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カムバック準備中

仕事を辞めて8ヶ月が経つ。今はアルバイトをしたりしなかったりしながらアイドルを目指している のだろうか。

今年のはじめに仕事を辞めるということがまず決まり、他に働きたいところも特になかったので、今浮かんでいるやりたいことを実現していこうと思った。
最初は、儀式を作ることだった。それは去年友達の結婚式に参加したことをきっかけに思いついたことで、結婚するかしないか、するとしてもいつになるかわからなくても、結婚式のようにみんなに祝福されみんなに感謝を伝える機会としての儀式を作る、というアイデアだった。儀式のルールを決めて友人たちに参加してもらい、映像作品を作るイメージをしていた。
内容を考えていくうちに、アイドルという要素を組み合わせられそうだと思った。以前noteに書いたように、私にはアイドルになりたいという思いがあった。自分が主役となる儀式はアイドルがステージ上でパフォーマンスする様と重ねられるのではないか。そしてそれをMVとしての映像作品にするのはどうか。ストーリーや小道具、衣装などは自分で考えつつ、映像をやっていたり曲を作っている知り合いに声をかけて一緒に作ってもらおう。儀式をアイドルになる儀式とし、MVという建て付けにしよう。
と、気付けば自主制作アイドルを目指すことになっていた。

今まで月2回コースだったダンス教室は、受け放題にして月10回くらい通うようになった。儀式に関する本や、アイドルの本人視点、スタッフ視点、ファン視点の本を読み、アイドルのグッズを買ったり現場に行ったりし、先輩や友達に相談しながら企画書を作った。しかしダンスはなかなか上手くならないし、企画書もイマイチ面白くないから次のステップに進めない。働かないとお金がなくてやっていけないこともわかってきた。そこで、美術も自分で作れるようになりたかったし映像美術のアルバイトを始めた。

そんな中、あるオーディションの噂が飛び込んできた。Twitterでつぶやかれた非公式な情報によると、思い入れのあるオーディションが来年の秋頃に開催されるかもしれないらしい。開催の有無もわからない、年齢制限に引っかかるかもしれない。それでも1年だけ挑戦してみようかなと思った。
Youtubeで様々なアイドルの動画を見たりアルバイトをする中で、私が好きなのはアイドルじゃなくて予算が潤沢なアイドルなのかもしれない、自主制作では限界がある、とまだ何も作ってないのに思ったことも影響したと思う。
あと、最初から既存のものとは違う新しいアイドルを作り上げようとするのではなく、一度正面からアイドルを目指してみたいとも思ったのだ。

ボイストレーニングに通い始めた。ダンスはほぼ毎日通うようになった。自撮りの練習を始めた。似合うメイクをプロに教えてもらってメイクするようになった。ダイエットのために筋トレと食事制限を意識し始めた。

少し上手くなると、下手な部分にも気付くようになる。ダンス教室のレベル分けが易しい方から順に「超入門・入門・初級・中級」で、なんて謙虚なんだろうと思っていたが、今ならその理由がわかる気がする。
自分より可愛くてダンスが上手い子はめちゃくちゃいることにも気付く。自分が一番可愛くて一番ダンスが上手いと思っていたわけではないけれど。
久しぶりに会った友達には、痩せて綺麗になったねと言ってもらった。嬉しいけど複雑だ。痩せていなくても綺麗 がいい。食べたいものを我慢して辛い思いまでしてなんで痩せなきゃいけないんだろう。今や色んな体型のモデルが活躍するようになってきているのに、アイドル界が頑なに痩せている姿だけを美しいとするのはおかしい。でも選ばれるには、向こうの基準に合わせなければいけないのだろうか。
体型よりもパフォーマンスを売りにしたいと思うが、ぜーんぜん実力が足りない。練習や努力が足りない。そのくせに努力しないと手に入らないものをほしがっている。努力してるかのように見せることだけ知っていて、見せているものが全てで、裏では何にもやってない。全て自分が招いていることなのに、そんな自分に絶望する。
こんな不確かな道を選べるのは特権であることと、特権を持った自分が選んだ道なのに苦しく救われたいと願ってしまうことに挟まれて身動きが取りづらい。

