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中央区 入船湯

2020.12.09.

ちょっとした残業の後に、こちらに。
事前に、今日は開店しているかの電話をした際、とても元気な女将さんの声が聞けたので、楽しみに伺った。

途中、かりんとう饅頭などをモグつきながら、大通りをぶらぶら。地図アプリのゴール地点に到着すると、ビルがドンと建っている。古めかしい銭湯かなと思いこんでいたのだが、リニューアル後の銭湯のようだ。先日、勝どきでもビル地下の銭湯もあったので、その仲間かな。階段を下り、いざ入店!

例によって回数券でお支払いし、スタンプをいただく。どうやら、先ほどお電話で話した女将さんのようだ。
おなじみ、姉妹店情報事情聴取スタート。
女将さんのご主人の店主さんで二代目とのこと。新潟ご出身の先代が、新潟から上京し、葛飾の銭湯などで修行後に、元々この地にあった「繁野湯」の施設と営業権を昭和16年に買い取り、先代の弟さんお二人もここで修行後に独立していったのだそう。昭和63年まで営業し、廃業。
そして、マンション建て替えの期間を経て、平成2年からマンション地下で区営銭湯として名前を「入船湯」に変えて再開したのだそう。「入船」というのは落語にちなむのかと思いきや、この辺りのエリア名なのだとか。
「おお、三軒もご兄弟でやっていたんですね!」という感想や、「先代は北陸ご出身でした?」なんて合いの手を入れてあると「あなた、詳しいわね!銭湯やりたいの?」と聞かれ、「あ、ええーっと、ただの銭湯ファンでして、お遍路をしているだけで・・」なんて応える。
以前の外観も、マッサージチェアの横に写真で残っており、立派な銭湯だったことが窺がえた。

お話の流れで、「そんな仕事が大変ですか?」と聞くと、お掃除や生活時間について教えてもらった。ご夫婦はお近くに住んでいるようで、通っていらっしゃるそう。浴場のお掃除は、夜のフロント番で代わるご主人が、閉店後に毎日行っており、フロントや脱衣所は、女将さんがお風呂上りに行っているのだそう。「毎日お湯を抜いて、入れなおすんですか?」と聞くと、循環型のようなので、厳密に全部のお湯を捨てているわけではない模様。
「ちなみにお湯にはゆっくり入るんですか?」と聞くと、「私の性格でゆっくり入るわけないじゃん!」とのことで、「うちは熱湯だし、ささっと上がるの」だそう。ほほう、熱いんですね。楽しみ。

ちなみに、中央区は先日の「十思湯」でも書いたが、「敬老入浴事業」が充実しており、区内の65歳以上の方は区内のどのお風呂でも100円で入浴できるのだそう。参考までに、新宿区は「ふれあい入浴事業」と称され、60歳以上の方は月4回まで無料なのだと思われる。女将さんも仰っていたが「中央区は恵まれている!」というのに納得。
さらにちなむと、中央区住人、在勤者は「ふれあい銭湯」も利用できて、毎週金曜日には区内銭湯を100円で利用できる。該当の方は、ぜひ!

ではそろそろ、なんて脱衣所に。
フロントでは、女将さんが夜の担当でいらしたご主人に「銭湯にすごい詳しいお客さんが来てるのよ。お遍路やっているんだって!」と引継ぎしてくださっている。お風呂上りに今度はご主人を事情聴取しよう。(と思っていたが、こくりこくりと舟をこいでいらしたので、またの機会に!)

脱衣所には、2名のお風呂上がりの方々。おお、こりゃ貸し切りだい!と浴場へ。手前にカランが15席ほど、左手奥に立ちシャワーが3席で、左の壁には永代橋を描いた浮世絵が飾られている。後から来たお客さんが「私、この絵を眺めるのが好きなの」といっていて、すごくじんわりした。
女将さんが話していたように、温度は43度と結構な温湯で、下がつながっている二層式。手前がジェットバス2席、奥が白湯だ。
しばらくすると、70歳くらいと思しきおばあさんが入ってこられ、「一人じゃ寂しいよね」とひとつ空けて隣のカランに。「お嫁にきてから、ずっと通ってるの」と、なんと!50年の常連さんだ。最近は、月水金の夜に来店されているそう。以前の店舗もご存じなのね。すごいよなあ。当時は銀座は既に町だったけれど、この辺りはまだ人もまばらだったのだそう。お風呂には「メンテナンスしに来てるの」と、洗髪後には頭に鉢巻をして、目を瞑りながら、ゆったりしている。少し温まった後、「じゃあね」と声をかけてくれた。「え!メンテナンス早いですね!」とびっくり。

お風呂上りに脱衣所でお話しながら、年齢が今年80歳という事が判明。となると、うちの祖母より少し上か。姿勢もいいし、お元気だし。ご自宅から自転車で5分漕いで通っているのだとか。普段は「文房具店の店番、介護、おさんどんをしているから、忙しいのよ」と仰っていて、仕事の後、そしてご主人の介護の合間に、ここに一息入れにきているだろうと思う。そんな一服時間をご一緒できて、嬉しかったな。「おやすみなさい」「またね」とご挨拶して銭湯を後に。

とても元気をもらえた夜。今度は金曜日に来てみよう。

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