキーグラス」でキッチンにハイライトもウイスキーグラスも無い家だったのに、何故かそんな光景が頭に過ぎって泣けた。

吊り下げられたスピーカー。

 それから転換の時間に、隣の水族館でショーを見せるイルカが跳ねると湧き上がる歓声を横目に次を待った。
 雨が降ると(いや、こんな場合は降らなくても、かも分かりません)身動きが取り辛くなってしまう。雨が降って、じっとしていても、そんなに冷たいと思わないのはやはり、レイヤード雨対策のお陰かも知れないと思いながら。

 ステージの上が整って出て来たのが中村佳穂さん。以前、コロナ禍で行われたリクオさんの磔磔での何だったかの公演にゲストとして少しだけ拝見した覚えがあって、登場の時の印象が強烈に残っている。今日はどんな感じなのだろうか、と思って拝見していると、今日の登場の時も同じ強烈な印象だった。大きな会場でも一瞬にして中村さんの世界に運ばれた。くるりの新しいアルバム「感覚は道標」に付いてきたTシャツを着て、ステージが始まった。ツインドラムのバンドセットでリズムの複雑さ加減が拝聴していて楽しかった。
 途中、どの曲だったかは忘れてしまったけれど、くるり「ばらの花」(だったかと記憶してます)の歌詞をサンプリングして、中村さんの曲に雪崩込んで、それから曲の終わりの方で、これまた「羊文学」と「ハナレグミ」の曲の歌詞を盛り込んで、それが圧倒された。
 最後にくるりでドラムをサポートしている石若駿さんがステージに呼び込まれて、ツインドラムがトリプルドラムとなって、それが凄くトライバルな感じがした。
 圧倒されっぱなしの40分間だった。

 圧倒されて、少しステージの前を離れてみようと、喫煙コーナーまで向かってみた。雨に濡れても構わない様にサンダル履きで良かったと思う。靴下も脱いで、ズボンもダブダブだったので膝の上まで捲り上げて、ステージ前から指定された通路を歩いて、あぁ音博はこうで無ければと、いつの間にか思う様になっていた。雨が降らないと音博は楽しく無い。晴れていてもいいけれど。雷だけは勘弁してほしい。等々天気と音博を考えながら、芝生が時折泥んこにもなった道を往く。
 喫煙コーナーのテントの中も煙が漂っていて、広い会場に居る喫煙者が集まってくるのかと。それが多いのか少ないのかは分からないけれど、ステージの転換中は人が多いのだろうと。

 で、さっきから何かが足りないと思ったら、お昼前以降、ジンジャーエールで水分を取ったっきり水分の摂取は出来ておらず、喫煙コーナーから少し離れたドリンクコーナーでペットボトルの飲み物を買って飲んだ。

野外、昼間のミラーボールもまた一興。

 ステージ前のスタンディングエリアに戻る事再び。

 自由にステージの前のエリアに来る事が出来る幸せを噛み締めながら。次に出演するマカロニえんぴつを待った。
 去年の音博では遠くで「尼崎の魚」を聴いた覚えがある。去年のステージ前は、きっと人気でチケットが取れない人が続出したのでは無いかと、去年の音博も思い出した。
 音出しでフライングVを持ったギターの人がマイケル‧シェンカー‧グループの「アームド‧アンド‧レディー」を演奏して、フライングVだけに唸ってしまった。
 マカロニえんぴつを拝見していて、若さが羨ましいと思うと同時に、マカロニえんぴつはどうして、マカロニえんぴつとバンド名からその「マカロニえんぴつ」を想像してみる。それは鉛筆の芯にマカロニが巻かれているのか、とか、それとも鉛筆の芯が無くマカロニの様な鉛筆なのかとか。色々考えるも答えは出ない。
 そうして音出しを終えて本番。一曲目がどこかで聴き覚えのある曲だと思ったら、くるりのカバー「サンデーモーニング」だった。日曜日だけれど、サンデーモーニング。彼等の年齢はどれ位なのだろうか、等々、ただただ若さが羨ましいと思いながら拝見した。

