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はたけからうつわまで・白菜

 その白菜は、食べる前から様子が違った。まな板の上にころんと乗った小さめの白菜。白い軸のところがつやつやと輝いている。おや、なんだか美味しそう。思わず、生でかじってみた。あぁやっぱり美味しい。とてもみずみずしくてあまい白菜だった。これはやられた…。またか。またやってくれたな、今堀さんめ!
 その白菜を育てたのは、大阪・能勢の須美ふぁーむ今堀さん。実は、彼の野菜にやられたのはこれが初めてのことではない。丸くてつやつやしたズッキーニに、株ごとのりっぱなセロリ。どちらも唸るほど美味しかった。
 今堀さんの野菜は、特別ピカピカというわけではないけれど、なんとなく他と違っている。それは、あまり写真映えはしないけど、とびきり美味しいオムライスを喫茶店で食べたときの感覚にちょっと似ている。
 私にとって白菜は、好きでも嫌いでもない「ふつうの」野菜。まさか白菜に心を動かされる日が来るなんて、思ってもいなかった。 

●武岡 萌

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