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「りりちゃん」の判決に関して、現行の司法制度について学んでみる

「いただき女子りりちゃん」が懲役9年罰金800万円となったのは、特殊詐欺が蔓延して一向に減らない故に重罪となった「詐欺罪」として立件され、検察の求刑が懲役13年罰金1200万円と申し渡された以上、現在の司法制度からすればそんなものかとは思う

過去に違法行為を重ねていたわけでもない初犯だから、執行猶予となってもよかったのではとも感じるが、何しろ求刑が重過ぎるから実刑は免れ得ない

罰金に関しては、支払えない場合は1日5000円換算で拘置所や刑務所で寝泊まりしての「労役」が課されると決められている

しかし、僕がチラッと見かけただけで不確かかもしれないが、今回の判決では労役に関しては1日4万円と換算されたとの情報が正しいとすれば、それが裁判所による最大限の温情でもあったのだろう

労役をする人の扱いは懲役と大して変わらず、普通に換算すると労役4年以上となる罰金を課されているので、事実上刑務所に13年収監されることになるが、大甘の換算で計算すると200日と大きく縮まって、仮釈放なしで判決が確定するまで犯罪者としてではなく拘置所に収容された日数が未決勾留として懲役期間に算入されるので、おそらくその分でほぼ消えているはずだ
(ただし現制度下では、未決勾留日数が懲役期間に算定されても丸1日分とはならないが…)

女性受刑者はそもそも数が少ないので、男性が収監される刑務所とは違い、重罪犯や再犯者も一緒くたにされてしまうため、他に違法行為があったわけでもない彼女の苦労を思うと可哀想なことになるのは目に見える

男性の場合は、「殺人罪」等で10年以上の判決を受けた人たちばかりが集められた「ロング」と呼ばれるタイプと、暴力団構成員以外のほとんどの初犯者が収められるAタイプの初犯刑務所、再犯者とヤクザ及び外国人がまとめて閉じ込められて厄介な人たちが揃う大型のBタイプの刑務所にそれぞれ分けられる

交通刑務所がなくなって、不幸にも交通事故で人の命を奪ってしまったために初犯刑務所に居るのは犯罪者とは呼びにくいごく普通の人たちで、彼らを除くとだいたい似たもの同士が各刑務所に集められているとは言えるものの、これらの人たちが全部一緒くたになっているのが女性刑務所で、故に懲役期間をやり過ごすのは難しいとされる

判決が言い渡されたその場で心身の調子を崩してしまった彼女は、刑務所では独居房となる可能性がないでもなく、それが現実的に最も望ましい唯一の刑務所生活となる

詐欺罪に対して厳しい刑法の改正がなされて以降、長い期間の懲役が課せられ、従来なら執行猶予が付いた「受け子」のような下っ端でさえ一発実刑となる現在では、これまでならば他の罪状で逮捕されてきた人たちも軒並み詐欺罪とされてしまうようになった

僕が見たケースでは、顔見知りの知人たちから集めたカネで無届けのまま私的なファンドを運営していた70歳代の人で、その手ならばほとんどのケースで出資法違反とされてきただけに記憶に残っている

数千万円の被害額を出した「詐欺罪」なので彼は懲役7年を打たれており、詐欺罪とはかなり厳しいものだなと実感したものだ

となると「りりちゃん」の懲役9年は妥当となってしまう…

更に言うと彼女が本当に気の毒なのは、4000万円もの巨額の税金を納めなければならないことで、税金だけはたとえ自己破産しようが絶対に消えないから、ようやく出所してもほぼ間違いなく支払い不能な税金を要求され続けながらの一生となり、これでは更生したくともたいへん困難で過酷な状況に陥る

むしろこちらの方が彼女の人生にとって厳しい過ぎる重荷となることは間違いないだろう

性犯罪との比較で量刑相場が重過ぎるとの意見をXでよく見るが、僕もまったくもってその通りとしか言えない

更には、そもそも「りりちゃん」は懲役9年を課される犯罪者なのかとのとても興味深い問題提起を、懲役太郎氏が語っている

一見長い動画だが、基本的に彼の配信は聴き流すものになっており、それほど苦にはならないので一聴をお薦めしたい

詐欺罪が重罪とされたことで、「受け子」と呼ばれる一番下っ端で逮捕される可能性が最も高いリスクを負うものの、犯罪全体の構図で見ると極めて軽い役割しか担わされていない人たちも、執行猶予はつかなくなり一発実刑で刑務所に送られるようになった

しかし、「受け子」たちのほとんどは、そんなことに手を出すアホであるとされても仕方はないとしても、ほとんどはそもそも犯罪と縁のなかった人たちで、彼らの人間性を現す雰囲気も反社や半グレとは明らかに異なり、普通の若い子たちで占められている

最近増えている半官半民で運営されているところはすべて独居房だが、従来から運用されてきているほとんどの刑務所は雑居房がほとんどで、アウトローとして生きることで覚悟を決めた反社や半グレからロクでもない悪いことを教えてもらったり、出所しても元受刑者というスティグマは消えずまともな就職口はなかなか期待できないという事情もあるので、彼らから見どころがあると看做されたらスカウトされたりする、まさしく犯罪者養成学校というのが実際のところだ

二度とやらないとばかりに反省して、各種の資格取得のために勉強しているような人もいないではないがかなり珍しい類に入る

一向に減らず手を変え品を変えながらむしろ拡大を続けている特殊詐欺を押さえ込むために重罪化されたとはいえ、刑法全体のバランスで見るならば「詐欺罪」の量刑相場が突出して重くなっており、しかも逮捕収監されるのはほぼ一番下っ端の「普通の子」たちとなると、この改正に意味があったとは僕には到底思えない

懲役太郎氏が、「りりちゃん」に関連して極めて真っ当かつ説得力を持ってこの件についても語っていて、現在の司法制度に関する問題点の一端を理解するならば必聴と断言できる

YouTubeはカネ目当てだと明言する元ヤクザの懲役太郎氏は、実はどんな事案に関してもほぼ真っ当な判断を下していて、それは本末転倒という以外の言葉もないとしか思えないが、現在の社会とは押し並べてそのように転倒したものなのだということなのだろう

11分と短くまとめられながらも、誰にも要点がわかるよい内容となっているので、こちらの方も一聴をお薦めしたい

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