 そうして辺りもだんだん暗くなってきて、槇原敬之さんがステージに。聴き覚えのある曲ばかり演奏される。ロック畑を歩んで来た自分も耳に馴染んでいて、改めて槇原さんのメジャーさ加減が凄いと思った。
 そういえば去年の音博でも雨の中で拝聴したな、あの時の雨対策は手薄で寒かったとか、色々と思う事が多かった。
 セットの最後に「四つ葉のクローバー」最初に登場した羊文学の塩塚さんが、京都のタクシー「ヤサカグループ」の表示灯が四つ葉のタクシーに乗ったそうで、何か良い事があっただろうかと思った。

ステージ脇のディスプレイ。

 梅小路公園、太陽が沈んで、辺りが暗くなって、ステージの両サイドに設置された、大きなディスプレイからの明かりが眩しくなった。そうして本日最後のステージの転換の場面で、次が本日の最終の演者「くるり」。転換の時間が15分と短いのはどうしてだろうと思っていると、ステージの際から出て来た、くるりのセットがまるままステージとなって、少し高くなっていた。なるほど、これなら段取りに掛かる時間も少しで済んで、時間の節約に繋がると思った。
 思っている間に、くるりがステージに。ドラムセットが2セット並んでいて、何が起こるのか期待に胸が膨らんだ。
 昨年は遠くから拝見するより他は無かったけれど、今年はステージの近くまで行けて、そんな感覚も懐かしかった。
 ここのところ、くるりのライブに伺うとお馴染みのメンバーがステージの上に居て、佐藤さんが5弦ベースを持っていると、演奏される曲の見当が付く、様な気がする。それでさっきのハナレグミのお客さんを思い出して、自分も人の事は言ってられないと思う。
 一曲目が「琥珀色の街、上海蟹の朝」。思わずサビの部分で蟹さんポーズ。「ええな、雨の音博」と思いながら拝見。雨合羽を叩く雨の音がスピーカーからの音に掻き消されて、聴覚の雨降りは消した。
 雨が降らねば音博じゃない。周到な段取りが功を奏して、そんな事を思う様になった。
 それから「ワールズエンド‧スーパーノヴァ」雨合羽を纏いながら、リュックサックを背負いながら踊る。歌って、踊る。もうビートマシンと化した。
 それからギター2本の絡みが美しい「Morning Paper」と続いて、「潮風のアリア」で美しいものに出会った時に出る様な溜息をついた。と同時に香川県は観音寺市の有明町を思い出す。
 そして待ってましたの、ドラムに森さんの姿。音博で拝見するのは2度目になるだろうか、そして、今年の2月の終わりに京都は拾得で拝見した時には、こんな事が起こるとは全く想像出来ず。まだまだ冷静に考えられない、くるりが森さんをドラマーとして起用してアルバム「感覚は道標」を完成させた事が素晴らしいアルバムだった事が。
 等々、思いは溢れる。
 それまでドラムを叩いていた石若さんは、リズムに彩りを加える様に、いつだったかのくるりのツアーでドラムにクリフさんのドラムで演奏する森さんの様に見えた。
 そうして新しいアルバム「In Your Life」「California coconuts」「aleha」「世界はこのまま変わらない」と演奏されて、新しいくるりを拝見出来た気がした。昔の森さんが在籍していた頃の曲は演奏しないのかと思っていたら、最後に「ばらの花」が演奏されて、京都音楽博覧会2023の一日目が大団円。雨の中、感慨深くなった。

 良い一日をありがとうございました。

また、明日。

 いつもの音博と違って、辺りの雰囲気が少し緩い様な気がしたのは、明日もここで京都音楽博覧会2023が開催される予定で撤収せずに済むからだろうと思った。

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