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勉強以外の思い出も作ってあげたい

先日、息子の仲良しの友達のママにばったり会い、ちょっとだけ立ち話をした。

「中学受験って、ほんと大変ですよね」
「習い事ってどうされてます?」

といった、本当にたわいもない話。

「塾との兼ね合いで、他の習い事は辞めてしまったんですが、小2から続けているバスケの習い事だけは今も週1で続けています。実は、『バスケを続けたい』という息子の意見を尊重して、小5で塾も変えました(※)。まさか小6になってもバスケを続けているとは思ってなかったのですが、ここまできたら、続けられるだけ続けさせてあげたいと思ってます」
(※前の塾は、5年生の授業日がバスケの習い事と同じ曜日でした。「バスケは中学になってから再開すればいいじゃない?」と、息子と何度も話し合ったものの、「俺は中学のバスケ部でレギュラーになりたいんだ。そのためにもブランクは作りたくない。中学受験の勉強も頑張る」と、息子は一切耳を貸さず、私が折れて、別の塾を探した形です。)

という話を私がしたら、

ママ友は一瞬ビックリした後、

残りの小学校生活、勉強だけじゃない思い出も作ってあげたいですよね

と、私の目を見て、しみじみと言った。

実は、ママ友の息子さんも、塾の他に、ピアノを続けており、うちに遊びに来る時も、ピアノのレッスンがある日は、ピアノに行く時間になると、サッと帰宅する。

きっとピアノが楽しいんだろうな、受験勉強とピアノを両立しててすごいな、と思っていたところ、その背景に、「子どもには、勉強以外の思い出も作ってあげたい」という親の思いがあることを知り、すごく共感した。

少子化にも関わらず、中学受験は相変わらず厳しくて、6年生になってから一気に勉強量や勉強時間も増え、近くで伴走している私から見ると、みんな本当によくやっているな、と感心する。

とはいえ、塾の先生の話だと、こんなに勉強していても、落ちる時は残酷に落ちるから、「まさかあの子が?」といったことも当然起こりうるとのこと。

また、たとえ第1志望に入ったとしても、燃え尽きてしまったり、環境になじめなくて苦労するケースがあるとも聞く。
実際、ある学校の学校説明会で、「データだけではなく、直感や違和感も大切にしてください。相性の悪い学校に入ると、お子様の貴重な中高6年間が地獄になります」と言われ、ぼんやりと想像してゾっとした。

長期休みを除くと、息子が小学校に通えるのはあと8ヶ月程度。

息子の中学受験がどんな結果になったとしても、
「小学校楽しかった!受験勉強もバスケもやりきった!中学生になるのが楽しみだ!」と、来年3月に、息子が心の底から思っていてくれていたら嬉しいな。


そうは言っても、親としては、できれば息子に不合格の辛い気持ちは味わせたくないので、「勉強以外の思い出も作ってあげたい」という方針でいいのか、不安がよぎることもある。

塾の先生からは、「息子さんみたいなタイプは、あまり締めつけが厳しすぎると、いいパフォーマンスが出せなくなるので、多少はゆるめの勉強スケジュールにしておいた方がいいと思います」とアドバイスいただいているものの、絶対的な勉強量というのは確実に必要だし、どこかのタイミングで割り切って、勉強だけに集中しないといけない時がくるかもしれないというのは、息子自身にも言い聞かせている。

そんな中、ある日のバスケの練習の後、コーチから、「息子さんが夏合宿(7月上旬)に行くなら夏合宿に行きたい、と言っている6年生がいるんです」という話をされた。もともと、息子とは、春休みのバスケ合宿を最後に、受験が終わるまでバスケ合宿には行かない約束をしていて、コーチにもその旨話していたので、今回は無理だろうと主人や息子とも話していたものの、「どうしても無理ならキャンセルできますから」と言うコーチの勢いに負けて、ダメもとで夏合宿に仮申込してしまった。
夏合宿のキャンセル期限は今月下旬。息子は行きたがっているが、今月中に結論を出さないといけない。

そんな状況なのに、先日受けた塾のテストでは、まさかの失点がたくさんあり、点数は目標を大きく下回った。私はショックを受け、息子もひどく落ち込んでいた。

「この調子だと、やっぱり夏合宿は難しいんじゃないかな?今までは結果が出ていたからバスケもさせてあげていたけれど、そろそろ勉強に集中した方がいいんじゃない?それか、中学受験をやめて、バスケとか、勉強以外の好きなことに集中するというのでもいいんだよ」という話をしたら、

息子の返事は
「受験やめてもいいけど、それなら学校休んでもいい?」

実は、息子の仲良しの友達は、中学受験する子ばかり。中学受験をやめるということは、息子にとって、小学校での居場所を失うこととイコールなのかもしれない。

なんという世界…

その後、主人とも話し合い、「息子が自分で計画したタスクを、今月いっぱい、毎日全てクリアできたら、バスケ合宿に行ってもいい」ということになった。

「こないだのテストは残念だったけど、本番じゃなくてよかったね。もし本番で不合格だったら、もっと辛いと思うよ。もうこんな気持ちを味わいたくないでしょ?
夏合宿は、あなたが決めたタスクを、今月の間、毎日全てクリアできたら、行ってもいいってお父さんが言ってたよ」

と伝えたら、彼なりに納得してモチベーションが上がったのか、この日を境に、勉強を熱心にやり始めるようになった。

男の子ってそんなものなのだろうか?

私が、中学受験での失敗を何より恐れているのは、私自身が中学受験して、第1志望に合格できなかった体験があるから。仲良しの友達みんなが第1志望に受かって喜んでいる中、自分だけ第1志望に受からず、世界は灰色だった。
恥ずかしくて、塾の先生にお礼の挨拶にも行けなかった。
あの時の辛かった気持ちはいまだに覚えている。

どうすれば失敗するかはわかる。
でも、どうすれば成功するかわからないから、息子にどんな声がけをして、どんなサポートをすればいいか、今とても悩んでいる。

そんなことを、息子が熱望する学校の卒業生でもある、会社の優秀な同僚にボソっと話したら、こんなアドバイスをもらった。

人間、どこかで失敗する時が訪れるんです。

中学受験で第1志望に入れたからって、その後の人生が楽勝ってわけじゃないし、逆に合格したからこそ、辛い経験が待ち受けていることもあります。

失敗するタイミングが、"中学受験"か"それ以外"かの違いなだけ
です。

これを聞いて、「あ、そっか。もし息子の思い通りの結果にならなかったとしても、それで人生が終わるわけじゃないから、親として、中学受験の結果をそんなに重く受け止めなくていいのか」と気が楽になった。

自分にとって重大だと思っていることも、他人から見るとそんなに大したことなくて、見る視点も人によって様々で、だからこそ、対話って大切だなと思う。

失敗を恐れず、息子と対話を続けながら、息子を信じて、大きな気持ちで息子の挑戦を応援し続けられる母でありたい。