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【NFT】「MEME」「CC0」という概念、その問題点(日本限定)

はじめましてのヒトは、はじめまして。
いつもの皆様、こんにちわ。
大葉さんです。

前回のお話

2022年8月頃に起きたAIイラスト系技術の劇的進化がきっかけで、テクノロジー系で育ってきた人と、クリエイター系で育ってきた人の意思疎通に、コミュニケーションエラーが発生しているように思えます。具体的な例を一つ挙げると、AIイラストの学習元として、特定のNFTアートを使って良いかNGか的な観点です。

クリエイター文化で育った方々は「どうしてテクノロジー系の方々は、安易に著作権を無視してクリエイターの作品をAIイラストの学習素材にするのか」と考えているかと思います。おそらくテクノロジー系の方々は「「MEME」として作成されたもの、さらに「CC0」宣言されているものを使えば、著作権問題は発生しない。パブリックドメイン化されている画像だから大丈夫!」と受け取っていると思われます(もちろん、大きな勘違いで間違いなのですが…)

まずは相互理解を深める為に、この「MEME」「パブリックドメイン」「CC0」という概念を説明しようと思います。主にクリエイター系で育ってきた方々には、本内容は心理的に抵抗があるかとは思いますが、まず「こんな価値基準で動いている世界がある」のみを学んで頂ければと思います。

なぜこの記事を書いたのか?

「MEME」「パブリックドメイン」「CC0」の概念。
および、創作物を作成した時点で自動的に発生する「著作権」「著作者人格権」の概念を簡単に説明したかったからです。

本内容は現時点でも議論が重ねられている領域であり、お住まいの地域によって意味合いが大きく異なる場合があるので、何らかのトラブル等で本概念を引用する場合には、必ず専門家に相談し、適切なアドバイスを受けてください。

以降、詳細です。

■「MEME」とはなにか?

「MEME(ミーム)」と呼びます。実は省略文字で、正確には「Internet MEME」という名称になります。

うん、よく分からんですね。MEMEに関しては、こっちの記事に方がわかりやすいです。

つまり、かなり強引にざっくりと言ってしまうと「インターネット上で流行しているの流行りの画像ネタ」のことを「MEME」と呼びます。

最近「風船猫ブーム」を起こしたコレとか

NFT界隈の風刺画に頻繁に使われるコレとか

宇宙猫なんかもMEMEです。

(それが良いかどうかは微妙ですが)日本が世界に誇れるアスキーアート文化やアニパロ(およびMAD)コミック系のセリフ改変文化も「MEME」に分類されます。

「いわゆる時事ネタ、流行語のようなもの」「誰が始めたかわかっているものもあるし、分からないものもある」「なぜブレイクしたのかの説明が難しい」「本来の意味と異なった使われ方をされることが多い」「インターネット上で事実上のフリー素材化し、大衆の手によって複数のバージョンが無限に生成され、呟かれる」

このような特徴を持ちます。

なお「著作権の面でいえばグレーであることが多い」です。訴えられていないだけで、明確な著作者がおり、裁判を起こした場合はおそらく負けます。被告対象が数千人以上になるので現実的に裁判が起きていないだけです。

■「パブリックドメイン」という概念

パブリックドメインとは、知的創作物についての、著作権をはじめとする知的財産権(知的所有権)が発生していない、誰でも利用できる状態ののことです。日本語では「公有(こうゆう)」または「公共に帰した」と訳されます。

(2023年2月時点の日本国においては)著作権は著作者の死後50年または70年をもって消滅し、以降、その制作物は「パブリックドメイン」として扱われます。百円ショップ等で販売されている、格安の古典小説などは「パブリックドメイン化した作品」を印刷販売しているために成り立っています。

その他、継承人の不存在(法人名義で出版しており、会社が倒産した際、当時の著者が全員退職していた、などのケース)あるいは、権利者本人により権利が放棄された場合についても「パブリックドメイン」として扱われるとされています。

