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マンガ監修のお仕事 - FGO食マンガの作り方

 2017年にデビュー作『歴メシ!』を出版してから、仕事の幅が広がりました。その一つにマンガ監修の仕事があります。

FGOx歴史料理のコミカライズがそれにあたります。

監修のお仕事のとあるケースとしてまとめてみたい次第です。

そういえば、監修のお仕事を書いているインターネット記事はないものかと思い探したらありました。

絶滅動物の指の数もチェック!「マンガの監修者」は何をしているのか
『天地創造デザイン部』ここだけの裏話
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56689

監修をやっている者からすると非常に興味深い記事でしたが、それでも音食紀行でのかかわり方とも違いました。が、読者が何をききたいのか的確に書かれているので、その記事を踏襲する形でこちらの監修のお仕事を書いていきます。

現在監修中の『Fate/Grand Order 英霊食聞録』はKADOKAWA社が運営するTYPE-MOONコミックエースで配信中の無料コミックになります。「カルデアのキッチンからお届け?新感覚英霊飯コミック登場!」というコピーがつけられています。

KADOKAWAさん、TYPE-MOONさんとの監修としてお仕事をするようになったのは、FGOファンブック「Fate/Grand Order カルデアエース Vol.2」での
単発マンガからでした。マンガ家のまこと(現・十駒マコト)さんからKADOKAWAの編集さんが連絡を取りたいということで、連絡先を教え、少し経った2018年5月に最初の打ち合わせを行ないました。

その時の企画がFGOに登場する歴史・伝説上の英雄たちが料理を作って食する企画漫画を予定していて、こちらの監修をお願いしたいというものでした。ちょうど、2作目の『英雄たちの食卓』(宝島社)を刊行したタイミングでデビュー作の『歴メシ!』と共に読んでくださっていたのでした。

少し脱線して、自作について簡単にご紹介。

『歴メシ!』については、FGOに登場するサーヴァントではギルガメシュ、カエサル、レオナルド・ダ・ヴィンチ、マリー・アントワネットと本作の全8章中4章の章タイトルに合致するので、FGOユーザーの間で手に取っていただいた作品になったのかなと感じています。

『英雄たちの食卓』はそこからもっと踏み込んで、キャラクターと食にまつわるエピソードで展開しようということになり、古代編はそこを意識した作品作りとなりました。
ラムセス2世(=オジマンディアス)、クレオパトラ、レオニダス、アレクサンドロス(=イスカンダル)、ロムルス、カリグラというラインナップで、個人的には執筆に苦労したものでした。

監修のお仕事に話を戻します。「Fate/Grand Order カルデアエース Vol.2」では単発ということもあり、編集さんと十駒マコトさんと私の3人でFGOのどこを書きたいかを追求した結果、第1部第7章である「絶対魔獣戦線 バビロニア」の食文化マンガを描こうということになりました。

編集の方は『衛宮さんちの今日のごはん』も担当しているので、そちらとのバッティングも避け、差別化を図れるようにという方針もこの時に打ち出されます。『えみやごはん』がFateのキャラ同士の人間関係と料理を絡めたほんわかとした作品とするならば、FGO歴史料理マンガでは、十駒さんの質実剛健な作風を生かした食文化マンガにしよう、と。NHK Eテレに出てくるようなFGOで学ぶ歴史と食文化。このあたりを意識しています。だから、料理を作るコマよりも料理が出てきた後その料理の背景を語るような作り方にしています。

実際のマンガの作り方ですが、「Fate/Grand Order カルデアエース Vol.2」では第1部第7章を舞台に、藤丸立香とマシュがバビロニアでギルガメッシュ王の命で麦酒作りに励み、そのあと宴会にて料理の説明をしていくという大まかな構成が打ち合わせの時に決まりましたので、『歴メシ!』の古代メソポタミア、『ギルガメシュ叙事詩』と食の関わり、古代メソポタミアの麦酒作りの資料を提供しました。

先ほど紹介した『天地創造デザイン部』や他のマンガの監修ではあまり見られないのかもしれませんが、監修者が先に描くための資料を出して十駒さんのネームに反映する形となりました。上記の提供後、十駒さん編集さんからさらなる不明点疑問点の連絡があり、それについて回答しています。

この カルデアエース Vol.2での「ウルク飯」であれば麦酒のろ過装置、鉄製の食器関連、ストローで麦酒を飲んでいた図の資料、
メソポタミアの麦酒の状態、最古の麦酒のレシピ、麦酒の飲みかた、ストロー、ウルクと麦酒の考え方などを連絡しています。
*しかし仮で付けられた「ウルク飯」がそのまま正式タイトルとなったのには驚きました。

その後、ネームを読んでのファクトチェックです。さて、本作品は原作:TYPE-MOONさんですので、ネームの流れも以下の通りです。
十駒さん→担当編集&音食紀行(または→担当編集→音食紀行)、編集→TYPE-MOON→編集→十駒さん、音食紀行

こんな流れです。そんなわけで、数多くのチェックをしているのですが、原則食文化は当方の管轄で、キャラクター周りの世界観の統一等をTYPE-MOONさんが行なっている形です。

「ウルク飯」では、ネーム、初稿ゲラでのファクトチェックではほとんど直して直してませんが、一か所ワインの産地の地名だけなるべく古代で言われていたものに直しています。

この「ウルク飯」が本誌の中で評価が上々だったことから、TYPE-MOONコミックエースでの連載となりました。

時系列
・2018年5月某日 最初の打ち合わせ
・2018年12月下旬「カルデアエース2」刊行
・2019年2月下旬「ウルク飯」好評。連載打診
・2019年4月下旬 連載第一話打ち合わせ
・2019年12月下旬『Fate/Grand Order 英霊食聞録』第一話アップ

『Fate/Grand Order 英霊食聞録』の第一話でもどこを出すかという話から、英国を取り上げることになり、そこからサーヴァントは円卓勢、シャーロック・ホームズとなり、ホームズだから原作に出てくるカレーに焦点を当てて、英国と言えば紅茶ということで、カレーと紅茶をフィーチャーした英国モノとなりました。
カレーと言えば、インドだろというツッコミから実は英国の食文化に・・・という掴みは非常にいいですし、紅茶もサーヴァントが説明するだけで魅力的なものになると感じられるので、これらカレーと紅茶の歴史資料を先に提供しています。

この後、ネーム段階で作家勢でシェイクスピアとアンデルセンが出てきたので、スパイスをまぶすように彼らの食のエピソード(シェイクスピアは鹿泥棒伝説、アンデルセンはユーモアと塩の話)を連絡しました。反映いただいたのでこれまた嬉しい限り。


監修で意識していることは、作者の十駒さんのマンガが面白いものとなるように、資料を探し、かみ砕いて提供する縁の下の力持ちでありたいということです。とはいえ、結構自由にやらせていただいています。作品が盛り上がれば、作者の手柄。作品で考証で突っ込まれたら、監修の責任という気持ちでいます。なので、自分の作品とはまた違った責任をもつ仕事だなと感じつつもやりがいがあります。

また、英霊食聞録というタイトルも私が候補の一つとして連絡したところ、まさかの採用となりました。嬉しい限りです。

第二話も進んでいます。なるべく早くお届けできれば。どうぞよろしくお願いいたします。

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