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解き放つためのアトリエ

先週オープンしたオンラインショップのオリジナル商品やペーパーデザインはTREE2林よしえさんにお願いしています。おおきな木のロゴマークから、KOMONESTのデザインも林さんです。

他にも、イベント、プロジェクト、企業など林さんにお願いしたデザインワークはかなりの数です。

基本的には、そのブランド、その場にあったデザイナーをマッチングさせていますが、林さんはおおきな木を立ち上げて最初に出会ったデザイナーさんであり、林さんなしでは今のおおきな木はなかったと言っても過言ではないくらい大きな存在です。

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林さんは私のような雑貨好きが昔から聖地のように崇められている代官山ギャラリー『無垢里』の上で製図を書くなどのお仕事をしています。時々、ご自身もここで展示会を開いています。この展示会に行って、すぐに林さんのデザインが大好きになり、その場でおおきな木のとロゴマークをお願いしたところから私たちの関係は始まっています。それが11年前のこと。

その直後に、赤塚福祉園の商品のパッケージのデザインを林さんにお願いしたところから、林さんが福祉の世界に入ってくれることになりました。

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photo by Hisako Kawamura

このころは、板橋の産業×福祉×デザインで商品ができないかと考え、活版印刷の会社さんに印刷をお願いしたり、できるだけ板橋区内の印刷業の方と付き合いを持てるようにしたりと、町工場を訪ね歩いていました。今でもそのころにつながった工場の方とお仕事させていただいています。

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2009年に私が小茂根福祉園のアドバイザーになり、その秋にカレンダーのデザインの相談がありました。そこで、林さんにデザインを依頼をしたところから林さんが小茂根福祉園のデザインを担当してくれることになりました。
 ※右のパソコンの写真のカレンダーが最初のカレンダー

赤塚と小茂根との関わりからはじまり、はじめての福祉、障害のある人たちとの付き合いが一気に深まった林さん。あるとき、障害のある方の様々なことに心が縛られているのかなと思う姿を見て、「心を解き放つ場をつくりたい!」という想いにかられ、小茂根福祉園にアトリエ活動を持つことを提案しました。

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それから林さんは、毎週木曜日に小茂根福祉園に通い、10年が経ちました。

アトリエは、毎週、4,5人が参加し、思い思いに好きな絵を描いています。林さんからモチーフになる冊子などを提供してもらい、それを見ながら描く人もいます。

林さんもみんなの好きなものや、こだわりなどもよく把握しているので、みなさんが落ち着いて参加でき、とても穏やかに楽しそうな時間が保てています。

林さん曰く、林さんは管理人。特に絵を描くことを教えることもない。参加する皆さんは、描いてほめられて、商品に採用されることもあります。皆さんが自ら上達していったり、心を解きほぐしていき描く表現が変わっていったりしています。

そこに最初の狙い林さんの想いがあったので、アトリエはいい活動になったのではないかと思います。

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それから、林さんはシルクスクリーンの作家でもあります。今のKOMONESTの商品化が発展したのは、シルクスクリーンの導入が大きな柱となったからです。

シルクスクリーンって何?と先日、オンラインショップを見て聞いてくれた大学生がいたので、ちょっと解説しますと・・・

シルクスクリーンは、印刷の技法のひとつです。版をつくり、インクを乗せ、スキージと言われる道具を使って、紙や布に刷り込みます。

簡単なようで難しいこの作業は、最初は林さんが主導し、何度も経験するうちに、職員さんたちでもできるようになりました。

主にアトリエでできたイラストをシルクスクリーンで刷って商品化をしています。

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                      photo by Hisako Kawamura

この10年間、職員さんたちも利用者の方たちも随分入れ替わりました。私たちが生き字引になってしまいました。そして、今年度はアトリエは開かれていません。

今は、オンラインショップの仕入れや納品時にやりとりがあるだけです。今年度は感染防止のため、この先外部の私たちは入れないかもしれないですね。

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今年に入って、creation space en∞jukuで、林さんとアトリエえんじゅくという活動をはじめました。

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                           photo by 丸毛透

小茂根福祉園ではこうした活動がありますが、福祉事業所によっては、こうした場づくりがなかなか進まず、地域にこうしたアトリエが必要だと思い始めてみました。

林さんがいるので、小茂根でやってきたように、ここに通う障害のある方の作品の商品化も考えています。

そんな矢先、この状況になり、今は実施ができていませんが、少しずつでもやれるようになったら実施をしていくことが必要になるだろうと考えています。今、多くの方が在宅待機となっていて、今後も通所が叶うのかどうかわかりません。

私たちは完全な民間で任意団体です。なんの後ろ盾もない分、自由です。この余白のような場が今とても貴重だと考えています。

この有事の状況下、ますますこの場が柔軟に課題を解決していく何かを実現することが少しだけ叶っています。そして、オンラインショップをつくったことで、またこの活動の可能性が広がったと感じています。

その先駆けがこのマグカップです。

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                      photo by Hisako Kawamura

今回、この「Stay home」な中、うちで楽しめるアイテムとして、マグカップのデザインを林さんにお願いしました。KOMONESTの作家、TOMOKO INAGAKIさんのイラストです。

今後、このアトリエから生まれたイラストで、オリジナル商品の作成も考えています。

この「Stay home」。家にいろ!的な、大きな強制力を感じさせるワードだなということで、「AT HOME」あくまでも自主的に能動的に家にいて、うちでたのしむをコンセプトにした、ペーパーデザインが林さんの手によってできました。

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オンラインショップがオープンして、1週間毎日このシールなどでお客様のお買い上げいただいた商品をおつつみしていますが、このコンセプトがとても伝わるアイテムだなと包みながら感じています。

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11年前に、おおきな木はリアルショップを立ち上げ、「暮らしの道具屋おおきな木」として開業の準備をしていました。オープンに至らなかったのはいろいろあってのこと。そしてその時に林さんと出会い、今に至りますが、このオンラインショップは、回りまわって原点に還ったかのようです。

また林さんにデザインをしてもらい、しかも私がこの10年で手掛けた福祉事業所のオリジナルだけのラインナップで店ができました。これは当時は考えられないことでした。

また、creation space en∞jukuという場も持て、アトリエも開始し、私たちが解き放たれた場をまた改めてつくるのです。この場の空間のデザインも林さんです。

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林さんだけじゃなく、志を同じく持つ仲間も増え、これからまた充実した場づくりが再開できるのを楽しみにしています。

ちょうど干支が1周する年に、完全に次のフェーズにこの状況が向かわせてくれています。



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