世界各国の美術館では、パブリックドメイン化した作品の素材画像提供を行なっていたりもします。詳細はこちらのリンク先などをご確認ください。


一部のMEME作品において、「著作権を気にせず、広く誰もに使って貰いたい」との信念から、「元ネタとなった画像その他を、パブリックドメイン化しよう」という動きがあります。コレが成立すると、該当作品は使いたい放題、編集したい放題になります。法律問題をクリアしており、著作者へのお伺いを立てずに永続的に使える共有素材ができるね、嬉しいねという考え方です。

■「CC0」という概念

該当MEME作品のパブリックドメイン化とセットで語られることの多い「CC0」という概念について説明します。

「CC0」はクリエイティブ・コモンズが策定した「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」に含まれるライセンスのうちの一つです。
クリエイティブ・コモンズ社は「合理的な著作権利用の拡大」を目的として2001年に設立された国際的非営利団体です。

公式サイト(日本語版)はこちらです。

CC0に関する説明はこちら。

CC0について ― “いかなる権利も保有しない”

CC0 とは、科学者や教育関係者、アーティスト、その他の著作権保護コンテンツの作者・所有者が、著作権による利益を放棄し、作品を完全にパブリック・ドメインに置くことを可能にするものです。CC0によって、他の人たちは、著作権による制限を受けないで、自由に、作品に機能を追加し、拡張し、再利用することができるようになります。

CC ライセンスが、権利所有者に著作権を残しながら、再利用の許可を選択できるものであったのに対して、CC0は別の新たな選択肢を提供します。作品の作者に自動的に付与されてきた著作権やその他の占有権を放棄するという選択肢です。他のCCライセンスと異なり、「いかなる権利も保有しない」という選択肢を与えるものです。

CC0は、パブリックドメインとイコールではありませんが、該当作品をできるだけCC0に近づけるために選択するライセンスとなります。

間違って認識されている方がいらっしゃるとお聞きしたので、あえてメモしますが「CC0は二次創作作品の許可を示すライセンスではありません、クリエイターが著作権に関する全ての権利を保有せず主張しないという宣言です」二次創作を許可したければ、クリエイター側は著作権を放棄せず、ファンアート作成に関するガイドラインを明記するだけでOKです。ついうっかりCC0を宣言して、全著作権を放棄しないでください。

CC0を宣言した場合、あなたの作品が海外スパムNFTのイラストに使われたとしても、差し止める方法はありません。著作権を放棄していますので。


【重要】
CC0はクリエイターの希望を宣言するだけなので、お住まいの国の法律等と相反する内容が見つかった場合は「お住まいの国の法律」が優先されます。

たとえば、ドイツの現法律では「著作権の放棄はできないもの」と解釈されるため、ドイツ在住のクリエイターは「CC0を宣言した作品は発表できるが、該当作品をパブリックドメイン化にするには、死後50年以上の時間経過が必要になる」となります。

(※本【重要】項目で指摘した問題は、2023年2月時点の日本にも当てはまります)


■日本の「著作権法」

総務省の公式ページはこちら。

「著作権法」は、著作物などに関する著作者等の権利を保護するための法律です。本文を読み解いていくと、いろんな権利が出てきます。

①著作者人格権

②著作権

③出版権
(著作権項目に含まれる)

④実演家人格権

⑤著作隣接権


②③はセット、文字通り「著作権」の範囲です。
④は、対象創作物がイラストの場合は該当せず。
⑤は、個人でNFTを作っている場合は該当せず、チームで作っている場合はケースバイケースです。

さて、問題は①です、「著作者人格権」
これはいつ発生して、どのように使われるのでしょうか?

