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ば~れすくvol.1の裏側

『くだらない事で何時間でもずっと喋っていられるような
気を遣わないけど、気の置けない、そんなお友達が欲しい』

人付き合いがポンコツだった私の願いが叶ったのは
小学校でも中学校でもなく、高校時代。
しかも、最後の1年間でした。

5月。
担任の先生をして
「大学の友達はね、やりたいことが同じだから、ライバルなの」
「だから、どうしても商売敵(しょうばいがたき)になっちゃう」
「でもね、高校の行事を通じて出来た友達は、一生の友達になるのよ」
と、言わしめた、高校生活最後の体育祭の役員決め。

正直なところ、『そんなばかな』と思っていました。
いえ、先生の言葉が本当だとしても、
役員決めを短時間で終わらせるための方便だったとしても
どちらでもよかったのです。
私にとっては、泣いても笑っても、最後のパネル作業のチャンス。

体育祭ではチームごとに競技を競い合いますが、
チームの色をイメージした巨大な絵を応援席の後ろに掲げます。
この大きな絵がパネルです。

中学校入学から毎年、毎年、パネルに絵を描く係をやっては、
「もっと自分には”やりよう”があったはず」
「次回パネル係になったらもっと、こうしよう」
順調に後悔を、毎年、毎年、積み上げてきました。

高校卒業後の進路を調べる中では
体育祭にパネルを掲げる大学を、
私は見つけられませんでしたし、知りませんでした。
最後のチャンスは、今年の体育祭。1回こっきり。
さぁ、追い込まれました。

抱え、積み重ねてきた後悔を、一生の後悔にするのか、
知識として活用し、後悔を活きた経験に昇華できるのか。

「今回、とにかく後悔しないようにパネルをやり切る。」
その目的を達成するために、
今まで培った、パネルに対する自分の
”わがまま”や”こだわり”が、
優先される環境を用意する必要がありました。

”ある程度意思疎通の可能な”人間だけで
パネル係のメンバーを固めてしまうことが理想的です。

4月にクラス替えしたばかりのクラスでした。
見知った人が少ない中。
まずは、
こちらを頻繁に振り返っては話しかけてきてくれた前の席の子。
次に、
そのお友達で、私を一目見るなり、
「ねぇ、あなたガタケの会場に居たよね?」
と問いかけてきた子。
そして、
その2人の共通のお友達たち。に声を掛けました。

「絵、描かなくても良いから」
「私の指示通りに、塗るのを手伝ってくれるだけで良いの」

私の友達じゃない。
数度言葉を交わしただけ。
頭数を揃えただけ。
絵の心得なんてそっちのけで、寄せ集めただけのチーム。

なのに、蓋を開けてみれば、連日連夜、
学校でも、オンラインでも、ミーティングをし、
デザインも、色も、背景も、塗り方も、
検証に検証を重ねて、チームで模索を繰り返しました。

私の熱意と後悔は
寄せ集めのつもりだったチームのメンバーによって
私だけではとうてい到達できなかったはずの
高みに押し上げてもらったのでした。


体育祭は6月に終わりました。大成功でした。
とても素晴らしい評価を得ました。でも、
いえ、だからこそ。

私は、私の後悔は総て、昇華され、消化され、
もはや心残りも無く。生きる目的を失いました。

私は、もともと、”生きている”という感覚が希薄で
自分自身が大嫌いだったのです。
性格も。見た目も。
だからといって
自殺するほどの勇気もなく、ただ、ただ、
「なぜ、生きているんだろう」の問いを抱えたまま
なんとなく日々を過ごしていました。

「パネル」に関する執念と、心残りとで、
無理やり日常生活に自分を繋いでいたのだ、
と気付いた時には、総てが終わっていました。


「もう、自分の人生がいつ終わっても後悔しない」
ひどくぼんやりと、自棄的に過ごしました。
毎夜毎夜、好きな動画を探して、見つけて、保存して。
学校に行っては授業中に眠り、落書きをしていました。

パネル作業を通して仲の良いグループになっていた
”私たち”は、休み時間の度に教室の一角に集まって
ゲームやインターネットの話で盛り上がり、
家に帰った後は、食事や入浴の合間にメッセンジャーで、
寝るまで、文字で会話し続けました。

「実は、お話を書いている」
「自分のサイトを持っている」
「イラストを描いているんだ」
グループの皆から、そういった話が出てくるようになって、

たくさんの小説やSS(ショート・ショート=ごく短いお話)を
読ませてもらい、感心し、感想を送りました。

サイト同士をリンクで結び合って、
情報交換をたくさんしました。

たくさんのイラストをみせてもらい、
お互いの好みを反映させたイラストを描き、
交換し合いました。

気付いたら、12月が始まっていました。
このまま順調に時間が過ぎれば3か月後には離れ離れです。
「せっかく仲良くなったのに、お別れなんて哀しい」
「生きる目的が無いのなら、人為的に目的をつくろう」
「仲良くなったみんなの、特技が活かせる場を作ろう」
「そもそも声を掛けてもらった理由のガタケに出よう」
「ガタケットのたびに集まれたら、交流が続いていく」
受験生だけども、今から企画したら、きっと間に合う。


「一緒に、ガタケに出店しよう!」



受験が終わったら一緒に出よう!
ジャンルはどうしようか?
グループの中で、プレイした人が多いゲームがあるね、
そのゲームを作ってる会社の著作の二次創作にしよう!
サークルの名前どうするの?
1回聞いたら忘れられない名前が良いな~
それでいてカンタンな名前、でも、
メンバーやジャンルに関連するような名前!!
何を売るの?
ラミネートカードとか!
今回は受験生だから、様子見の出店だよ!
次回以降どんな商品を売るか、2回目までに考えよう!


でも、ペーパーが欲しい!!
初めましてでも、サークルの名前を覚えてもらえて、
お家まで持ち帰ってもらえる、クオリティの高いペーパー!

2005年3月21日ガタケット80
”私たち”が初めて、ガタケットにサークル参加した日。

スペースに置ける椅子は
追加用の椅子を含めて2つだけのルール。
メンバーが4人もいて、
様子を見がてら手伝いに来てくれた子もいて、
スペースから人間がはみ出していました。

非日常のはずなのに、いつものメンバーだから
まるで、いつもの続きみたいでした。

わちゃわちゃしてて。とても楽しかったです。

本なんか出せるほどの能力は無くて、
売り物は
イラストをラミネートしたカードと、
何枚か描いたイラスト色紙だけ。

それでも、「よろしくね!」の気持ちを込めて配った
フルカラーのペーパーが、とても誇らしかった。

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