tacicaのライブに行くと元気になれるのか
tacicaのライブに行ってきた。ソコハカツアーファイナル。東京キネマ倶楽部。
ライブ序盤のMCで猪狩さんがこう言っていた。
「元気ですか。元気じゃない人も、元気になって帰ってください。……まあ、そういうバンドじゃないか 」
この一言が印象的だった。
実際、このMCは結構ウケていたし、私も(元気になるタイプのバンドなんだっけ?)と首を傾げたのを覚えている。
tacicaのライブに行くと元気になれるのか
元気になる、というのは、少し違うように思えた。
例えば、温泉に入った時のような。
100%リラックスに全振りしているわけではないが、ニュアンスは『元気』よりも近い。
日々生きていると溜まっていく、澱や、粗熱、また筆を洗った時の水ような濁り。そういうものが無くなって、自分自身の本来の色が見えてくる。そんなように感じられる。デトックス……とも少し近いかもしれない。
勿論ライブに行ったからといって慈愛に満ち溢れた素敵な人間になることもなり続けることもできないし、相変わらず仕事はイライラするし、満員電車は疲れるし 、家族との会話に辟易する。でもそうやって『日常』を過ごしていけるだけの『自分の色』を思い出させてくれる気がする。
排気ガスや頑丈な哀しみ、目の眩むのような劣等感 。そういうものにも少しだけ渡り合える気がする。薄汚れてくたびれた体を抱えて、 今もまたtacicaの音楽を聴き、次のライブを月を見上げながら待つ。そういう感じ。
例えば、「生きていても良いのだ」と思い出させてくれるような。
tacicaの歌詞は難しい。
『tacica 歌詞』で検索しようとするとサジェストに『意味不明』と出てくるくらいには難しい。
最近の曲は比較的分かりやすくなった気もするが……やはり私には難しい。
歌詞を読み込んでも解らないことが沢山ある。それでも、その上で、私は、そう思う。
元気と言うほど突き刺さるような目映い輝きはなく、勇気と呼ぶほどの青臭い力強さもなく、肯定とするほどの堅苦しさもなく。日々を生きていく中で薄ぼんやりと忘れていく、形のおぼつかない 『生きている』という実感。それを思い出させてくれる。
命令でもない、押しつけがましさのない、遠い遠い距離のある許可。みたいな。
※尤も2つ目については……もしかすると泥の中で目を閉じているような気持ちになっているからかもしれない。ここ1ヶ月以上、息を潜めて生きている実感があった。
5年以上やっている大好きなソシャゲが突然終わる宣告を受けた。そんな後に行ったライブだからかもしれない。
たかがソシャゲ。されど。
赤い血が滲む体には良く利く。かもしれない。
結局のところ。
tacicaの歌詞は難しい。きっと私は全然理解出来てない。
小西さんの時に自由な、時に冷静なベースが大好きとはいえ、音楽についての教養やバンドサウンドについての知識もない。
だけど、解らないなりに噛み砕くと、好きだってことはよく分かる。
『人間というのは、行動においても思考においても、自分で思っているほど一貫性というものを保てない』と最近読んだ本(宗教を「信じる」とはどういうことか)にあった。難しさが却って人間らしくあるように思えるのかもしれない。
tacicaの曲を聴いても、ライブに行っても、元気にはなれないかもしれない。
けども聴いて良かった、ライブに行って良かった、出会えて本当に良かったと毎度実感する。そういう気持ちにさせてくれると、そう思う。
いいや違う、元気になれるだろうと思う人は、tacicaの良いところや好きな曲と一緒に素敵なエピソードを教えてほしい。
そもそもtacicaの曲をそんなに知らんという人は、YouTubeや各種サブスクから聴いてみてほしい。
可愛くてたまらない『ナニユエくん』のいる新曲『ナニユエ』
5/6(土)ライブの有料アーカイブもおすすめだ。これ観ながら/聴きながらこの記事を書いた。アーカイブは5/13(土)23:59まで。
※販売は5/13(土)21:00まで。
色々とごちゃごちゃ書いたけども。
わたしはやっぱりtacicaの音楽が好きだ。
ここまで読んでくれて、どうもありがとう。