■「著作者人格権」という概念

2023年2月時点での日本の法律では、著作物を作成した時点で、クリエイターには「著作権(財産権)」「著作者人格権」の二つの大きな権利が自動的に付与されます。

次に文化庁のサイトに示されている「著作者の権利」を確認します。

・著作権(財産権)(著作物の利用を許諾したり禁止する権利)
こちらは「著作物をどう扱うか」の概念で、クリエイティブ・コモンズの示す範囲と一致します、なので、表示されたライセンス通りに解釈すれば良いと思います。

・著作者の人格権(著作者の人格的利益を保護する権利)
こちらは「著作者本人の人格保護」の概念です。クリエイティブ・コモンズの示す範囲の対象外です。したがって「CC0」宣言されていたとしても「日本国内においては、著作者が「著作者人格権の範囲に含まれる、同一性保持権(20条)」を理由に作品の発表の差し止めを主張する権利を有します」2023年2月時点での日本の法律では「著作者人格権は一身専属権なので、著作者以外に譲渡したり権利を破棄したり出来ません」著作者本人の死亡のみが権利消失のトリガーですが、以後50年は権利が残り続けます。

つまり、2023年2月時点の日本では、CC0とパブリックドメインはイコールではないといえます。

■著作権法(財産権)と著作者人格権、相反してない?一貫性ないよ??

はい、その通りです。これは明確に法律の作り方の問題です。したがって将来的に法改正をもって修正されるべきではとワタクシも思いますが、2023年2月現時点の日本国内においては、この内容が絶対正義です。必ず従ってください。

■ではどうやれば、著作者生存中に作成した作品をパブリックドメインに移行できるのか?

日本国籍を捨てて、著作者人格権を放棄できる国に引っ越せば、いますぐ作品のパブリックドメイン化が可能です。

■そもそもMEMEって、作者不明なのが一般的では?

NFTアートは何ができるツールなのかを、思い出して見ましょう。

ブロックチェーンを遡ることによって、インターネット上でコピーされ続けた画像ファイルのうち「どれがオリジナルで、クリエイターが誰なのか」を証明できるツールですよね。

MEMEの元ネタがNFTアートである限り、著作者不明はあり得ません。

著作者行方不明はあり得ます、たとえばナカモトサトシとかwww

■著作権が発生しないクリエイターに頼めば良いんですよ!

2021年までは笑い話でした。

2023年2月現在は「可能」です。

そうです、AIイラストです。

「創作物に著作権が自動発生する対象はあくまで人間なので」AIイラストのような自動生成系の、さらにいえば2世代目(学習元のイラストが、すでにAIイラストだった場合)は、「著作権」「著作者人格権」は一切発生しません。

そのイラストが、どんなに特定クリエイターの作風を真似しているものだとしても、法律的には2023年2月現在、合法です。そこに感情の入り込む余地はありません。

これから2−3年かけて、日本の法律の修正も視野に入れて頑張らなければならないジャンルです。NFTブームの次に加熱するのは、間違い無くここだなと思ってます(が、私はAIイラストアレルギーが発生したので踏み込めません、あとは誰か頼みました🙇🙇🙇)

■「MEME」の素材と勘違いされないように、NFTクリエイターが出来る事

該当作品を同人誌化、電子書籍化、あるいは個人サイト等に載せる際に「クリエイティブ・コモンズ」のマークをつけて「CC0以外」のライセンス宣言をしましょう。どこか1箇所だけで良いです。クリエイターの方針が伝われば。

「CC0」=「パブリックドメイン」と勘違いされて流用されるのだから、「うちの子たちはCC0ではありません」と宣言すれば良いのです。日本語が読めない人たちにも伝わります。

イラストは全世界共通言語なので。

■事故が起きないように、AI関連エンジニアにお願いしたい事

技術発展目まぐるしい分野なので、学習元のイラストに著作権問題が発生することを前提に、対策するしかないと思ってます。調べた限りにおいて、どんなに注意していても「CC0」という主張していても「著作者人格権」で刺されたら日本国内では1発アウトです。

たとえばの一例ですが「AIイラストを元にしたNFTアートを作成する際は、IPFSに画像を保存せず、著作権的に問題が出たと判断した作品は運営権限でリビールにて画像を差し替える」のような対策を組み込むなどをお願いしたいです。

併せて、AIという技術が活用できるように、日本の法律の改正に向けてアクションを起こしていければ良いなと感じました。


とても長くなり恐縮ですが、本日はここまでです。
では〜〜〜


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