K君のこと(2022年10月18日)

 小中学校で同級生だったK君が職場でいじめに遭い、鬱になって引きこもってしまったという噂を聞いた。
 K君は体も弱く勉強もスポーツも得意ではなく、影のように静かで目立たなかった。だけど私はK君が何も言わず、先生や他の子に気づかれることもなく、みんなが嫌がる雑巾がけや、花瓶の水替えをやっているのを見ていた。人の悪口を言ったり、いじめたりしないのを知っていた。
 学生時代に内申書に書かれることは学業の成績や部活の実績などの事柄だが、今思えばそんなのはちゃんちゃらおかしい。K君の積んできた実績の方が遥かに尊く、価値がある。そのことに気づいた瞬間から、この世界の何もかもがばかばかしく思えるようになってしまった。それからときどきK君はどうしているか考える。

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