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非常にはっきりとわからない

千葉市美術館で開催されている展覧会、目[mé]の「非常にはっきりとわからない」に行った。

この展覧会では、わからないことをわからないと言っていい。最初からわからないことをわかって入ってきているのだから。わかりたいと思いながら歩いていると、展示物が目に入ってくる。足音が耳に入ってくる。私はそこに物があることがわかる。物の形状がわかる。物の色がわかる。全てはわからないが、わかることもある。

「こわい」と言っている人がいた。わからないことはこわいことなのかもしれない。

「わからないと言っている人は、急いでいて一部しか見なかったのかもね」と言っている人がいた。その人は何がわかったのだろう。わからないと言っている人は何がわからなかったのだろう。わからないの定義は人によって違って、わからない。

体は一つしかないので、見えない部分がたくさんある。どの場所にどれくらいの間身を置くかは鑑賞者に委ねられている。わかるかもしれなかったことをわからないままにして、私は美術館を後にした。

この世界で起こっていることも、目の前の人が思っていることも、自分が考えていることも、実ははっきりとはわからない。わからないものだと受け容れられたことで、励まされたような気がした。

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