何もかもが上手くいってないように思えて、立ち止まらずを得なくなって、「なぜアイドルになりたいのか?」という質問にも上手く答えられないことに気付く。なんでだっけ。

一番最初にアイドルになりたいと思ったのは、JO1のコンサートへ行ったときだった。大勢の観客と共に開演を待つ間、そしてメンバーが登場しパフォーマンスを始めた瞬間、湧き上がってきた感想が「アイドルになりたい」だった。彼らのように大量の光を浴びて、自らも光を放ちたい。真っ直ぐに全力を出したい。輝きたい。そう思ったのだ。

輝きたい というのは大学生の頃からずっと抱いている願いだ。数回自分が輝けたんじゃないかと思ったこともある。だから、アイドルにならなくても輝けることも知っている。私にとって輝くとは、楽しみながらいきいきと何かをしている状態のことだ。大学に入って、目を輝かせながら自分の仕事のことについて話す大人と出会い、自分もそうなりたいと思ったのだった。
大学ではダンスや芸術祭やビジコンなど興味のある色々なサークルに入ったが、研究が第一だと決めていたので、ある程度経験できたなと思ったら辞めた。そして、大学で専攻していた分野に近い会社に入社した。
そこでいきいきバリバリ仕事するつもりだったのだが、思い通りにはいかなかった。それまで好きで勉強してきたことのはずなのに、何だか興味が持てない。周りの人たちは、大変な中でも自分の好きを絡めながら働いているように見えて、自分がそうでないことが辛かった。

「人生でやりたいこと、格好良く踊れるようになることしかないな」

という思いを反芻させながら自宅までの道を歩くのが、いつからか日課になっていた。仕事ができることよりも、自分の身一つで踊れることの方が、失いづらく確かなことなんじゃないかと思ったりした。
ダンスだけはやりたいと思えた理由の一つが、アイドルたちがパフォーマンスする姿に憧れたからだった。

アイドルは、小さい頃から何年も練習生として全てを捧げ実力と運を兼ね備えたほんの一握りの人しかなれないものだ。24歳からその道を目指すのは、現実的でなく望みは薄い。でもそれでよかった。現実から遠いところへ行ったら、過去と未来を一旦切り離して今だけを見たら、私は生き延びられるんじゃないか。この先の人生に役に立たないかもしれないからこそ、今唯一興味があると言えるアイドルを目指してみようか、という気になった。

アイドルの中でも、私は(G)I-DLEのソヨンのようになりたいなと思う。リーダーのソヨンは自分でグループやアルバムのコンセプトを考え、事務所にプレゼンし、自分たちで楽曲の制作も行う。最近リリースした「Nxde」では、ありのままの姿をヌードという単語で表現し、ヌードをいやらしいものとするのはその人のまなざしや価値観の問題だと皮肉る歌詞やパフォーマンスをした。そして、(G)I-DLEの韓国での正式名称が「女の子たち」であることから、「子ども ヌード」「女の子 ヌード」などの検索結果が従来のわいせつなウェブサイトや画像ではなく、(G)I-DLEの楽曲に関する情報が表示されるようになったのだ。
アイドルの影響力を理解し、自分の信じる価値観を表現をする姿が、とても素敵だと思った。


私には大層なメッセージなんてないし、誰かを勇気づけるなんておこがましいんじゃないかと思ってしまうけど、自分のための小さな声なら発することができるかもなと近頃考えている。
アイドルはアイドルを見る人たちの心の支えという役目を負っている。アイドル自身の健康も問題になっているが、アイドルだけが癒しの方法になるのではなく、ファンと共にメンタルヘルスを考えていくことができたらいんじゃないか。アイドルになったらそんなことをしたいなと頭に浮かべながら、今アイドルじゃない私でもゆっくり挑戦してみよう。

昨日は作曲レッスンの1回目だった。ここ最近、沢山のことを始めすぎていて良くないのではと悩んだりもしたが、自分はやりたいことは全部試してみないと納得できないのだとわかった。きっと最初は楽しくて、でも少しするとそう簡単には上手くいかないことに気づいて辛くなってくるだろう。だけど何だってすぐに結果は出ない。ではそこで、長続きさせるにはそのための環境を整える必要があるのでは!と数日前ひらめいたので、これからお金や時間の使い方を考えようと思っている。

ここまで書いてなお、アイドルを目指すと人前で宣言するのはやめようかと、ここまでの文章をすっかり消してしまおうかという気持ちが割って入ってくる。でもこれは自分にかける呪いではない。何がなんでも全てを遂行しなくてもいい。アイドルがやりたくなくなったら、自分の好きなように辞めてやろう。

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アドベントカレンダーの今年のテーマ、「2022年のわたしと来年に向けて」の文章でした。


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